岡田の話②

高校を卒業し、僕は岡田と京都の予備校で浪人することになった。

そもそも岡田と仲良くなったきっかけは、高校1年の1学期の中間テストで世界史の点数が僕ら2人だけあまりに悪すぎたからだったから、それからずっと学力はクラスの下の方で2人とも大体同じくらいで、予備校のクラスも一緒で。
高校の時よりももっと2人だけでいる時間が長くなった僕らのその時のブームは、おぎやはぎとバナナマンのラジオを聞くことだった。

そんなある日のこと。
いつも通り予備校の前のマクドナルドで昼飯を食いながら、いつも通りラジオの話をしていた時だった。
僕が「日村さんの歯が無かった回、めちゃくちゃ面白かったな」などと話していたら、岡田が小さくため息をついた後で
「もう勉強すんの嫌になっちゃった」
と言い出した。
勉強なんて全くせずに自習室でラジオばっかり聞いていたくせにめちゃくちゃ共感してしまった僕は
「お笑い芸人になったら楽に稼げるかもな」
と、アホすぎる発言をしてしまった。
岡田も勉強が嫌すぎてアホになってしまっていたから、
「お笑い芸人なんか楽しいし金稼げるし、最高やん!」
と、アホPart2発言で後を追ってきた。
「俺が芸人やるなら漫才で、お前がボケでおれがツッコミやな!」
とアホPart3発言で更なる高みを目指そうとしたら、

「それなら、まじで芸人やりたいなぁ」

という岡田の発言に、衝撃を受けた。

先述の通り、岡田は自己主張が全く無い人間だ。
岡田が自らあれしたいこれしたいと言うのをそれまで全く聞いたことがなかったし、初めての自己主張にしては実現の可能性が無さすぎるし、ましてやお笑い芸人という人前に立つ仕事を、人見知り大魔神でもあるこいつに出来るわけないじゃないかと頭では思いながら、
岡田がそんなことを言うのは意外なことのはずなのに、どこかリアルな質感を伴っていたその願いは、僕にとって救いの言葉だった。
「面白い」で目立てなかった僕を、面白いやつが面白いことをするために必要としてくれた気がしたからだ。

そうして僕は、岡田とお笑い芸人になることを決意する。
1番面白いやつとして目立つことは出来なかったけど、「1番面白いやつとコンビを組んでるやつ」として目立つために。

最近、3歳から知っている一番仲の良い幼なじみとよく一緒に飲む。
この間そいつが急に「お前のことが羨ましかった」と言い出した。
「お前はみんなと仲が良かったから」と。
その時僕は何故か、一番尊敬する先輩から
「岡田を相方に選んだのが、桜井の最大の功績だなぁ」
と褒められたのがとても嬉しかったことを思い出した。

あぁそうか、もしかしたら。
僕の周りには岡田をはじめ、面白い人達がたくさんいる。
「面白い」が大好きだったから、昔から面白いやつとは大体友達だった。
そんな僕の近くにいるたくさんの面白い人達を目立たせることが出来たら、その真ん中にいる僕も目立てるんじゃないか。

僕が目立てる場所は、『「面白い」の中心』なんじゃないか。

幼なじみのその言葉を聞いて、自分の大好きなことで目立てる場所を、やっと見つけた気がした。

そんな僕の周りの「面白い」人達を紹介していくために、このnoteを始めた。
もちろん、その中心にいる僕が目立つために。

長過ぎるプロローグ、これにて終了!


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