専門家目線になる漢方薬の使い分け③〜当帰芍薬散と桂枝茯苓丸〜
今回は、当帰芍薬散と桂枝茯苓丸を比較してみましょう。
簡単に違いを述べると
当帰芍薬散 → 補血メインで活血もある・水滞を除く
桂枝茯苓丸 → 活血メインで少し補血・水滞を除く
です。
前回は、当帰芍薬散をご説明しているので今回は桂枝茯苓丸をメインでご紹介いたします。
桂枝茯苓丸に含まれる生薬
その名の通り、桂枝と茯苓が入っているのですが、桂枝茯苓丸のメインは『桂枝』『茯苓』ではありません。
その性質を決定づけるのに重要なのは『牡丹皮』『桃仁』です。
牡丹皮
桃仁
桃仁と牡丹皮は、合わせて使われることが多く『駆瘀剤』=瘀血を除く生薬の代表です。
瘀血を取り除く性質がある場合には、生薬の効能に、『活血化瘀(かっけつかお)』や、『破血(はけつ)』という記載があります。
この、『破血』と『活血』、作用の強さでいうと、
活血<<破血です。
破血薬として分類されるものは、瘀血を除くはたらきがとても強いため、『妊娠中に使用してはいけない』とされています。
中国で使われているようなとても強い破血薬は、日本では使用されていないのですが、それでも駆瘀剤が入っている『桂枝茯苓丸』は、妊娠中は使用しないでください。
また、月経痛に使用する場合にも、月経の量が破血作用によって過剰になることも考えられるため、普段から月経量が多い方では注意が必要です。
瘀血による痛みは、月経が始まると軽くなるか消失することもあるので、この場合には、『月経中は中止』した方が良いでしょう。
桂枝茯苓丸の選び方
医療用医薬品としては、桂枝茯苓丸はエキス剤として販売されています。
多くのドラックストアや通販で目にするものも、『エキス剤』のものがほとんど。
でも、本来は、桂枝茯苓丸は『丸剤』です。
できれば、丸剤として販売しているメーカーのものを選びましょう。
有名なところを挙げると
●桂枝茯苓丸ダイコー【第2類医薬品】
●ウチダ 原末 桂枝茯苓丸 180g 【第2類医薬品】
●栃本天海堂の健婦丸(桂枝茯苓丸)135g 【第2類医薬品】
美容漢方としての桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は、血瘀が原因となっている『シミ』『くすみ』『肌荒れ』などにも効果的な漢方薬で、美容漢方としても基本となる処方です。
いくら、美容にいい食べ物やサプリメントをとっていたとしても、いつまでも凝り固まった部位があれば、美容成分もめぐらなくなって肌の隅々までに栄養は行き届きません。
今までの滞った部分を取り除き、新鮮な血液をしっかりと細胞の隅々までに送り届けてあげることができれば、自ずと肌の細胞は元気を取り戻します。
この桂枝茯苓丸に、 余分な水分を除いて清熱や膿を出すはたらきのある ヨクイニンを合わせたものが
『桂枝茯苓丸加 薏苡仁』です。
桂枝茯苓丸加 薏苡仁は、肌荒れ、ニキビなどの皮膚の症状によく使われるのですが、桂枝茯苓丸と同様に、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷え等を訴える人の、月経不順、血の道症などにも効能があります。
当帰芍薬散と桂枝茯苓丸の違い
最後に
今回は、桂枝茯苓丸をメインで取り上げてみました。
漢方薬の解釈は、その流派によって、またその薬剤師個々の考え方によっても異なってきます。
あくまでも『私の今の考え方』を記載しておりますので、ご自身の考え方を確立するための1つの参考程度に考えいただければ幸いです。
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