「舞姫タイス」と「麗し」

一次妄想創作活動をしておりまして「麗しの姫君」というお話を書きました。

話も終わる終盤で偶然出会ったのがアナトール・フランスの「舞姫タイス」

オペラにもなっています。詳しいあらすじはコチラ

「麗し」は「舞姫タイス」だと思った。大袈裟で、恐縮ですが、普遍的なテーマは変わらないみたいな感じで。

修道士アタナエルは快楽に耽る舞姫タイスを回心させるため自分の全てを捧げると心に誓う。

アタナエルはタイスと共に修道院を目指して砂漠を旅し、その血が滲む傷ついた足を愛おしく思う。

修道院にたどり着いたタイスが死の床で神の元に召されることに安堵する時、アタナエルは「愛だけが真実だ!愛してる!」と叫ぶのです。タイスはアタナエルを残し息絶える。

オペラは情緒的に美しく愛を描いて終わるけれど、アナトール・フランスの原作はどこまでも死を前にして愛欲に心乱れる人間の欲望を皮肉に描いている。フランス人って皮肉やですよね!

結局「救いたい」などという感情は一方的なもので「救われたい」と同義語であるように思います。

「あなたを助けたかったのに…。あなたの体温を感じながら傷を埋めようとしていたのは自分だったと気づく。」(麗しの一部分)

心に傷を負った生徒会長を支えたいって思う生徒会長付き秘書のお話なのですよ。

「僕には見えてしまう。あなたの完璧さの中にある、儚さや脆さや弱さが。他人には完全に見えるものに隠された自分だけに見える綻びを僕は愛でていたのかも知れない。」

こんな感じ。

アナトール・フランスのタイスを失うまで自分の欲望に気づかないラストは皮肉でも潔い。

でもなー、BLはハッピーエンドの方が好きだから、このまま終わる方がいいのかなー。濡れ場も必要なのかなー。でもこのままじゃ失う方が真っ当だよなー。報われてもいいのかなー。どうすれば報われるための壁を乗り越えられるんだろう…。

なんて、とりとめなく考え、終盤更新が滞ってしまった。結局選んだのはハッピーエンド。

やっぱり「麗し」はファンタジーだと思う。というか完全ファンタジーで通すことに決めた。「麗し」の世界を夢見がち過ぎると思いつつ、私の一部分でもあるんだろうな。ため息。文章を晒け出すって恥ずかしいと思うけれど、自分も普段気づこうとしていない世界を生きるひとつの方法ですね。

ノーベル文学賞を受賞したアナトール・フランスの作品に重ねるなんて大胆過ぎるのは承知ですが「麗し」を書きながら思った事、でした。


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