第9話 行ってらっしゃい


彩芽 「聞いて!来月から留学行けることになったの!」
千尋&真美 「……、え!すごい!おめでとう!!」
彩芽 「ありがとう」【にこっ】
真美 「で、どこ行くことになったの?」
彩芽 「アメリカ。SDGsを本格的に勉強したいなぁと思って」
千尋 「すごいなぁ。彩芽ちゃん、入学したときからずっと留学行きたいって言ってたもんね」
彩芽 「えへへ。1年半越しでやっと願いがかないそう」
真美 「どれくらい行くの?」
彩芽 「10ヶ月だよ」
千尋 「えぇ、けっこう長いね」
真美 「しばらくさみしくなるね」
千尋 「だね」
彩芽 「あら、もっとさみしがってくれていいんですのよ?」【にやにや】
真美 「んもー、せっかく名残惜しく感じてたのに、雰囲気が台無しじゃない。ねぇ」【ちらっ】
千尋 「そうだよ。相変わらず一言多いんだから」【ぶつぶつ】
彩芽 「はーい。失礼しましたー」
真美 「でもせっかくだから行ってらっしゃい会やりたいね」
彩芽 「ほんとに?うれしい!」
千尋 「うん、やろうよ」
真美 「彩芽、どこ行きたい?」
彩芽 「うーん、あ、久しぶりにカラオケ行きたいかも」
真美 「カラオケね。彩芽らしいな。千尋ちゃんもそれでいい?」
千尋 「うん、いいよ」
彩芽 「じゃあ決まりー!」

真美 「思えば3人でカラオケ行くの初めてかもね」
彩芽 「あ、たしかに。高校時代真美とは何回か行ったけど、千尋の歌声聞くの楽しみだなぁ」
千尋 「私音痴だからそんなに期待しないでー」
彩芽 「またご謙遜を」【ツンツン】
真美 「でも千尋ちゃん耳よさそうじゃん」
彩芽 「たしかに目の見えない有名なミュージシャンの方、けっこういるよね」
千尋 「そうだけどさ、みんながそうってわけじゃないんだって!!」【もやもや】

【……】

真美 「なんかごめんね。そりゃあいろんな人がいて当然だよね」
彩芽 「私もごめん。いきなりプロの人持ち出されたら困っちゃうよね」
千尋 「うーん、私の方こそ急に変なこと言ってごめん。小学生のころ、歌が下手でばかにされたの思い出しちゃって。何年前のこと引きずってんだって話なんだけどね。なんか目が悪いっていうと知らない間にハードルあげられちゃうことが多くて……だから最近全然人前で歌ってないんだよね」
彩芽&真美 「そうだったんだ」
千尋 「ごめん暗い空気にしちゃって。でもふたりとなら楽しめる気がするから大丈夫!」【にこっ】
真美 「うん、一緒に歌お?」
彩芽 「大丈夫。私もよく調子乗って歌えない曲入れてへんな声出たりするから」
千尋 「うん!なんか楽しみになってきた!」


◆◆


(はぁ、今日も疲れたぁ。ん?真美ちゃんからLINEきてる。わぁ!それはいいアイデア!「いいねー!明日作戦会議しよ」っと……送信。おやすみなさーい)


◆◆


彩芽 「千尋、飲み物何がいい?」
千尋 「あ、私は烏龍茶で」
彩芽 「オッケー」
千尋 「ありがとう」
真美 「彩芽はまた不思議なブレンドしてますねー」【くすくす】
彩芽 「え、このコーラとブドウジュース半分ずつっていうのが最高なんだから。よかったらおふたりもいかが?」
真美 「私は遠慮しとこうかな」
千尋 「わ、私もやめとくー」
彩芽 「おいしいんだけどなぁ……」【きょとん】

真美 「麦わらの帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる♪……『もう離れないで』と泣きそうな目で見つめる君を 雲のような優しさでそっとぎゅっと 抱きしめて 抱きしめて 離さない♪」*1

彩芽 「グッバイ 君の運命のヒトは僕じゃない♪……たったひとつ確かなことがあるとするのならば 『君は綺麗だ』♪」*2

真美 「彩芽はやっぱり歌うまいね」
彩芽 「いやぁ、それほどでも。真美もますます色っぽくなっちゃって」
真美 「ちょっと、それ褒めてる?」
彩芽 「褒めてる褒めてる。なんだろ、大人の魅力?って感じ」
真美 「そう?あ、千尋ちゃん歌わないの?」
千尋 「え……」
彩芽 「せっかく来たんだしさ、歌わないとお金がもったいないよ?あ、千尋の好きなあの曲入れとくね」
真美 「はいはい、マイク持って」
千尋 「う、うん」

千尋 「会いたいと思う回数が会えないと痛いこの胸が君の事どう思うか教えようとしてる♪……でもこんな事を伝えたら格好悪いし長くなるだけだからまとめるよ 君が好きだ♪」*3

彩芽&真美 「フーフーッ!」【パチパチ】
彩芽 「よっ、歌姫!」
真美 「さっすが」
千尋 「そ、そうかな……ありがとう」
彩芽 「さっ、どんどん盛り上がってくよーっ!1、2、3!」
千尋 (やっぱりふたりといると楽しいな。入学前は友達できるか不安だったけど、すてきな人にたくさん出会えて、私は幸せ者だなぁ。でも彩芽ちゃんは夢に向かって羽ばたいてっちゃうから、しばらく会えないのかぁ)

千尋&彩芽 「残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び立つ♪……この宇宙を抱いて輝く 少年よ 神話になれ!♪」*4


彩芽 「あぁ、楽しい」
真美 「ふたりとも息ぴったりだね」
千尋 「初めて一緒に歌ったのにね」
彩芽 「……あれ?もうこんな時間?!」
千尋 「楽しい時間はすぐすぎちゃうよね」

真美 「ここで私たちから彩芽にサプライズがありまーす!」
千尋 「Yeah!!」
彩芽 「え、待って、どういうこと?」
真美 「彩芽がアメリカでがんばれるように、ふたりで愛を込めてプレゼントを用意しましたー!」
千尋 「開けてみて?」
彩芽 「えっ、なにこれ……あ、暖かそうな毛布だ!ふたりともありがとう!」【ぐすぐす】
真美 「喜んでもらえてよかった」
彩芽 「あ、メッセージカードもある」
千尋 「私も数年ぶりに文字を書かせていただきましたー」
彩芽 「いつもありがとう。あやめちゃんがんばってね!…えぇ!ありがとう!」【ぐすぐす】
千尋 「ふふっ」
彩芽 「で、こっちは?…ん?寒いアメリカでお腹出して寝てたら、風邪引くぞー!…って、真美?!ちょっとばかにしすぎでしょー!」
真美 「へへ」【にやにや】


◆◆


さて、今日は出発の日です。私と真美ちゃんも空港までお見送りにきています。もうあと5分でお別れなんて……どうしよう!


彩芽 「じゃあ、行ってくるね」
千尋 「気をつけてね!」【ぐすぐす】
彩芽 「もう電話とかでは話せるんだからそんなに泣かなくったって」
千尋 「この間号泣してた人が言うなー!」【ぐすぐす】
真美 「無事に着いたらまず連絡してね」
彩芽 「うん、じゃあね」【にこっ】
千尋&真美 「行ってらっしゃーい!!」


つづく



*1 あいみょん - マリーゴールド
*2 Official髭男dism - Pretender
*3 back number クリスマスソング
*4 残酷な天使のテーゼ - 高橋洋子

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