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昭和 近代文学 名著復刻版

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1926〜1943(昭和元年〜昭和18年)
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#本のある暮らし

暗夜行路

志賀直哉 60歳。 長編小説。大きくてずっしり重たい「百科事典」のような本。表紙は文字のみですが、本体には挿絵が8枚も入っています(ページに貼り付けているタイプ)。 これまで数多くの本を紹介してきましたが、「口絵、挿絵」を担当した人の名前が紹介されていない場合がほとんどでした。ところがこちらの本では1ページを使い、丁寧に紹介してくれています。(ありがたい) 本の装丁には著者の思いがこめられています。なので私としては是非知っておきたいのです。 著者 志賀直哉 発行所 座

新篇 路傍の石

山本有三 54歳。 奉公に出された吾一が多くの困難にぶつかりながらも成長していくストーリー。昭和16年の夏、厳しい検閲の監視の下にて出版されました。 山本有三と主人公(吾一)との共通点、それは「呉服屋での奉公」。山本自身は奉公先から逃げ出したそうですが、小説の主人公は何度も困難に立ち向かうことになります。 ◉装釘 南沢用介(白井晟一〜建築家) 著者 山本有三 発行書 岩波書店 戦後は議員、1965年には文化勲章を授与されるなどして、87歳でこの世を去りました。 *

濹東綺譚

永井荷風 58歳。 濹東綺譚 =隅田川東側の話 向島区(現・墨田区)にある私娼街、玉の井が舞台。小説家(永井自身といわれている)と若い娼婦との出会いと別れのストーリー。 表紙カバーがなく、白と黒のみ。挿絵に白黒写真。本全体に鮮やかな色彩はありません。 この本が出版されたのは1937年。盧溝橋事件がきっかけで日中戦争が始まった年になります。 この時代、すでに活動写真という言葉は廃れ「映画」と呼ばれていました。そこをあえて昔の言葉を使う荷風。昔を懐かしんでいるのがわかりま

故旧忘れ得べき

高見順 29歳。小説家、詩人。 「故旧忘れ得べき」が第一回芥川賞の候補となり注目される。 政府の弾圧でマルクス主義から思想を転向させられた人たちの「その後」の話。高見自身、1933年に検挙された経験があります。*同年、小林多喜二が拷問で死去。 著者 高見順 発行者 人民社 全体的に質素でサイズが文庫本よりちょっと大きいくらい。表紙の濃紺がとても上品。長期保管、持ち運びに便利ですね。 ・・・ 当時なにがあったのか?どんな社会風潮だったのか?を知るために。

盲目物語

谷崎潤一郎 46歳。 1923年の関東大震災後、38歳で関西へ移住。上方の商人文化や古典美に親しむようになる。 神戸・岡本での豪遊生活で金欠となり、高野山の宿坊「龍泉院」へ一時住まいを移す☄︎☄︎☄︎ そこ(高野山)で、書かれたのが「盲目物語」。織田信長の妹お市、遺児お茶々(淀君)の悲しい話。そばで仕えていた三味線引きの盲人によって語られています。 著者 谷崎潤一郎 発行所 中央公論社 ほか、「吉野葛」も収録。大阪の商家を継いだ友人が幼少時に死別した母を探すために奈良

文芸評論

小林秀雄 29歳。独自性のある文芸評論家。 装丁は親友の青山二郎。*親戚にクーデンホーフ光子 様々なる意匠、志賀直哉、横光利一、マルクスの悟達、批評家失格など・・ 川端康成によると「小林秀雄が現れてから、多くの人々の評論が通俗的に見え出した」とか。そんな小林秀雄の若い頃の初期批評論です。 著作者 小林秀雄 発行所 白水社 ・・・

太陽のない街

徳永直 30歳。  印刷会社の労組に参加し解雇された経験を書いたプロレタリア小説「太陽のない街」日本プロレタリア作家叢書4。労働者出身ということで世界から注目。ドイツ語、ロシア語、英、仏、スペイン、中国語に翻訳される。 装丁は柳瀬正夢。ハンマーをもっている男性が印象的です。 本文中の白黒の挿絵は目黒生。 著 者 徳永直 発行所 戦旗社  ・・・ 世界大恐慌の引き金となった1929年10月米国の株式大暴落。その2ヶ月後にこの本が出版されました。4年後の1933年、小