第4話 初めての学祭


今日は点字サークルの活動日なんですが、私は用があって遅れて合流することになっています。あぁ、急がないと……


祐介 「ちょっと早いですが、今日は話し合いたいことがあるので、ミーティング始めたいと思います」
茜&広樹 「はーい」
祐介 「点訳の進捗はどうですか?」
茜  「3章がもう後少しです。明後日には松川さんに触読校正入ってもらえると思います」
祐介 「ありがとうございます。それで今日相談したいのが、学祭のことで。今年も1部屋借りてなにかやると思うんですが、どうしましょう?」
茜  「たしかに毎年視覚障害関係のグッズ展示と、点字打ち体験ばっかりだもんね。そろそろ新しいことしてみたいかも。せっかくおもしろい1年生も入ってくれたことだし」
【コンコン】「すみません、遅くなりましたー」
茜  「おっ、噂をすれば」
千尋 「えっ、なにか噂されてたんですか?」
祐介 「いや、学祭どうしよっかって話になってて、松川さん何かいいアイデアない?」
千尋 「…んー、点字付きカルタ会やるのはどうですか?」
   「点字付きカルタ会??」
千尋 「はい。最近じわじわ流行ってきててルールは坊主めくりと一緒なんですけど。点字が読める人も読めない人もお殿様かお姫様かお坊さんかが分かるようになってるんです。私も家にあるんですけど、ひとりじゃできないからほこりをかぶりがちで」
祐介 「それ、おもしろそう!カルタは松川さんのを使わせてもらってもいいのかな?」
千尋 「はい。久しぶりに引き出しから出してもらえて、カルタも喜ぶと思います」
茜  「それじゃあ決まりだね!」


◆◆


さて、学祭当日です。私こういうのやるの初めてだからなんかドキドキするなぁ。うまくいきますように……。

祐介 「じゃあ松川さんはここでお客さんにルール説明お願いしていいかな?」
千尋 「はい。がんばります」
祐介 「ありがとう。じゃあぼくは入り口の方で客引きしてくるね」

   「ちひろー!がんばってるじゃない」
千尋 「お、おかあさん、ちょっと声でかいって……」
母  「あ、ごめんごめん。あ、先輩ですよね。うちの子がどうもお世話になってますー。もういろいろ頼んないですけど、鍛えてやってください」
祐介 「あ、こちらこそお世話になっています」
母  「うちの子がいろいろご迷惑おかけしてませんか?いやぁぜったい迷惑かけっぱなしですよねー。ほんとすみません……」
祐介 「いやぁそんなことありませんよ。このイベントも松川さんが提案してくれて、こっちの方がいろいろ助けてもらってます」
千尋 (だから静かにしてって言ってるじゃん。もう、先輩困っちゃってるし。これで嫌われちゃったらどうしてくれるのよー……)
母  「じゃあ千尋、がんばってね」
千尋 【こくり】(はぁ、やっと帰ってくれたー。恥ずかしかったー)

   「千尋やっほー!遊びにきたよー」
千尋 「ふたりともきてくれたんだね。ありがとう」
真美 「大盛況みたいだね」
千尋 「うん、おかげさまで。これで来年は会員が増えてくれたらいいなぁ」
彩芽 「で、点字カルタで坊主めくりできるんだって?千尋先生ルール教えてー」
千尋 「えっとね、この棒1本のがお殿様、こっちの2本あるのがお姫様、で、この六角形みたいなのが続いてるのがお坊さんだよ。他のルールはふつうの坊主めくりと一緒。分からなくなったらいつでも聞いてね」
真美 「へぇ、すごいなぁ」
彩芽 「たしかにこれなら簡単に覚えられる」
千尋 「それじゃあゲームスタートー!」
彩芽 「よーし、負けないぞー」

真美 「千尋ちゃーん!これなんだっけー!」
千尋 「ちょっと貸して……これは線が1本だからお殿様だよ」
真美 「あ、そうだったね。ありがとう」
千尋 (私が教える側になるなんて、ちょっと新鮮だなぁ)

彩芽 「えっとこの六角形のはたしかお坊さんだったよねー……うわー!ここまで順調だったのにー!」
真美 「私で最後だね。えっとこれはお姫様だからー……やったー!私の勝ちだー!」
彩芽 「えぇ?こんなはずじゃあ……悔しい!」

茜  「あちらで点字打ち体験もできるので、よかったらやっていってください」
真美 「あ、ありがとうございます。ぜひやらせてください」

彩芽 「すみません。ファってどうやって打ったらいいんですか?」
広樹 「あ、それは2マス使うんですけど、1マス目に疑問符、2マス目にハって打ってください」
彩芽 「ありがとうございます」

千尋 「ふたりともありがとねー」
真美 「こちらこそありがとう。すごく楽しかったよー」
彩芽 「ほんと、点字打つのもカルタも初めてだったもんね」
千尋 「よかったぁ。じゃあまたねー」
真美&彩芽 「バイバイ!」
祐介 「どうもありがとうございました」【ぺこり】

◆◆

祐介 「はぁ、これで片付けもオッケーかな。みなさんお疲れ様でしたー」
   「お疲れ様でしたー」
茜  「私3年目だけど、こんなに人来たの初めてだな。うれしい悲鳴だったけどねー」
祐介 「松川さんのアイデアのおかげだね。ほんとありがとう」
千尋 「いや、そんな……」【もじもじ】


こうして学祭の2日間が怒濤のように終わったのでした。あぁ、先輩に「ありがとう」って言ってもらえた。帰ったらがんばってくれたカルタにもお礼言ってあげよーっと。


つづく

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