第2話 お泊まり会しよ


千尋 「今度の土曜日、家族みんな用事で出かけて私ひとりだから、よかったら遊びに来ない?」
真美 「え?ほんと?行きたい行きたい!」
彩芽 「おっ!千尋んちでお泊まり会?楽しそう!」
千尋 (お泊まり会とは言ってないんだけどなぁ……まぁでも夜も帰って来ないからそれでもいいか)

千尋 「そしたら3時に東駅集合ね」
真美&彩芽 「オッケー!」
真美 「今から楽しみだなぁ」


◆◆


えーっと、たしかあれがここにあって……あ、私は今おやつの準備中です。ふたりはもう家に来てるんだけど、彩芽さんが「せっかくだから千尋の世界を体験したい」って言い出して、ふたりは人生初?の目隠しで待ってくれています。彩芽さんの発想と行動力にはいつも驚かされるなぁ。あ、そうそう、この間食堂で彩芽さんにいたずらされたから、今日は手作りクッキーにひとつだけわさびを挟んで、いざ仕返ししちゃうぞー。


千尋 「コーヒー入ったよー」
真美&彩芽 「ありがとう」
千尋 「ここに持ち手があるからね。熱いから気を付けてー」
真美&彩芽 「はーい」
真美 「なんかこわいなぁ。こぼしちゃいそう」
彩芽 「んー、こんな感じかな……?わ、おいしい!なんかいつもより香りが良くて深い味わいな気がする」
真美 「ほんとに?ていうかもう飲めたの?」
彩芽 「うん。意外とふつうにやったら飲めたよ」
真美 「そうなの?じゃあ私も……わー、ほんとだ!すっごくおいしい!」
彩芽 「でしょ?」

千尋 「ふたりが来る前にクッキー焼いたからどうぞー」
彩芽 「えっ?ほんとに?うれしい!」
真美 「ありがとう」
千尋 「ふたりとも手出してー。はいどうぞー」【にやり】
真美&彩芽 「いただきまーす!」
真美 「うわっ!千尋ちゃん、なんかこれわさびいっぱい入ってるんだけど~!」
千尋 (えっ……)

彩芽 「あれ?こっちはジャムたっぷりでおいしいけどなぁ。あ、もしかして、私がこの間千尋のラーメンに辛子入れたから、その仕返しをしようとしたんでしょ」
真美 「要するに彩芽のせいってことね。ほんとにもう、トラブルメーカーなんだから」
千尋 「真美ちゃんごめんね。他のは全部ジャムだから、お口直しに食べて。お水持ってこようか?」
真美 「あ、大丈夫。悪いのはこの子だから。ねぇ、彩芽」
彩芽 「私今日は何も悪いことしてないもーん」
千尋 (やっぱり私にはいたずらは無理みたい。それにしても、真美ちゃんには悪いことしちゃったな)


◆◆


彩芽 「おもしろいもの見つけたよー」
真美 「いやそれ、やばいやつじゃん。しまっといてよ」
彩芽 「何言ってんのよ。真美乗ってみなさいよ」
真美 「えーっ?気が進まないなぁ……」【ぶつぶつ】

真美 「うわっ、またちょっと増えてる。これはしばらくおやつ控えないとな」【しょんぼり】
彩芽 「千尋も乗ったら?」
千尋 「いいよ、私は。それより彩芽さんが乗ればいいじゃん」
彩芽 「乗ってもいいけど。私スポーツウーマンだから、日頃から体重管理してるし。体重よりは体脂肪率とか筋肉の質とかの方が気になるんだけどなぁ」
千尋 「そうなの?」
真美 「彩芽はずっとソフトやってて、よく筋トレしてるもんね」
彩芽 「そうなのです。だから乗るとしたら千尋なのですー」
千尋 「え、あ、そんなぁ……」
彩芽 「あぁ、これは真美よりやばいね。ひそひそひそ」
千尋 「えーっ!!うそ、いつの間に」【しゅん】
彩芽 「これはふたりとも運動が必要ね。今日は風気持ちいいし、みんなで川沿いを走りましょう!」
千尋 「う、うん」
真美 「私そんな走る用の靴で来てないんだけど……」
彩芽 「そしたら真美は今日だけウォーキングで免除ね」
真美 「ふぅ、助かったー」
彩芽 「千尋は私がガイドするから安心して」
真美 「それはもっと不安じゃない?」
千尋 「ちょっとこのかっこうじゃ走りにくいから、私着替えていくね。彩芽さんは大丈夫?私の貸そうか?」
彩芽 「え、いいの?ありがとう」
千尋 「これでいい?私よりけっこう背高いけど大丈夫かな?」
彩芽 「ありがとう。気合いでなんとかなるよー」
千尋 (気合いの問題じゃない気がするけど……)


◆◆


千尋 「これで引っ張って」
彩芽 「へぇ、こういうのがあるんだ」
千尋 「伴走してもらうときに使うひもなんだけど、きずなって言ったりもするんだって」
真美 「いい名前だね」
彩芽 「これが私と千尋の心のきずなとなって……あぁなんかすっごくわくわくしてきた!私走りには自信あるから任せといて!」
真美 「なんかポイントずれてる気がする……」
彩芽 「それじゃあ千尋、いっくよー!スタート!」

彩芽 「遅かったら言ってね」
千尋 「はーはー、もう十分速いよ。はーはー」
真美 「私も行こうっと。たしかウォーキングって、ちょっと早歩きでいくといいんだよね」

千尋 (はーはー、彩芽さん速いー……これどこまで行くつもりなんだろう)

彩芽 「はいゴールー。千尋大丈夫?」
千尋 【こくり】
彩芽 「私ちょっと走り足りないから、もう1往復行ってくるね」

真美 「ふぅ終わったー。あ、千尋ちゃん、大丈夫?ほんと彩芽ったら手加減なしなんだから」
千尋 「うん。もう大丈夫。あれでも大分合わせてくれてたみたいで、走り足りないって言ってすごいペースで2本目行っちゃった」
真美 「彩芽体力だけはだれにも負けないからなぁ。あのキャラですごいストイックだし」
千尋 「私たちも少しは見習わないとね」
真美 「だね。あ、帰ってきた」
彩芽 「はーはー、ふたりともおまたせー」
真美 「ちょっと言いにくいんだけどさ、シャツがめくれておへそ見えちゃってるよ」
彩芽 「えーっ!うっそー!それじゃあさっきすれ違ったおじさんにも見られたかもじゃん。ショックー」
真美 「いいんじゃない?減るもんじゃないし」
彩芽 「ひとごとだと思ってーっ」
真美 「ひとごとだもーん」
千尋 (彩芽さん、意外とこういうので動揺するんだぁ)


◆◆


真美 「なんかこうしてると修学旅行みたいだね」
彩芽 「そうだね。遅くまでおしゃべりしてて先生に怒られたりしたっけ」
真美 「懐かしいなぁ」
彩芽 「真美はさ、中村君と最近うまくいってるの?」
真美 「まぁぼちぼちって感じかな。なんか忙しいみたいでそんなには会えてないけど、仲良くやってるよ」
千尋 「中村君って?」
彩芽 「真美の彼氏だよ。めちゃめちゃイケメンで、運動神経抜群なの。おまけにすごくいいやつでさ」
千尋 「へぇ、そうなんだ。真美ちゃん彼氏いるんだ」
彩芽 「そう、それで真美もけっこう美人だからさ、ふたりが並んでたら写真撮りたくなっちゃうんだよね」
真美 「ちょっと恥ずかしいなぁ」
千尋 「それは1回でいいから見てみたいな。それで彩芽さんは彼氏いるの?」
彩芽 「それがさぁ、まだだれも私の魅力に気づいてくれないんだよね。みんなほんとどこ見てんの?って感じ」
真美 「すごく自信まんまんだね」
彩芽 「そう言えば千尋は好きな人とかいないの?」
千尋 「え、わ、私はまだだよ」
彩芽 「これはいるね」
真美 「だね」
千尋 「真美ちゃんまで~」


結局その後張本先輩への想いを根掘り葉掘り聞かれちゃいました。でもすっごく楽しい1日になりました。今度は真美ちゃんか彩芽さんのお家でお泊まり会できたらいいなぁ。


つづく

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