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65| 深い水の目覚め


春分

 コポコポコポ・・・。

 中心に、泉の湧き出るように、生じ続けている胎動。

 未だ見ぬ新しい大地に、太く、細やかな根を、この一瞬に、張り巡らしてゆく。

 深く、深く、どこまでも深くその根をおろし、その領域にある深水を、幹や枝葉へと運ぶ。

 中心に向かう回路をひらき、つよく、太く拡げて、いまこの瞬間を紡ぐ、胎内へと。
生成と消滅。拡張と収縮。それらのおこりの中心点へ。

 わたしの耳と、わたしのものともいえない、耳とを澄まし、その耳のあわさるところ。

 わたしに付帯する感覚と、それらを超えたところに流れている感覚とを澄まし、その感覚の重なりあうところ。

 わたしの振動と、わたしをも含む振動が、胎動とひとつとなって、胎脈となり、深奥から脈打って、深水を運ぶ。

 その中心へ、抱えてはいることのできない支流分離とつながり、認め、合流をゆるし、受けいれ、受けとりながら、より太く、穏やかに、悠々と。

 もとより生なる流水に間断無く。

 
支流には本流との接着点つながりがあり、本流には、源へと還るみちがある。

 生命を燃やし、深水の流れに熱を伝える火は、つながりを照らし、胎の全体をあたため、深水を動かして、みどりごを育み、慈しんでいる。

 深い水の目覚めと、そこにある信頼と。

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