エピローグ


真美 「最後までお読みいただき、ありがとうございました。最終話で体調を崩してしまい、ご心配をおかけしていましたが、この通り完全復活しております。あぁ、千尋ちゃんがちびっ子に遊ばれてるとこ見てみたかったなぁ」
千尋 「真美ちゃん?なんか彩芽ちゃんが留学してから一言多くない?」
真美 「そう?気のせいじゃない?あ、千尋ちゃん、筋肉痛は治ったの?」
千尋 「うん、おかげさまで治りましたー。で、今日はなにするんだっけ?」
真美 「えっと、このお話も一区切りってことで、振り返りをしてほしいんだって。ということで、千尋のお部屋から中継でお送りいたしまーす!」
千尋 「あ、なるほどー。て、それならちゃんときれいにしておきたかったのにー。シーツもしわしわなままだし、机に点字のプリントが散らかってるのもみんなにばれちゃうじゃん」
真美 「まぁ気にしない気にしない。それではスタートー!」【パチパチ】
千尋 「ス、スタートー!」

真美 「そこでさっそくなのですが、本日は留学中の彩芽にかわって、スペシャルゲストをお呼びしておりまーす!」
千尋 「え、だれだれー?」
真美 「本日のゲスト、張本祐介さんでーす!どうぞお入りくださーい!」
千尋 「え、う、うそー!」
【ガチャ】 「こんにちはー」
千尋 「え、えーっ!」【あわあわ】
真美 「張本さんは千尋のお部屋は初めてですか?」
祐介 「あ、はい、そうですね」
千尋 (わぁ、こんな汚い部屋見られたら嫌われちゃうー。どうしよう……)
祐介 「リラックスできるいいお部屋だね」【にこっ】
千尋 「え、ほんとに?ありがとう」【にこっ】
真美 「今日はそんなラブラブなおふたりに、お互いの好きなところを聞いてみたいと思いまーす!」【パンパカパーン】
祐介 「そ、それはちょっとー」
千尋 「私も遠慮しとこうかな……」【もじもじ】
真美 「いやいや、進行表にそう書いてあるので。では千尋ちゃんからお願いしまーす」【ちらっ】
千尋 「え、あ、私ちょっとお手洗い行ってきまーす!」【ガチャッ、ドタドタ】
真美&祐介 「あ……」
真美 「えーっと主人公がいなくなってしまったので、急遽このコーナーはカットということにさせていただきます。楽しみにしてくださっていた方、申し訳ありません」
祐介 (はぁ、助かったー)
真美 「それでは、本日ここにいらっしゃってない方からいくつかメッセージをいただいておりますので、ご紹介いたします」
祐介 「メッセージをくださった方、ありがとうございます」
真美 「まずは大会参加のため来られなかった前田晴人さんからです。『千尋、元気してるか?保育士目指し始めたんだって?がんばれ、応援してるからな。じゃあ、おれも大会がんばってくるわ。じゃあな』といただいております。前田さん、本当にありがとうございます」【ぺこり】
祐介 「ありがとうございます」【ぺこり】
【ドタドタ、ガチャ】 「前田君、ありがとう。大会がんばってー」【はーはー】
祐介&真美 「おかえりー」

真美 「続いて、今さっき届いたものになります。おっ、張本さんもよくご存じの中谷茜さんからですね」
祐介 「え、中谷先輩から?」
真美 「えぇ、『なんで後半になるにつれて私の出番がどんどん減ってるのよー!そのせいでお話の中でご報告できなかったので、ここで発表させてください。私中谷茜は、来年度から市役所勤務で社会人デビューすることになりましたー。今後とも見守っていただければ幸いです。最後に、このお話の最年長として、みなさんのご活躍を陰ながら応援しておりまーす!』えぇ、びっくりマークが1、2、3、…5つでいただいています」
祐介 「先輩、ありがとうございます」
千尋 「それからおめでとうございます」
真美 「メッセージはこれが最後になります。あ、恵里花先輩、あいやいや西村恵里花さんからですね。『みなさんお久しぶりですー。松川さん、この間の実習ではお疲れさま―。これからもよろしくね。私は恋も夢も引き続きマイペースでがんばりまーす。最後に真美ちゃん今日は進行お疲れ様。楽しく聞かせてもらってるよー』とのことです。わー、先輩、ありがとうございます。慣れない進行ですが、最後までがんばりまーす」
千尋 「みなさんたくさんのメッセージ本当にありがとうございます」【ぺこり】
祐介 「ありがとうございます」【ぺこり】

真美 「えぇ、それでは最後に私たちも一言ずつお話しして、この場を締めたいと思います。まずは張本さんお願いできますか?」

祐介 「あ、はい。まず、今日は呼んでいただいてありがとうございました。えーっと、私も点字サークルに入って、それから千尋に出会って、すごく世界が広がったなと感じています。んー、なんて言うんだろう、それこそサークルに入ろうって決めたときは困ってる人を助けたいみたいなちょっと恩着せがましい感じもあったんですけど、ほんとはそんなんじゃなくて、見える人も見えない人も、少しやり方が違うだけで、全然一緒に楽しめるんだなって思うようになりました。それまで助けてあげてるみたいに思ってたことも、そのやり方が違う部分を埋めるためにお互いちょっとずつ歩み寄ってるってだけのことで、なにも特別なことじゃないんだなぁって。これからもいろいろな人と出会って、色んな世界を感じてみたいなと思っています。最後になりますが、物語にお付き合いいただいたみなさん、本当にありがとうございました。それから千尋、いつもありがとう。これからもよろしくね」


千尋 「祐介君、そんな風に思ってくれてたんだ。こちらこそありがとう」
真美 「張本さんありがとうございました。なんかもう締めてもらった感じになってるんですけど、次は私の番みたいなので、どうか少しの間お付き合いください。んー、私は少し前まで、できないこととか失うことをすごくネガティブにとらえてたんですけど、最近それがちょっとずつ変わってきてて……実は私小さい頃から体が弱くて、なにかにつけて体壊して寝込んでたんです。で、激しい運動はできないし、体力がもたなくてやりたいこと全部やりきれないのもしょっちゅうで、そんな自分があんまり好きじゃなかったんです。でもこの間熱出してダウンしてたときに、ツクツクボウシの声を聞きながらぼんやり窓の外眺めてたら、意外とこれも悪くないなって思ったんです。もちろん千尋ちゃんと一緒に保育園実習行けないのは悔しかったんですけど、今千尋ちゃんはどうしてるかなぁとか、あのお散歩してるわんちゃんかわいいなぁとかぼーっと考えてたら、なんかすごくあったかい気持ちになってて。これからもしんどくなっちゃうことはあると思うんですけど、なんかそのときはそのときの楽しみを見つけられそうだなって思ってます」
千尋 「真美ちゃん……」
真美 「あ、あごめん。なんか重い空気にしちゃって……」
千尋 「そんなことないよ。話してくれてありがとう」
真美 「千尋ちゃんも聞いてくれてありがとう。じゃあ最後は千尋ちゃん締めてもらっていい?」
千尋 「あ、はい、えーっと、まずは……」

   「ちょーっと待ったーっ!!」

   「ん?……」
千尋 「もしかしてその声は?」
【ドタドタ、ガチャ】 
   「彩芽ちゃんでーす!最後にどうしても言いたいことがあって、飛んで来ちゃったー!」
真美 「彩芽、アメリカにいるんじゃなかったの?」
彩芽 「最後なんだから、そんなかたいこと言わないでよー」
千尋 「よく分からないけど、会えてうれしい」
真美 「で、どうしても言いたいことって?」
彩芽 「張本さん、千尋をどうかよろしくお願いします!」
祐介 「え、あ、はい……」
千尋 「あのさ、彩芽ちゃんはいったい私のなんなの?」
彩芽 「え?親友のひとりとして、ちゃんとご挨拶しときたくって」
真美 「はぁ……?」
千尋&祐介 「あ、どうも……」
真美 「なんか彩芽が来てからしんみりモードがどっかいっちゃったじゃない」
彩芽 「別にいいじゃん。最後はしんみりしないといけないってルールがあるわけじゃないんだし」
真美 「んー、それもそうだね。せっかく来たんだし、彩芽も一言二言話していく?」
彩芽 「あ、そうだね。んーなにも考えてなかったんですけどー、えぇ、大学に入って1年半、今振り返って楽しいなって思えてることが、すごく幸せなことなんだなって思っています。千尋っていう新しい友達に出会えて、真美との友情もさらに深まって、もうなにも言うことないなって。今は慣れないアメリカ暮らしでバタバタしてるんですが、これからも私らしく一日一日をがんばりたいと思っています。最後に、千尋、真美、いつも私のテンションに付き合ってくれて、ほんとありがとう。これからもよろしくね」
千尋&真美 「こちらこそだよー」

真美 「えぇ、それじゃあ改めて最後の締めは千尋ちゃんお願いしまーす。ここまでの進行は吉村真美でしたー」

千尋 「あ、はい。えぇ、なんだっけ、あぁもう最後まで頼りない主人公ですみません。あ、そう、こんな頼りない私がここまで大学生活を送れてるのは、ほんとにみんなのおかげだと思っています。それこそ中高の6年間ずっと盲学校だったので、大学に入学するってなったときは、ジャングルにひとりほりこまれたみたいな気分で、友達できないんじゃないかとか、いじめられるんじゃないかとか、授業についていけないんじゃないかとか、不安しかなかったんです。でも、真美ちゃんは優しいし、祐介君は頼れる先輩だし、彩芽ちゃんはなんかいつもおもしろいし、気づいたら毎日大学行くのが楽しみになってました。ほんとみんなありがとう。それから、これは今でも全くなくなったわけではないんですけど、なんか自分は必要とされてないんじゃないかって思いがあって、目標みたいなのがずっと分からなかったんです。ただでさえ目が見えなくてできないこと多いのに、かと言ってスポーツとか音楽とかいろんなとこで活躍している障害者の人みたいに、なにか目立った才能があるわけじゃなくって。どこいっても気を遣われるばっかりで、正直自分なんていない方がいいんじゃないかって思ってました。でも、そんな私にもありがとうを言ってくれる人がいて、その一言が、あぁもうちょっとがんばってみようかなって思わせてくれるんです。今は生まれて初めて保育士になるっていう目標に出会えて、まぁ正直親には反対されてる、っていうか心配されてて、たぶん大変そうなことは間違いないんですけど、無理って決まったわけじゃないので、もうちょっとがんばってみようかなって思っています。えぇ、最後に主人公として読者のみなさんに一言……最後までお読みいただいて、本当に本当にありがとうございます。最後まで落ち着きのないお話でしたけど、んー、こんなところまで読んでくれてるってことは、少しは楽しんでもらえてるのかな?とうれしく思っています。このお話はいったんここで一区切りになりますが、私たちそれぞれの人生はこれからもまだまだ続いていくので、これからもそっと見守っていただければ幸いです。最後になりますが、本当にありがとうございました。未来大学2年生松川千尋」

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