５｜清和　出逢いのこと

　お客様がお抹茶を一服召し上った後、お道具を拝見される際に、信楽の茶入と、茶杓の銘を尋ねられました。 　茶入は春信。 春信とは、春の訪れ、花が咲いた春を知らせる便りのことをいいます。 茶杓の銘には、ふと清和という言葉が、口をついて出ました。 今日、家を出て、川沿いの桜並木を見上げたときの桜の蕾の甘美さと、枝越しに澄みきり晴れ渡ってみえた青空ののびやかさが、わたしの中にありました。 〈せいわ〉だなんて、ふだんの生活の中では聞き慣れない言葉。 先生も、お客様をしていた社中の友