ちぴぴ物語

誰にでも はなうたはある

 今日のキセキは朝の空にたなびく雲の波。遠くまで届く手紙のように、いく筋も伸びて、空色のページを埋めつくしていた。

深呼吸して歩けば、ふふふ・・・と、はなうたが湧いていた。

 はなうたは、もうほとんどの言葉を隠してしまった認知症の母にも、失われずに生きている。

 枕元でわたしと父が「ふるさと」を歌えば、瞳をくるんと動かす。わたしが幼い頃、家族でよく歌ったイカロスのうた・・・「勇気ひとつをともにして」大声で歌うと、寝たままの母は「ふふ・・・」とかすかなハミングをこぼす。

 虹みたいにかすかで美しい交感のとき。案外、母は未知の面白い世界を生きているのかもしれないな。


今日のちぴぴソング 『不思議時間』


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