柚子風呂
『広島原爆または戦争についても触れています。
酷い描写はありませんが、お辛い方はご覧になりませんように・・・』
ナイーブな内容なので淡々と書いていきます。
*カバーは祖父の晩年過ごした近くの静岡県伊東市、大室山です*
父方の祖父は広島出身。
どうでもいい豆知識を加えておくと
もしかしたら私の苗字でお気づきの方もいるかもしれないが、広島では「花本」という名が全国的見て多かったりする。
一説には、花本さん発祥の地とも言われている。
そんな広島で花本として生まれ育ち
戦争へ・・・
祖父は20代で海兵隊に所属していた。
どういう任務をしていたかまでは分からないが、相当有能な人物と言われていたそうだ。
あの日、8月6日。
祖父はその光を直接浴びたわけではない。確実な身体的被害があったわけでもない。
ただ、投下直後の広島市爆心地に入り、調査する任務にあたった。
間接被爆。
そして祖父は、そこで何を、どんな光景を見たのか、
誰にも、一切口を開かない。
家族は戦争の話をしているのを見たことも聞いたこともない。
周囲は触れることが出来なかった。
戦後、祖父は祖母とともに上京する。
元々は画家になりたかったらしいが、「身を固める」ということを考え、夢を諦めたそうだ。
ただ、有能さは生かされたようで、電力会社に勤めた。
退職後はまた絵を描くようになって個展なども開いた。
静岡県に身を寄せ。山奥で祖母と犬一匹、ひっそりと暮らした。
そんな山奥で、子供の私が夏休み遊びに行って、柚子風呂を祖父と共に入っていた時。ふいにこんな諭しを私に与えた。
風呂に入っていた柚子を手に取り、
「恵ちゃん。柚子がここにあるだろう?これを見て「あー面白いねー。いい香りだね。良かったね~~」で終わらせてはいけないよ。この皮の構造はどうなっているのかな?この皮の中はどうなっているのかな?柚子は美味しいのかな?しっかり調べなさい」
意味もわからないで聞いていたこの言葉。
これは私の良い「基本」の一部となっていることは確実だったりする。
しかし、「真実の追求」などの考え方は人それぞれなので、ここでは記述しないでおく。
ただ、
保護者の皆さん。お子さんやお孫さんが自分の大事な言葉を"聞いてはいない"と諦めるのはやめてください。
良くも悪くも確実に影響を及ぼします。
祖父が亡くなった後の部屋は、子供の私にとってバチあたりにも格好の探検場所だった。
祖母の許可をもらい、祖父の部屋に行くと・・・
大量の画材やキャンパス、
大量の電子部品・工具、
大量のメモというメモ。
大量の本。
ぐっちゃぐっちゃだ。
何一つ整頓などされていない。
画材で遊びまくった(ごめんなさい)
電子部品で遊びまくった(ごめんなさい)
メモを読みまくった(ほんとごめんなさい)
メモについては、突拍子もない口に出せないようなアイデアが書かれていた。
頭おかしいレベル(本当に本当にごめん。じいちゃん)
その中にひっそりと、主人をなくした被爆者手帳が煩雑に捨て置かれていた。
墓まで持って行ったその記憶。
じいちゃん。その柚子の中身がどんな酷いものでも良い。知りたいよ。
その先に希望があると信じて・・・
広島原爆投下から幾日、昨日は長崎、終戦記念日までは少し先だが、この日にこの記事を公開したのには意味がある。
祖父の命日なのだ。
頂いたサポートは、創作活動のための資金とさせていただきます。ポテアメのおやつ代も大歓迎です。応援いただければ幸いです。m(*_ _)m