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アーティストのSeb McKinnonについて解説するだけ

この記事は2/18よりSeb McKinnon氏(以降敬称略)のKickstarter(クラウドファンディングのようなもの)の3回目がスタートするため、その宣伝目的で書きました。記事の内容は以前に投稿した動画の内容と大筋は同じですが、細部は変更しています。

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Seb McKinnonについて

Seb McKinnonとはカナダのモントリオール出身のイラストレーター兼ミュージシャン兼映画制作者と多彩な才能を発揮するアーティストである。

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最近だと、エルドレインの王権のキーアートを担当したため、彼のイラストを見る機会は多かったのではないだろうか。

彼とMTGの最初の出会いは、親が第6版のパックを買ってきた事だとインタビューで語っている。その当時の彼は幼く、MTGの遊び方はわからなかったため、イラストに惹かれて気に入ったカードをバインダーに入れて眺めていただけだったそうだ。

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レベッカ・ゲイがイラストを手がけた《エルフの隠し場所/Elven Cache》はバインダーに納めていたお気に入りのカードの1枚で、彼女のイラストを初めて見た時、Sebはすごく感動し彼女の作品に対して、特別なつながりを感じたと述べている。

そんな出会いから1年ほど経った頃、MTGのプレイの仕方がわかり、眺めているだけではなくデッキを組みプレイしはじめることとなった。もちろんお気に入りの《エルフの隠し場所/Elven Cache》を入れたデッキでだ。

Sebがアーティストを志すようになったのは、グラフィックデザイナーである母親の影響だ。幼少期のSebは母が絵を描く姿を見て育ち、いつしか自分もアーティストにならなければならないという使命感のようなものを感じるようになった。

そのような子供時代のSebは鉛筆とスケッチブックにMTGのカードイラストを模写したりしていたらしい。また、アーティストの親のもとで育った影響か、Sebを含め4人の兄弟は全員何かしらのアーティストであり、全員で映像作品を作りたいとインタビューで夢を語っていた。

弟の一人のベン・マッキノンとは映像制作会社を立ち上げKinという映画をリリースし映画祭で賞を受賞している。今回のKickstarterにより集めた寄付は次の映画製作に使用されるだろう。

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ちなみに《ルーンの与え手/Giver of Runes》はSebの画風としては珍しく写真から人物の肖像画を書き起こしている作品となっている。なぜ急に画風を変えたかというと実は《ルーンの与え手/Giver of Runes》のモデルは実の妹である。妹の肖像を可能な限り再現するため、普段とは異なる画風で描かれた作品となっている。

話を戻そう。グラフィックデザイナーの親や、後にアーティストとなる兄妹がいる環境で育ったSebは、大学でイラストレーションとデザインの学位を取得した。在学中にウィザーズのアーティスト募集にイラストのポートフォリオを送ったそうだが返事のないまま時が過ぎ卒業となった。

卒業後はUbisoftに就職しデザイナーの一人としてレインボーシックスシージに携わっていた。しかしキャラクターのデザインではなかったため、Sebデザインのキャラクターはいないそうだ

2012年頃、ウィザーズのシニアアートディレクターからイラスト提供のオファーが彼の元にやってきた。学生時代、アーティスト募集に応募していたが、まさか返事がくるなんて予想できておらず、このオファーからSebの世界は大きく変わっていくことになった。

記念すべきSebの最初に提供したイラストを使用したカードとは・・・基本セット2013に収録された《従者つきの騎士/Attended Knight》である。

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Sebはファンタジーを好むアーティストであり、その原点はアーサー王伝説だ。デビュー作品のテーマとアーサー王伝説が一致したため、プレッシャーを感じながらもすばらしいイラストを描くことができたのかもしれない。

《従者つきの騎士/Attended Knight》のイラストはダークで不気味で不思議なイラストを多く手がけるSebとしては珍しくパステルカラーを多く使ったイラストで、基本セット2013の1つ前のセットであるイニストラードブロックから続くダークな雰囲気を払拭するかのような明るいイラストとなっている。

ゴシックホラーの雰囲気が好みなSebにとってイニストラード次元は好きな次元の1つだ。そのためアーティストとして参加したのが、イニストラードブロックの後のセットであったことから、イニストラードの世界観に合ったイラストを提供できず、残念に思ったそうだ。

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そんな残念な思いを当時は感じていたが、イニストラードへの再訪したセットであるイニストラードを覆う影異界月ではホラーテイストな世界観にマッチした不気味でどこか綺麗なイラストを手がけてくれている。

イニストラードは好きな次元の1つであるが、伝説や妖精が好きなSebにとって一番好きな次元はローウィンだそうだいつかローウィンや妖精をテーマとしたイラストを目にすることができる日を楽しみに待とう。

2020年現在、Sebの手がけたイラストは100種類を超えている。自身で気に入っているイラストとしてイクサランの吸血鬼などを挙げているが、どれか1枚を選ぶとすれば《停滞/Stasis》だと答えている。

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なぜなら無邪気さ、子供、衰退、時間、不気味な美しさ、哀愁などといった彼がアーティストとして、もっとも興味のあるテーマをこの作品に込めたからだ。

Sebの画風やそれに影響を与えたアーティストについて

次のSebの画風やそれに影響を与えたアーティストについて紹介しよう。
彼のイラストは20世紀初頭のスウェーデン童話作家のヨン・バウエルの影響を受けているイラストを見れば一目瞭然、背景の描き方、色あせた水彩がSebのスタイルと一致している。

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上:ヨン・バウエル 下:Seb McKinnon
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また現代のアーティストとしてロシア人画家のイヴァン・ソリャエフの作品は美しくも不気味な雰囲気を持っており、Sebの作品との共通点がある。

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上:イヴァン・ソリャエフ 下:Seb McKinnon

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そして映画ロード・オブ・ザ・リングのコンセプトアートや原作本の挿絵を担当したアラン・リーの作風もSebのスタイルに影響を与えている。

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上:アラン・リー 下:Seb McKinnon

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アラン・リーのイラストには霧や水、光といった大気の要素をミックスし自身の描くファンタジーの世界に命を吹き込んでいる。

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Sebのイラストにも良く霧や水といった表現が使われており、この表現は定番のスタイルとなっている。

絵を描くプロセス

次に絵を描くプロセスだが、もともとSebはデジタルペインティングに対して懐疑的であった。

しかしCraig mullinsが水彩画をスキャンしデジタルでペインティングし抽象的な絵を完成させるというプロセスの動画を見て、デジタルペインティングでもこんな表現ができるのかと感銘を受けたそうだ。

そのため彼がイラストを描くときは、そのプロセスに習ってキャンバスの上に色やテクスチャーを散らかしてカオスを作るように描いていく。

Sebのイラストのアイディアは、まるで空に浮かぶ雲がどんな形をしているのか探すように、そんなカオスの中から浮かび上がってくる。一度、カオスから作品のテーマが浮かび上がれば、あとはもうそのままイラストを完成させるだけだそうだ。

MTGのアーティスはイラストを描くにあたり、アートディレクターよりイラストをどのような感じで描くのかという指示を受ける。そしてその指示に沿ったイラストをアートディレクターと共に完成させていくのだが、あるアートディレクターによればSebはよくイラスト指示とは全然違うアイディアを思いついて、そのアイディアを通してしまうことがあるそうだ。

Seb曰く、思いついたアイディアで元の指示とは違った作品はあるが、そのようなケースは、そう多くはない。Seb自身がカオスの中から浮かんだアイディアに確信がもてた時に限り、アートディレクターに指示の内容を変えたいと提案しているそうだ。

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当初のイラスト指示から内容が変わった作品としては、冒頭でも触れたエルドレインの王権キーアートだ。このイラストがどのように変わっていったかはSebのTwitterでプロセスが公開されている。そのプロセスはこの記事以前に投稿した動画で紹介しているので省略させてもらおう。

スケッチと完成版のイラストの変化

Sebがアートディレクターに提出したスケッチと完成版のイラストの違いを見てみよう。

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虚空の杯/Chalice of the Void
イラスト指示は、ブラックホールの周りにあるガスの円盤のような闇で出来ている虚空の杯。それがある場所はSebにおまかせ。

ファンタジー好きなSebはダンジョン内の怪しげなアーティファクトという設定と骸骨、古い剣、キノコが生えているというアイディアも思いつき、渦巻く不気味な聖杯以外は全て朽ちつつあるという状況のイラストを完成させた。

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停滞/Stasis
スケッチと完成イラストの変更点は、騎士の大きさ、植物をより茂らせること、霧はなくす、少女の服装と位置、騎士の肩から花を摘むのではなく、騎士に突き刺された剣の先から花を詰むことでより詩的な表現となっている。

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対称な対応/Scheming Symmetry
イラストの指示はお互いに対立する2名の人物。
2枚のスケッチを送るもSeb自身が描いたクォムバッジの魔女に似ているとの指摘があり描き直しとなった。
トランプの「J」のイラストに着想を得てこのイラストを完成させた。
トランプのジャックはknaveと呼ばれており、信用できない人間という意味もあり、お互いが信用できない人間であるというこのイラストにマッチしたアイディアとなっている。

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骨への血/Blood for Bones
イラストの指示は生きている魂と引き換えに骨の山から立ち上がらせる呪文。
当初は魂を彗星のように描いていたが、アートディレクターの提案でより人の形をするように変更。

スケッチと完成イラストの違いやアートディレクターの提案を見てみると
MTGのイラストはアーティスト主体で完成させていくのかと思いきや、お互いに提案しあい共同作業で素晴らしいイラストを完成させていっているようだ。

最後に

Seb McKinnonについて紹介したいことは以上となります。この記事で少しでもSebのイラストの魅力を伝えることができれば嬉しく思います。

2/18よりKickstarterの3回目がスタートします。

Sebのイラストのプレイマットが手に入る貴重なチャンスなので興味のある方は是非、プロジェクトに投資してみてはいかがでしょうか?

残念ながらSebのお気に入りイラストである停滞のプレイマットは1回目限定なので手に入らないと思いますが、彼の他のイラストも素晴らしいものなのでどのようなラインナップになるのかが非常に楽しみです。
個人的には《対称な対応》に期待しています。






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