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没後25年、“世界で最も愛されたプリンセス”の物語

没後25年、イギリスのダイアナ元皇太子妃の半生を描いた初の劇場用ドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』が、9月30日に公開されます。

1981年にチャールズ皇太子と婚約する数週間前から、1981年のロイヤルウエディング、1997年のパリでの交通事故死と王室国民葬(準国葬)までの約16年間が、時系列で編纂されています。夫妻のインタビューなどを中心に、メディアでの報道、国民の意見などを通して、非業の死を迎えたダイアナ元妃の物語が浮き彫りになります。

ダイアナ元妃の人気

ダイアナ元妃に対する取材は、お妃候補となった頃から凄まじかったな…と記憶にはあるものの、改めて映像を見て、人々が敬意を示しながらも、熱狂する様子に驚きました。世紀のロイヤルウエディングを経て、新婚生活がはじまったものの、夫妻の間には不協和音が流れ始めまます。夫妻が公務に出かけると、誰もがダイアナ元妃を求めるため、皇太子はエスコート係のようになってしまうのです。王室は今まで市民の視線を浴びることに慣れていたのに、ダイアナ元妃が市民の視線を独占するようになりました。

前代未聞の夫婦喧嘩

公務のやり方に何か工夫ができなかったのだろうか?と思ったりもするのですが、夫妻の溝は深まるばかり。双方に不倫があったことを示すプライベートな会話が報道され、インタビュー、自叙伝などを通して、前代未聞の夫婦喧嘩が繰り広げられました。

結局、別居、離婚となるのですが、セーラ元妃(チャールズ皇太子の弟アンドルー王子の元妃)のインタビューが、女性たちに芽生えた価値観を物語っているようで興味深かったです。

インタビュアー:言うことを聞いて適当に合わせておけばいいのに

セーラ元妃:そういう生き方もある。それが自分に合うならね。でもダイアナや私はそれでは我慢できないの。

“世界で最も愛されたプリンセス”の原動力とは?

離婚をきっかけに、ダイアナ元妃は慈善活動にその身を捧げ、政治さえも動かしました。その原動力は何だったのでしょうか?

王室の公務は義務でしたが、義務から解放され自由を獲得したダイアナ元妃は、他者への献身こそが自分が生涯を捧げる仕事だとお考えになったのかもしれません。慈善活動は大きな成果を上げましたが、武器取引に関わっていたアルファイド家との交流には何の躊躇もなかったようです。

本作のダイアナ元妃は、「シャイ・ダイ」というイメージとは裏腹に、非常に強かな一面を持ち合わせているように感じられました。王室に傷つけられ、マスコミの標的とされましたが、悲しみや怒りに打ちひしがれることはあっても、自らを奮い立たせる強さを持ち合わせていたことが、“世界で最も愛されたプリンセス”の魅力だったのではないでしょうか。

本作は当時のアーカイブ映像だけで構成されており、従来のドキュメンタリー作品に見られるような、ナレーションやテロップによる解説や分析などはありません。エド・パーキンズ監督の主観的な解釈は排除されているように見えますが、メディアの情報を消費してきた私たち自身にも、悲劇を招く一端を担ったのではないかという問いかけを感じました。

映画「プリンセス・ダイアナ」
https://diana-movie.com/
劇場公開日 2022年9月30日


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