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大腸菌とOXゲームしてみた!

人間の脳に存在するニューロン(神経細胞)は、その結びつきによって、情報伝達を可能にしたり、記憶を定着させたりすることができる。コンピューターも、内部で信号をやり取りしながら演算・記憶などの処理を行うという点では、人間の脳の仕組みと似ている。そこで、人間の脳のニューロンのように、コンピューター上で仮想的なニューロンを配置し、ニューロン同士が相互通信することで、判断や推論を行う仕組み「ニューラルネットワーク」が考案された。ニューラルネットワークは進化し続けてとって、チェスの世界チャンピオンや将棋の名人を負かしてまうくらいに成長してきとる。

最近は実世界の材料をうまく活用することで、ニューラルネットを実体化させる試みも盛んに行われるようになってきてる。特に注目されてんのが、生きてる細胞の生命活動を利用する方法なんだとか。というのも、菌類などの生命活動を遺伝子操作と学習によって再プログラムして、特定の条件下で最適な判断ができるようになったら、「学習可能な生体材料」として機能できる。こりゃ持続可能な開発を推し進めることに繋がりそうね!

そこで、スペインの国立研究評議会(CSIC)の研究者たちは、遺伝子操作した大腸菌を材料にして3マス×3マスの「〇✕ゲーム」ができる人工知能を作ってみはった!ちなみに、「〇✕ゲーム」は簡単なゲームに思えるかもけど、プレイするには適切な状況認識や意思決定が必要で、人工知能の基礎が詰まったちょうどええ課題らしい。

まず、特定の化学物質に反応して赤色を発する遺伝子が活性化される大腸菌が作られ、〇✕ゲームの各マスに配置された。各マスには対応する化学物質が紐づけられてて、人間のプレーヤーが「✕」マークを設定するごとにマスに対応する化学物質が大腸菌たちに与えられる。これによって、大腸菌は人間がどのマスを選んだかを知ることができる。

各マスに化学物質が割り当てられる/ Credit: A. Racovita et al., "Engineered gene circuits with reinforcement learning allow bacteria to master gameplaying", bioRxiv, 2022

また、マス目ごとに設定された化学物質には、大腸菌の内部に仕込まれた赤色を発するための遺伝子を活性化する効果があり、各マスの大腸菌たちはそれぞれ赤くなる。そして、たまたま一番赤くなったマスが大腸菌の選んだ「〇」マークとすることにした。

たまたま一番赤くなったマスが大腸菌の選んだ「〇」マークになる/ Credit: A. Racovita et al., "Engineered gene circuits with reinforcement learning allow bacteria to master gameplaying", bioRxiv, 2022

以降は同じような操作が続き、人間の選択に対応する化学物質が残りの大腸菌に与えられ、大腸菌は赤く光ることでマスを選んでいった。その結果、人間は意図的に3連を狙っていくのに対して、大腸菌はランダムに選んでるだけやから、もちろん人間が勝つ。

そして、「〇」マークにいる大腸菌たちには負けたペナルティーとして死なない程度に抗生物質が投与された。抗生物質は大腸菌にとって自分を弱らせる嫌な奴やから、自分の選択(赤く光るパターン)が間違いやったことを学習することになる。

大腸菌が人間に負けた例。負けた大腸菌にはペナルティーとして抗生物質が与えられる。/Credit: A. Racovita et al., "Engineered gene circuits with reinforcement learning allow bacteria to master gameplaying", bioRxiv, 2022

研究ではこうした勝負と罰の執行が繰り返されていった。すると、大腸菌たちは与えられる化学物質と赤く光るべき場所(選択する場所)の関係を学習していって、僅か8回の勝負だけで「〇✕ゲームで人間の3連達成を適切に妨害する(負けへん)」ようになっていったんやって!つまり、各マスの大腸菌たちがニューロンの代わりになって、抗生物質が神経伝達物質の代わりになることで、ニューラルネットのような学習システムが構築されたの!

とはいえ、大腸菌に「〇✕ゲーム」に勝つメリットは学習させてへんかった、また人間が常に先行真ん中取りをしてたから、大腸菌が人間に勝つことはあらへんかった。この研究から大腸菌は「負けへん」ようにはなることはわかったけど、「勝つ」ためにはまた別の学習が必要になるのかもね。

現在、研究者たちは大腸菌たちにさらに複雑な訓練をさせて、「手書き文字の識別」ができるようなニューラルネットを作ろうとしてるらしい。実験がうまいこといったら、大腸菌で駆動する人工知能が身の回りに溢れるようになるかも?!


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