これくらいで歌う第三十章〜振り返り〜

 2012年当時担当していたラジオ番組のメールマガジンとして書き始めたこの記事は最初十回程という話だったが、気がつけば三十回目の記事を書いている。担当の人と
「基本的にはなんでもOKなんですがどういうメルマガにします?」
「せっかく能動的に人に読んでもらえるのなら普通のことはやりたくないです。」
「他のアーティストさん達はラジオ後の楽屋裏という形で、本番で話せなかったウラ話などをメルマガにしてるみたいですね。」
「じゃあ僕は小説風自伝を書きます」
「おお、おもしろそうですね」
というような、わざわざ会話形式で振り返らなくてもいい感じの流れで書き始めた。なぜ小説風だったかというと当時このメルマガの話があった頃、伊坂幸太郎の小説にはまっていたからである、というこれまたわざわざ記さなくてもいい普通の理由である。

 小説など本気で書いたこともなかった。実際に文章を打ち始めると言葉を知らなすぎる自分と直面した。普段曲を作るときの作詞とはまったく違うと思った。作詞では、おおまかなストーリーがあってその他省略する部分があってもなんら問題はない。しかしそれを小説でしてしまったら良い場合もあるだろうがそれが続くと読んでいて疲れてしまうだろうと思った。
 
 具体的な例でいうと「昨日の僕が残した悲しみを持って空を飛ぶ」という言葉があったとしよう。これが小説の冒頭にあってもなにもおかしくない。だが、小説を読み終えてもこの意味が分からなかったらどうだろう、僕だったらモヤモヤしてしまう。なぜ昨日の僕は悲しみを残したのか、その悲しい内容とはなんなのか、どうやって空を飛ぶのか、そもそもお前は誰なのか、男なのか女なのか何歳なのか、この辺の疑問がずっと頭の片隅にある。
 しかし、これが歌詞ならまず僕=作詞者となって「僕」が誰なのか気になることはならない。空をとぶというのも歌詞にありがちなワードなので気にもならない。残した悲しみというのも具体的になんの悲しみかは分からんがなんとなく自分の悲しみを投入して意訳できたりする。あと何より一番違う部分はメロディがのっているので、なんとなく雰囲気でもっていける。こういう違いがあると思う。あくまで僕の偏見だらけの分析だが。

 要は今回小説風を書くときに難しかったのが僕が普段省略している風景や人物、その時の感情を詳細に表現しなくてはいけなかった。
先ほどの例でいうと「昨日の僕が残した悲しみを持って空を飛ぶ」というのが歌詞だとするとそれを小説風にするとしたら
「大好きな映画が今日地上波で放送されるらしい。しかしうちにはテレビがない。なので友達に録画を頼んでおいた。しかし友達はすっかり録画を忘れていた。それが昨日おきた事件。しかし一日経って無性に見たくなりおもいきってテレビを購入。そしてレンタルビデオ屋へと向かった。その足取りは鳥の羽ばたきに似ていた」
 これがそういうことなのかもしれない。

 この文章を読んでもらって分かるとおり、僕は小説家になるにはきちんと文章力を養いもっとたくさんの本を読む必要があると痛感させられた。それでも最初は友人などに読んでもらって
「文章はおかしいけどケンヤ君の言葉選びはなにかひっかかるものがあって面白い」
というありふれた評価から一歩だけ出たような、そんな評価を得た。しかし、この程度なら例えブログで同じこと始めても、
「これは面白い!いいブロガーを発見した!」
という人は少ないだろうと自分でも思っていた。ここで友人のいう「なにかひっかかるもの」これに残り少ないスポットライトを全てあて、ひっかかりを探して森で迷った。迷っている最中は当初ノンフィクションではじまった僕そのものの物語からはずれ普段思っていることの延長線上にある記事を書いたり、飲み屋で話した面白いことの延長、今までみたアニメの話、しまいにはこのメルマガをはじめるきっかけすらもネタにしている。

 すなわち、まだ森の中にいる。出口がある気配もない。これは今の僕の生き方にも言えることかもしれない。

 ここまでが当時のコピペで今この文章は2024年現在のものなのだが依然文章力は向上せず相変わらず本を読むこともしていない。そしてここまでnoteを書き(コピペしかしてないのだが)最初の頃のワクワクとしたストーリーが途中から違う方向にいっているのは明白であり、もっと本筋を書けよ!当時の自分!と思ったがこの当時という自分に既にストーリーが到達していたためそこまでの話しかないのである。よくアニメの続きが見たいのに原作のストックがないから続編はまだ先だなとか話しているあれに近いのかもしれない。記事は一応七十八章まであるのだがそれ以降のストーリーはまた重い腰を叩き
 落ちてきた活動頻度〜見つめあう自分〜再就職〜再活動〜アイドル編〜
とあくまで僕目線で書きたいと思う(まだ先のことになりそうだが)自分の音楽でアウトプットできない部分を昇華させてもらっている貴重な場所です。本当ありがとうございます。アザっす。

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