D: Day One, Day Done ある職員の初日
はーい、開いてるんで入ってください。
おー、待ってましたよ!
佐伯さんっすよね。
どーもはじめまして、人事部の吉岡っす。
あれ?
首、大丈夫っすか。
そういえば退院されたのって…ああ、先週なんですね。
今日は初日なんで、あんま無理しないでくださいね。
あーたしかに。
ここ無駄に広いんすよね。迷いました?
そうそう、そこのエレベータに乗らないとこの階にたどり着けないんすよ。
面倒なんすけど、こればっかりは慣れてもらうしか無いっすね。
じゃ早速っすけど、業務の説明をしていきますね。
検査のときに橋本さんから説明ってありました?
ああ、担当藤本さんだったんすね。
ですよね〜あの人昔から超適当なんすよ。
えー、業務内容っすけど、
普段は役所みたいな仕事を想像してくれたらいいっす。
頻繁に登録申請が来るんで、それに目を通して、不備がなければこのパソコンに登録していくんす。細かい分類なんか別の職員がやってくれるんで、俺らはとにかく登録作業だけやっていく感じっすね。
何が書いてあっても、いちいち疑問とか持たないほうがいいっすよ。
じゃ、ちょっと付いて来てください。
そうなんです、ムダに広いんです。
ここが佐伯さんの作業机になりますね。
散らかっててすみません、片付ける暇がなくて。
あとで係の人に言っておくんで。
私物の持ち込みは、一切禁止っす。
ここのモノを持ち帰ってもダメです。
もうこれは規則っす。
で、これが佐伯さん専用のパソコンです。
起動するには事前に登録してもらった指紋認証が必要で。
なんで指は大事にしてくださいよ。
佐伯さんはパソコンってある程度使えるってことでいいんすよね?
っすよね、パソコン使えない人は別班に回されるんで。
別班じゃなくてよかったって顔してますね。
まー確かに、肉体的なキツさはないですけど、
ここの書類仕事も結構辛いっすよ。
書類が多すぎな上にレガシーすぎるんす。DXとかすりゃいいのに。
機密が多いとかで難しいって、いつも突っぱねられるんすけど。
あと、年に数回ぐらい現場に呼び出されるんで、そんときはその職員の指示に従ってください。
監視しろとか記録とれとか、そういう仕事っすね。
だいたい3人ぐらいのチームで行動するケースが多いんで、
まわりの同僚とも早めに仲良くなっておくと安全っすね。
現場行く際は、行く前に必ず申請書を俺に出してくださいね。
ええ、これも規則っす。
申請書もデータじゃなくて紙で出してくださいね。偽造とか横行しちゃって。この棚に入ってる、この書類っすね。記入欄、細かいっしょ。
もうとにかく慣れてください。
申請しても俺の許可がでないと絶対現場に行っちゃダメっすよ。
職員によっちゃ結構強引に連れ出そうとするんですけど、そんときは俺にひと声かけてください。
「急を要する」とか「今回は例外だ」とか上が言ってきても、いちいち相手しなくていいっす。
現場に出るときですが、たいがい防護服着ろとか指示されると思います。
防護服は隣の部屋っすね。
クローゼットに種類ごとに入ってます。
実際に見に行きましょうか。
この部屋っすね。
種類がめーっちゃ有るんで、都度、職員にどの防護服着ればいいか聞いてください。
一番よく使うのは、…このオレンジの防刃のタイプかな。
そう、できるだけ新しいの探して着てくださいね。
結構ボロいやつも混じってるんで。それが元で大怪我とか全然あるんで。
マジで俺らのセクションに予算割いてくれなくて。ひどいっすよね。
あ…!
その黄色の服に触れちゃいました?
それ素手で触っちゃだめな奴っすよ。
まいったな、案内するんで解毒ルーム入ってください。
…誰だよ置きっぱなしのヤツ。
あ、藤本さん!
お疲れっす。
今日から働く佐伯さんです。
藤本さん、こっちに新人もっとまわしてくださいよ。
人手がまーじで足りて無くて。
そういや、今回てっきり担当高橋さんだと思ったら違ったんですね。
え、マジっすか。
アガったんですか、高橋さん。
現場に出たんです?
お身体ってどうでした? 残ってました?
…そっか〜逆に良かったですね。
で、わざわざこの階に来るなんて何の用です?
…いやいや、いやいや。
今日来たばっかりですって。
そんな、いきなり新人を現場出すんですか?
まさか今騒ぎになってるやつ?
ちょっとさすがに。
そんな現場を初日の新人にやらせます?
…いやまぁ、そう言われるとそうなんですけど。
ただ、これ以上減らされると、マジで俺が怒られるんすよ。
せめて潮崎さんでいいじゃないっすか。
あの人もうすぐ更新時期っしょ?
え…ひど。
申請書無しで勝手に連れて行くのは絶対ダメって言ってるじゃないですか。
潮崎さんの親族にどう説明するんすか。
おたくの息子さんは、26世紀頃まで7次元で身を引き裂かれる思いしてますねーって言うつもりっすか。
藤本さんが広報課にカバーストーリー依頼しておいてくださいよ。
だからもう今月は無理ですって。
だいたい、藤本さんがもっと人を攫ってくればこんなに俺が困ることもないんじゃないですか。
今回ばかりは別の誰かを招集してくださいよ。
…はい、でたよクライシスカード。
先月も使ったじゃないですか。
…もう、今回が最後っすよ。
じゃ、すいません佐伯さん、申請書、今すぐ書いてもらえます?
誓約書にもなってるんで、どうしても手書きじゃないといけなくて。
…ああ、解毒ルームはもういいっす。
そういや、佐伯さんって今まで何人殺したんでしたっけ?
…おお、ヤバいっすね。
その首の痣ってもしかして執行のときのっすか。
じゃ、無理やり蘇生系っすよね。
そういう人ってキツめの現場にすぐ連れて行かれるんすよ。
人権も糞もあったもんじゃないっすよね。
苦しまずにアガれるよう、頑張ってください。
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