【とある深夜のシンヤたち】ーとある深夜の谷崎伸哉(タニサキシンヤ)ー
『観音崎高等学校』と
金の箔押しをされた紺色の重厚なアルバムを
しげしげと眺めている
谷崎伸哉である。
頭には白いタオルを巻き、汚いベージュの短パンに黒いタンクトップを着ていて、タンクトップの汗じみがすごい。
狭い部屋の中は押し入れから出した物で溢れ返り、 その真ん中にある、人一人分座れるスペースにて胡座をかき、高校時代のアルバムに見入っている。
ようは、あれだ。
片付けが進まず、捨てようと思っていた漫画を開いてみたら、面白くなっちゃって、読み込んじゃって、気付いたら、「なんでこんな時間なんだよ!?」となる、あれである。
彼の場合、それが高校時代のアルバムであった。
「何年前よ?」
独り言は狭い部屋で宙を滑る。
「10年前か」
答えも宙を滑り、本人を直撃する。
「もう俺も28か〜。俺、こんとき、どんな夢、見てたんだっけ?」
アルバムを見ながら、後ろにひっくり返ってしまった谷崎の、足側にある壁掛け時計は3時を指している。
午前、3時だ。
彼はこれから、以下の順番でアルバムをめくる。
自分、集合写真の自分、部活の自分、友達、集合写真の友達、好きな子、集合写真の好きな子、部活の好きな子。
そして、好きな子の写っている写真をくまなく隅から隅まで探す。
さらには、おもむろに携帯を取り出し、Facebookにログイン後、好きな子の名前の検索を開始、それに付随してアルバムにある名前に検索をかけてみる。
もう一度云おう。
午前3時である。
平日である。
明日も仕事である。
電車の時刻は決まって6時45分である。
今部屋にある谷崎スペースは部屋のど真ん中に人一人分である。
ベッドは埋まってしまった。
この閉塞感に苛まれるのは、作者だけであろうか。。。
とある深夜の谷崎伸哉。
今日の深夜が明日の伸哉の糧となるよう祈るばかりである。
合掌。
しろくまʕ ・ω・ )はなまめとわし(*´ω`*)ヨシコンヌがお伝えしたい「かわいい」「おいしい」「たのしい」「愛しい」「すごい」ものについて、書いています。読んでくださってありがとうございます!