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私が感じた、スーパーの魚屋さんで働く魅力 その2

この記事は、「私が感じた、スーパーの魚屋さんで働く魅力 その1」の続きになります。

前回、「魚屋の仕事の魅力」として

1   毎朝が真剣勝負

2  いつだってスリルいっぱい

3  いつだってスピード勝負

4  チームワークがなければ成り立たない

の4点を取り上げさせていただきました。

今回は2点目の「いつだってスリルいっぱい」についてお話ししていこうと思います。

魚は鮮度が命

前回ご紹介した通り、魚屋さんの主力である生の魚を使用した商品が陳列されているショーケースは毎朝、ほぼ空っぽです。

空っぽであるためには、前日のうちにあらかた商品を売り切っておく必要があります。ある程度売上を見込める量だけ出しておくのが理想です。

しかしながら、売り切ることばかりに気を取られ、売り場に陳列した商品が少な過ぎるようでは品切れなどを起こしてお客様にご迷惑をかけてしまいます。

また、ケースが露出するほどの陳列量の少なさでは、同じ商品であっても、お客様に「売れ残りの残念な商品」という悪い印象を与えてしまいます

複数の選択肢の中から、良いものを選んで買いたい。

ネットスーパーの利用者が増えていく中、それでも実店舗にご来店してくださるお客様の心理には、「自分の目で見て納得できるものを選びたい」という願望が潜んでいるのではないでしょうか。

そういったお客様にご満足いただくためには、朝から晩まで同じように商品を積み上げているのが理想なのかも知れません。缶詰やペットボトル飲料などに関しては、そうした対応もできるでしょう。しかし、魚の売り場でそれを実現するのは大変難しいのです。

商材の特性として品質の劣化が早いため、短い期間しか販売することができない商品を、売り上げの見込める以上に出しておいては大量の廃棄を行う結果になってしまいます。それは店の経営を続ける上でも、環境に対する配慮の上でも問題になってしまいます。

そしてなにより、魚屋の商品作りは人の手に頼る物が多いので、無駄に商品を作るのはスタッフの疲弊を招きます。

できるだけ余分な商品を陳列することなく、お客様にも選ぶ楽しさを感じていただける売り場を作るのが理想です。

どのようにしてお客様の満足度と商売のバランスを取っていくのか。それが魚屋にとっての永遠の課題です。

営業時間とお客様の傾向

実店舗で商売をされている方ならお分かりいただけることと思いますが、お店の営業時間中、つまり開店時間から閉店時間までの間ずっと同じくらいの数のお客様がコンスタントにいらしてくださるわけではありません。

多くのスーパーでは、開店直後の時間帯・お昼頃・そして夕方の数時間といったタイムゾーンに多くのお客様がいらっしゃいます。

そして夕方の時間帯、16時から17時頃までのお客様は比較的手間のかかる食材、例えばアタマ付きの生魚や生の切り身などを手にとってくださいますが、18時以降のお客様の多くは手軽に調理できるもの、例えば刺身の盛り合わせやお寿司などすぐに食べられるものを中心にお買い求めになる傾向があったりします。

時間帯によっても、売れる商品の傾向はシビアに変化していくのです。

ですから、お客様の買い物動向に合わせてある程度の時間ごとに売り場の陳列に変化をつけたり、売れ足の鈍りそうな商品は早めの値引きをしたり。魚屋の売り場は1日の営業時間の中でも朝と夕方でガラッと変わっていることがよくあります。

どの時間帯のお客様にも楽しんでいただける売り場づくりのために、何をどのタイミングでどれだけ追加するか。あるいは追加をせずに、他の商品を移動させたりして対応するのか。その判断も時間やお客様の入り方を見ながら行っていく必要があります。

売り場の内外にある在庫の内訳を見ながら、時間帯ごとにお客様に楽しんでお買い物していただけるような売り場を組み立てる。毎日バランスを見極めてギリギリを攻めていく。その判断を、短い時間の間に何度も積み重ねてお店を作っているのです。

こうした判断にはもちろん、蓄積されたデータも参考にします。でも、最終決定はスタッフの経験に基づく勘。私の働いていた職場ではAIの導入はありませんでしたし、たとえ完璧な予測が立てられたとしても、天候の急変や、都市圏では交通機関の事情など不測の要素はたくさんありますから、結局はやって見なくちゃわからない。手堅い商売を心がけても、どうしても賭けの要素は無くならないのです。

そして時には、蓄積されたデータよりも大勝負を仕掛けることだってあります。これまでにない良い品が思いもよらない価格で仕入れられた時などは、お客様にアピールするために思い切りよく山積みにしておくことだって必要です。

自信の商品を山積みにして、時には売り込みをしながら手に取っていただけるように仕掛けている時もスリルいっぱいです。大勝負に出た商品が、思い通りに売り切れた時の快感といったら、表現し尽くせないものがあります。

先が完全にはわからないスリルと、商売のバランスとお客様の楽しみのバランスを取るギリギリを攻めるスリル。これらもまた、魚屋という仕事を語る上では外せない魅力です。


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