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39| 若葉雨

 小満しょうまんの、いのち満ち満ちてくる頃。
2日間ほど、自宅の入口ドア付近にじっと位置し、守護してくださっていたカエルさん。とても愛らしく、“ありがとね”と、感謝が湧きあがりました。

精進料理・大徳寺納豆の大徳寺一久さん
5月17日 お干菓子盆、青紅葉を添えて

 滋賀・宇治・京都への旅から愛知県岡崎市へと戻り、開催したお茶のあいでは、京土産の八つ橋と、紫野から持ち帰った大徳寺納豆だいとくじなっとうをお出ししました。

 大徳寺納豆は、禅寺に保存食として伝えられてきた伝統食で、大豆に大麦を使い、塩を足して、麹菌による発酵を元に醸造して造られるもの。
そのお味は、初めての方には少々、インパクトがあるでしょうか・・・。
口に含んで「深いところから力が湧いてくる・・・!」と表現した友人もいて、うん。確かに・・・!

 そんな、京名物に加えて、お客様が持ち込んでくださったお土産物の黒糖を添え、方々の地のものに彩られたお干菓子盆となりました。

立夏 薄茶一服
丸卓まるじょくつかい、お点前を。
お濃茶の深緑に、お客様お持ちの古帛紗のしゅえて、
写真を撮らせていただきました。
松樹千年翠まつじゅせんねんのみどり

 この日、わたしは床に掛けるお軸を、会場(岡崎市甲山閣)から徒歩10分の自宅に置き忘れてしまい、到着早々、プチ騒ぎ。
すると、入口にほど近い、隣の間の喧騒に耳を傾けていた受付係の方が、「もしよければ、このお軸でしたら、おつかい頂けますよ。」と、貸し出しリスト外の掛軸を、ひょっこりお持ちくださいました。書かれていたのは、

松樹千年翠まつじゅせんねんのみどり

 これに、「不入時人意」(ときひとこころらず)と、続きます。

「松は常に緑を保ち続けているが、その常住不変の在り方に世の人々は気づかない、との意で、万古不易の真実の存在に気づかすにいることに警告を発したもの。」
ーというのが、『茶の湯の銘 禅のことば(淡交新書)』による解説です。

 常住不変じょうじゅうふへん〉(過去・現在・未来にわたって変わることなく常に存在する)と、〈万古不易ばんこふえき〉(永久に変わらないこと)。
あえて、その対にあたる語をあげれば〈無常むじょう〉や〈有為転変ういてんぺん〉でしょうか。万物は常に変化し、移り変わる、と。

 “有為転変は世の習い”
 “この世に常住不変は存在しない”


 かつてこの世とされてきた、時の流れ、時空間をもつこの世界、世の中にあって、揺れ動き、刻々と移り変わるすべてのこと。
それら、目にみえ、きこえ、手にふれる、五感等をもって確認し得ること。

 それと同様の確かさで、いま、すでに在った、在り続けてきた変わらない、ひとつながりの確かさが、濃い・薄いの違いあれど、この世界に、確かに滲み出ています。
 
 ここまで、ひとがたを携えてきた様々が、真白ましろの中継を経て本来のすがた還るカエルとき、そのすいは、いまここの一点に勢いよく、より濃く顕われ出、ひろがりを得て光ります。

 真白に洗・新われ、そのほんとうふへんを変化の内に現わす、本来の流れにる。

 その未知・道を共に歩む、よろこびとたのしさ、あたたかさに、確かな振動を感じながら。

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