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バナナタニ園 谷郁雄

詩集である。

少し息苦しい状況だった時に開いた本だったので、

この本の中で深呼吸をした感じになった。

幸福。

ひらがなで、こうふく、という言葉をくりかえし思った。

いつだったか大学生だった頃の、

春の午後、

家に帰ってきたら誰もいなくて、

でも、

部屋は何故かあたたかく光に満ちていて、

次の用事まで時間があったので、

台所でサッポロ塩ラーメンをなんとなく作って、

風がよく通る窓の傍で外を見ながらゆっくりすすっていたら、

なんだか、

ものすごーく幸せな気持ちになったのを思い出した。

あれは、ひだまりのすきま時間であった。

なんてことなくて、とても短い時間だったのだけど、

焦ってもいないし、

痛くも辛くもないし、

なにかをものすごく楽しみにしているというわけでも、

なにかをものすごく怖がっているというわけでも、

ない。

サッポロ塩ラーメンは、おいしいし。

今思えばあの瞬間は、なんだかいろいろなものから切り離されたとても大切なものだったのだと思う。

神様があの時間をくれたような、そんな気がするほど。

幸福ってそんな感じで転がっているのかもしれないな、といつもどこかで思っている。

天国まで持っていける大切なものって、結局はそんなものだけなのではないだろうか。

そして、人の数だけそんな瞬間があるのだろうな。

その人だけにしかわからない、ひだまりのすきま時間。

家族とも、恋人とも、分かち合えないけど、とても大切なもの。

たぶん、分かち合えないことこそが素敵なことなのだ。

そういう瞬間をいっぱい持っている人になりたい。

そういうことを思いながら、あとがきを読んでいたら、

『忙しい日々を送っている人たちの、つかのまの心の居場所になれればいいなと思う。ささやかな日だまりか木陰の役目くらいは果たせるだろう。』

と書いてあって、

とても、感動した。

しばらく、この本をベッドサイドに置こうと思っている。

バナナタニ園 谷郁雄 (まえがき・写真協力 吉本ばなな)

しろくまʕ ・ω・ )はなまめとわし(*´ω`*)ヨシコンヌがお伝えしたい「かわいい」「おいしい」「たのしい」「愛しい」「すごい」ものについて、書いています。読んでくださってありがとうございます!