毎日一分で読める民法判例問題19
★今日の問題★
税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、税理士法で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効である。
胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」
建太郎「おう」
1秒
2秒
3秒
4秒
5秒
6秒
7秒
8秒
9秒
10秒
胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「ええっと。これは、民法の問題なの? 」
胡桃「厳密には、法人の問題ね。法人の目的の範囲についてどのように考えたらいいかということよ」
建太郎「法人の目的の範囲の問題か。すると、税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることが、税理士会と言う法人の目的の範囲の行為と言えるのかということだな」
胡桃「そうよ」
建太郎「うーん。これはどう考えたらいいんだ? 」
胡桃「まず、税理士会と言う法人がどのような性格を持ったものなのかということね。そして、税理士会は会社などの営利法人と同じだと捉えていいのか。ということなのよ。それを踏まえて、判例を読んでみてね」
判例は、税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない。としている。
その理由は次の通りである。
1、税理士会は公的な性格を有すること。
税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として、法が、あらかじめ、税理士にその設立を義務付け、その結果設立されたもので、その決議や役員の行為が法令や会則に反したりすることがないように、財務大臣の監督に服する法人である。
2、税理士会は、強制加入団体であること。
税理士会は、強制加入団体であって、その会員には、実質的には脱退の自由が保障されていない。そのため、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、会員に対する考慮が必要である。
政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。
そして、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。
したがって、税理士会が多数決により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。
胡桃「理解したかしら? 」
建太郎「うーん。とりあえず、会社とかとは違うんだな」
胡桃「そうよ。じゃあ、判例の結論を確認するわよ」
一 税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為である。
二 政党など政治資金規正法上の政治団体に金員の寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の総会決議は無効である。(最判平成8年3月19日)
胡桃「すると、設問の答えはどうなるかしら? 」
建太郎「設問は正しいということだな」
胡桃「そうよ」
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