見出し画像

非鉄な人のために京急の新車を解説する

はじめに

今回はほぼ純粋な鉄ネタなのでサッカーほとんど関係ありません。
が、

「非鉄な方にも分かるように京急の新車を解説する」

という試みなので、もし興味がありましたらご覧いただいてコメントをお寄せいただけると幸いです。
(画像はすべて京急電鉄公式より)

京急電鉄とは

まず京急電鉄について、沿線外の方にも分かるよう簡単に説明しましょう。

新幹線や山手線とも接する都内のターミナル・品川駅を実質的な起点として、川崎・横浜を経由して横須賀をはじめとする三浦半島各地を結ぶ私鉄路線です。

主な客層は、京浜臨海部の通勤通学、マグロでおなじみの三崎方面の観光客などです。
幼いころから沿線近傍で育ち、大学時代には通学の足として利用しておりました。

JRとの並行区間が長く乗客争奪戦がそこそこ発生しており、朝ラッシュ時は都心に向かう客の多くが横浜駅でJRに乗り換えてしまう問題が発生しています。
(山陽電車の乗客の多くが明石でJRに乗り換えてしまうのに似ています)
このため高速運転に力を入れており、赤い彗星という東福岡高校サッカー部のような異名を馳せています。

新車は多目的車両

ではいよいよ春に登場する京急の新車について解説いたします。

まずは1月20日の公式リリースをご覧ください。

リリースに基づいて主な特徴を列挙すると下記のようになります。

・2021年春運行開始予定
・4両編成が2本
・座席指定列車や貸切イベント列車などに対応
・ロングシート・クロスシート切替可能
・全席にコンセント装備
・展望座席の復活
・4両中2両にトイレを設置

非鉄の人にはよくわからない用語もあるかと思いますが、後に説明します。

実はこの車両、リリースされた途端に一部の鉄ヲタ界隈がざわつきました。
その理由について順を追って解説しましょう。

・貸切イベント列車などに対応

最大の特徴はこれですね。
京急はこれまで基本的に通勤電車のような普段使いの車両を作ってきましたが、この車両は貸切イベント列車で使用することを念頭に置いて設計してあります。

具体的には、

・展望座席の復活
・4両中2両にトイレを設置

そもそもトイレの設置自体が京急初です。
そんなに距離のある路線ではなく、トイレがないのは当たり前という感覚でいたので正直驚きました。

トイレをつけようと考えたきっかけが、過去に貸切でビール列車を運転した時の体験からだそうです。
…うん、すごく納得ですね。

画像1

多目的トイレ外観

展望座席というのは、運転台直後から前が見通せるかぶりつき座席のことです。
他社ではここに座席がないことも多いのですが、京急は通勤車両も含め、ここに前向きの座席を置いている車両が割とあります。

・通勤列車にも使える

イベント用だけでなく、通勤列車にも使える二刀流
なぜそんなことが可能なのでしょうか。
その秘密が…

・ロングシート・クロスシート切替可能

ここで用語の説明ですが、

 ロングシート=横向き座席(窓を背にして座る)
 クロスシート=前向き座席(進行方向を向いて座る)

通勤用だとロングシート、座席指定やイベント用だとクロスシートが適しているのは、なんとなくお分かりいただけるかと思います。

この車両は、椅子の角度を90°傾けることによって、クロスシート・ロングシートどちらにも化けられるのです。

下の2枚の画像をご覧ください。

画像2

クロスシートの状態(進行方向)

画像3

ロングシートの状態(窓を背に)

実は他の大手私鉄でも既にこのような車両が導入されており、
特に目新しい機構ではありません。

ただし京急には関東大手私鉄にはあまり見られない特色があります。
それは

・京急は伝統的にクロスシートを通勤用にも使っている

京急にはすでに前向き座席の車両(2100形といいます)があり、
通勤列車や、朝晩の座席指定の列車(ウイング号)などに使われています。

画像4

既に活躍している2100形(クロスシートで通勤用にも使用)

つまり、クロスシートの車両は既に十分な数があるのです。
そこに、あえて切替可能な座席の新車を「上乗せ」で登場させたことで、
鉄ヲタ界隈がざわつき、使い道について様々な憶測を呼んでいるのです。

ここで私の考察です。

そろそろ2100形の後継ぎを考えないと

先にご説明した前向き座席の2100形、登場から20年以上たつので
そろそろ後継ぎの車両をどうするか考えなければなりません。

・それをどういう作りにするのか、今回の新車で試しているのではないか

というのが私の推測です。

2100形は前向き座席の宿命で、あまり多くの乗客の詰込みが効きません。
扉の数が少なく
、乗り降りにも時間がかかります。

そのため混雑時は、どんな列車にも使えるというわけではありません。
通勤時間帯は、なるべく混雑しない列車に割り当てるようにしています。

でも通勤時間帯って、一番たくさん車両が必要になる時間帯ですよね。
そんなときに使用しにくい車両を抱え込むのは、何かと無駄が多いわけです。

ここで威力を発揮するのが先ほども説明した

・ロングシート・クロスシート切替可能

通勤時にはロングシートに切り替えれば、混雑する列車に使うのも容易になります。

京急は過去に、混雑するときにクロスシートのまま座席を減少させる車両で
混雑を乗り切ろうとしたことがあります。(600形といいます)

が、座席の作りが悪く長続きせず、ほどなくロングシートに改造されてしまいました。要は失敗作です。

その時の教訓が今回の新車に活かされていると言えそうです。

それでも気になる問題点

・座席の数が、大変少ない

ロングシート・クロスシート切替機能を盛り込んだ結果、
座席の数が4分の3程度になってしまいました。
(この問題は、先の600形で座席を減少させた状態でも生じていました)

他社の同様な車両でも座席の減少する問題は発生していますが、
7人がけになるところが6人分になる程度なので、それほど問題ではありません。
しかし京急の場合は寸法が特殊なので、8人がけが6人分に減少してしまうのです。

これで補助いすがあれば減少分を補えるのですが、
今回の車両では装備されていません。

この座席の数、特に混雑時に始発列車に並ぶ人にとっては死活問題です。
(通勤時間帯に始発列車に並ぶ人はこの気持ち、分かりますよね…)

扉の位置を微調整すればもう少し座席が増やせるのですが、

都営地下鉄に直通する車両は扉の位置を勝手に変えられない

という大前提があります。(直通車両に関する取り決めがある)
ホームドアの位置とずれてしまいますしね。

いずれにせよ、この車両が投入される春にはダイヤ改正も予定されているはずですので、どのような使い道になるのか、見守っていきたいと思います。

おわりに

最後までお読みいただいた非鉄な皆様、本当にありがとうございました。

「非鉄な方にも分かるように解説する」ことを念頭に置いて書きましたが、
果たしてどのくらい伝わりましたでしょうか?

お気づきの点がありましたら、ぜひコメント欄にお寄せいただけますと幸いです。

次回はちゃんとサッカー関連のnoteに戻る予定です。(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?