これくらいで歌う第三十五章〜タイミング〜

2013年記
 僕の部屋のベランダは隣の部屋のベランダと向かい合わせになっている。そのため鉢合わせになり、お互い苦笑いをしながら挨拶し早々と部屋に戻ることがある。僕は煙草をベランダで吸うので、まずは隣の人がベランダにいるかどうか確認をする。幸い、となりの人は煙草を吸わないためほとんど会うことはないのだが、それにしてはよく会ってしまうのだ。となりの人は洗濯するときのみベランダに姿を見せる。洗濯なんて男の一人暮らしをしていたら多くても週に三回程度だ。僕自身もあまり部屋にいないが、それでも隣の様子を半年くらい見ていると週に四回ほど洗濯をしている。そんな稀なタイミングに対し、僕は二時間に一度くらいのペースでベランダで煙草を吸う。大抵夜から夜中にかけて部屋にいる。これに比べて洗濯とは朝や昼、遅くても夕方。まして夜にすることはほとんどないだろう。ここまでの条件をみるとほぼ合うことはなさそうだが結果だけいうと週に二回くらい顔合わせしてしまう。

 最初に会ったのは真夏の昼下がり僕がパンツ一丁でベランダで煙草を吸っているときにガラッと出てきて挨拶をした。平日の真昼間に金髪でパンツ一丁で腰に手を当てて煙草を吸う僕の姿はどう映ったか分からない。その時からベランダに出るときはきちんと正装するようになった。二回目は向かいの洗濯機が回っていることを確認しベランダに出た。洗濯機が回っている間は出てこないだろうと思ったのだ。脱水しているようだったが、音が聞こえてからすぐに出たので一回目の脱水だと思った。しかし煙草を吸い出して数秒立つと洗濯完了のピーピー音が鳴り出してやばいと焦ったがガラッと出てきた。今度はパンツのみではなく正装していたのできちんと苦笑いして挨拶をした。

 しかし、思えばこの時からピーピーと向かいの洗濯機が洗濯完了のしらせの音を出すと無性に煙草が吸いたくなるというやっかいな病になった。ピーピー音がすると洗濯ものを干しに部屋からベランダへとやってくることが分かっていてもベランダにいって煙草が吸いたくなる。
なんなんだろう。
話はだいぶ変わるがこれを打っているときのPCの変換が頭悪すぎて三回ほど煙草を吸いにいってしまった。

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