【FGO】コンティニュー系聖女様がやってきた。【オリジナル鯖シリーズ】

トルコ・アンティオキアという街に伝わる、これまた竜退治の逸話にまつわる聖人がいることをご存じだろうか。
その人物の名は聖マルガレータ。聖職者の父親や、アンティオキア街の役人との宗教上の確執により逆境に放り込まれ、そこへ出現した悪魔が化けた竜に飲み込まれたのを神への祈りを捧げて奇跡によって竜の身体を突き破り打開した。その後も信仰心によって数々の奇跡を起こして牢獄を脱出してみせたことで、人々の中から改宗する者が出てきたほどの威光を示したものの、最終的にはそれを恐れた役人によって、斬首刑に処されてしまった。

数々の奇跡を成し遂げながらも、壮絶な運命を辿った輝かしくも哀しい竜破りの聖女。
すでにカルデアに来ていた聖人サーヴァント達から話を聞いていたので、俺も彼女についてそれくらいの知識は持ち合わせていたのだが……。

「………」
「………」
「GRRRRRR……」

「……えーと……」
マスターでありながら不甲斐なくも、現在の状況がまるで掴めていなかった。
単刀直入に言うと、その件の聖マルガレータさんがカルデアにお越しになった。クラスはアサシン。なんかサンソンのみたいな武骨な処刑刀を手に現界してきた彼女に早速レイシフトに同行をお願いして、竜種の巣にて戦闘に出てもらったまではよかったのだが……。
「……あのー、マルガレータさーん?その宝具は一体……」
宝具を使ってもらった途端、彼女の足下から一本角の巨大な竜が大口を開けて飛び出るように出現。そのままマルガレータさんをバルーン○ァイトの魚みたいな感じにバクリと飲み込み、そのままずるりと地上に這い出てきてからその場に陣取ってしまった。
「ど、どうしよう」
一緒に前線に出ていたマシュとキングハサンも、指示を待ってか俺の方を真っ直ぐ見つめてきている。
何なのだろうか。よもや、あの要領で敵の足下から出現させて飲み込ませる筈が、間違って彼女自身に誤爆させてしまったのだろうか。
「あ、あの……マルガレータさ……」
「ゴガルルルルルルルォッ!!」
「うひぃ!?」
ち、近付こうとしたら竜に怒られてしまった(?)。ううむ、困ったぞ。竜が消滅しかけているようでもない以上、中のマルガレータさんはまだ戦闘不能になっている訳ではないのだろうけど……。
「契約者よ。十字の仔は未だ健在なり」
声にはっとして顔を上げると、キングハサンがいつの間にか竜のすぐ傍に立っていて、竜のお腹の方をじっと観察している。俺なんて近寄っただけで唸られてたのに。流石は元冠位……。
「そ、そっか。他にはどうかな?」
「肉の檻の内より、彼の乙女の詠み上げと思しき声が響く。宛(さなが)ら、聖典の音読が如し」
聖典…となると向こうでは神への祈りの言葉になるのであろうか。うーむ、竜を召喚……自身を飲み込ませて……祈り……聖マルガレータ……。
「ギャウウウウンッ!」
と、思考の途中だがワイバーンの群れ!すかさずこっちに襲いかかってきた!
「っ!マシュっ、盾を!キングハサンはその陰から迎撃……を……」
俺が言い終わる前に、何を思い立ったのか竜が立ち上がった。フシュー、と荒い鼻息1つついてから、マルガレータさんを飲み込んだまま四つ足でのしのしと前進し始め、それぞれ大盾と大剣を構えたマシュとキングハサンを尻目に、二人の前へ出て行った。
「ギャァァウッ!」
「ギャウッ!」
それだけ図体がでかければ目にも付くだろう。ワイバーン達は真っ先に竜に集中攻撃しだす。竜は一切反撃を行わず、ただじっと立ちはだかってワイバーンの群れの攻撃を一手に引き受けていた。

だが……かなりの大きさのその竜の身体が丸々、突然ふっと湧いてきた巨大な何かの影の中にたやすく収まった。
次の瞬間、竜の真上から巨大な質量が勢いよく叩きつけられた!
「グ、ル………」
「グオオオオオオオオオオンッ!!」

「……グレードドラゴン……!」
天を衝く威容。竜種達の巣の主が、直々に侵入者を排除すべく現れたのだ。
マルガレータさんの竜は!?見るや、たったの一撃でボロボロに傷つき、今にも消滅しそうに光が漏れ出している。
「ああっ、やっぱり!」
やはり失敗だったのか。撤退するか?だが、あの威力。あれでは体内のマルガレータさんも無事では……。
「ごめん、皆!撤退を………」

『うふふふふふ。マスター?まだ戦況は窮地に追い詰められた訳ではございませんよ?』

どこからか声が聞こえた。マルガレータさんの声。もしや竜の体内から?目をやると、それを待っていたかのように、竜の背中がバリッと突き破られ……え、ええーッ!?
「うふふふ、あははははははははっ!皆さん、お待たせしてしまって申し訳ございませんわ!ついに私(わたくし)の祈りが主へ届きましてよ!」
自信たっぷりに声高らかに、マルガレータさんが叫ぶようにそう宣言しながら、竜の破れた背中からテテーンとかいう謎の効果音的な音と共にニューッと突き出てきた。まるで意味が分からない……。
「ま、マルガレータさん……状況を…」
「ええ、マスター!これが私の宝具『其の祈りは邪竜が腑をも打ち破る(アンティオキア・ムジズェ)』ですわ!自ら召喚したアンティオキアの竜に飲み込まれ、あの時の試練を再現して主へ祈りを捧げることで同じ加護を賜るといった効果の宝具ですの!」
しかもあれ仕様だったの!?誤爆じゃなかったことに驚きだよ!

「勿論そのぶん発動までに時間がかかりますので、その間皆さんに我慢を強いてしまうことになるのですが、発動にまで漕ぎ着ければ主の加護は皆さんにも届きますわ!試練を乗り越えることで私は神に近付くことが叶いますの!

つまりほぼ私が神ですわ!!」

加護でハイになってんのかとんでもねえ罰当たりなこと口走ったぞこの聖女!?
「とはいえ先輩、私達の霊基が全修復され、主に攻撃力と防御力ににかなりの強化ブーストがかかっているようです!これなら!」
「それじゃ、2人も宝具お願い!」
「了解致しました!」
「……神託は下った」

「………ロォォォォド・キャメロットォっ!!」
白亜の王城が高く、厚く聳えその場に出現する。その上を、夜の闇そのものが凝縮されたような、黒衣の暗殺者が武骨な大剣を手に宙を舞う。
「聞くがよい。晩鐘は汝の名を指し示した……」
闇が一帯を覆い、俺達はキングハサンの姿を視認出来なくなる。ただ1体、標的たるグレードドラゴンを除いては。
「告死の羽……首を断つか!

 アズライール 
死 告 天 使 !!」

あとはその場に、ただ首を断たれた竜種の胴体が横たわり、その首が転がるのみ。

「………ああああ主よ、貴方様の名を騙ってしまい誠に申し訳ございません……」
マルガレータさんは凄まじくヘコんだ様子で壁に向かって懺悔し続けている。やっぱりハイになってたのかな。
やり過ぎて後で懺悔する聖女、なんて光景は前にも見たことはあるにはあるのだけれども……。
「……な、なんですか一体。言いたいことがあるならとっとと言ってごらんなさい。ぶつわよッ?」
「な、殴るだなんていけません聖女マルタ!それにその装いにその腕甲…貴女様も主より試練を授かっている最中とお見受けしましたわ。同じ神を崇める修道者として、共に手を取り合って参りましょう?」
マルガレータさんが突然振り返ってマルタさんの手(手甲?)を取った。どぎまぎしてばかりのマルタさんを前に微笑む彼女の背後から、後光が差しているように見えて……聖女か?いやどっちも聖女だったな、うん。
「それでも貴女様が何かを殴りたくて堪えきれないその時は……貴女様の衝動、この私が謹んで受け止めて差し上げますわ!」
「え、ええ!?えーっとそれは……あの、聖女マルガレータ……」
耳まで赤くなってあたふたしてばかりのマルタさん……は何だか非常に珍しい。少し距離をおいてそれを眺めていた俺のすぐ傍にいたゲオルギウス先生はただただ目が点になっているばかりだったし、その反対側でいつの間に俺を挟むようにして突っ立っていた黒髭が「キャッキャウフフの聖女子会……やはり百合は正義ですな……」とか言ってるのが聞こえた時はマジで心臓が飛び跳ねた。
この後めちゃくちゃ黒髭に向けられて飛んできたタラスクが……『守護騎士』A+を発動したゲオル先生のボディにクリーンヒットした。黒髭すら庇うとは聖人か?聖人だったね、うん。

……

「なんか俺様今回出番無かったんだがの」
めがみさまゆるして。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?