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10ホールズハーモニカ(Blues harp)で楽しむ昔話⑥オズの魔法使い 紙芝居

<あらすじ>ドロシーにハーモニカをもらったカカシ、ブリキの木こり、ライオンは、はたして気難しいと噂のオズの魔法使いにあえるのでしょうか。

オズの魔法使い_アートボード 1

①オズの魔法使いと小さなハーモニカ

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②ドロシーはハーモニカが大好きな女の子。特にブルージーな音色が大好きで、どこに行くにも小さな小さな楽器『テンホールズハーモニカ』を持っていました。テンホールズハーモニカはポケットにも入り、どこにでも持ち歩ける、とても気軽な楽器だったからです。

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③ある日、ドロシーがいつものように散歩していると、突然、竜巻が現れて、空高く舞い上げられてしまいました。気がつくと、そこは『不思議の国』でした。看板には『オズの国』と書いてあります。「オズ?聞いたことがないわ」ドロシーは、ここがどこかもわからないまま、いつものように小さな小さなハーモニカを吹きながら、家に帰るために元気に歩き始めたのでした。

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④ほどなくして、まず最初に出会ったのは、話が出来る不思議なカカシ。「やあ、おじょうさん、キレのある、良い音色だね。サニーボーイ2が現れたのかと思ったよ」ドロシーはカカシに聞きました。「こんにちはカカシさん、私はドロシー。おうちに帰りたいんだけど、道を教えてくださらない?」「そう、ドロシーっていうのかい。はじめましてドロシー。『オズの国』へようこそ。道を教えてあげたいけど、僕はカカシだから頭の中は空っぽ、脳みそがないんだよ。だから道を知らないんだ。本当は君みたいに楽器だって演奏したいんだけど、脳みそがないからなぁ。ドロシー、脳みそがある君が羨ましいよ」カカシは、脳みそがないわりには、ペラペラとよくしゃべりました。

ドロシーはおしゃべりなカカシに言いました。「あら、演奏をするのには、脳みそなんていらないわ。特にこの小さなハーモニカは、知識や学問とは一切無縁の存在なの。私は12本持っているから一本あげましょうか?」テンホールズハーモニカは12keyでひとつの楽器。ドロシーは常にオールkeyを持ち歩いていましたので、少し考えて、あまり使うことのない、F♯のkeyのハーモニカを選んで、カカシにプレゼントしました。

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⑤あまりの嬉しさに興奮したカカシは、突然に頭が閃きました。「そういえば、オズの大魔法使いさまなら、ドロシーの家に帰る道を知っているんじゃないかな。僕は脳みそがないけど、大魔法使いさまの居場所くらいなら知っているよ。ハーモニカをくれたお礼に、大魔法使いさまのところへ、連れて行ってあげるよ。そうだ、ついでに、僕も大魔法使いさまにお願いして、脳みそを作ってもらおう」F♯のkeyのハーモニカにはあまり使い道がないことを知らないおしゃべりなカカシは、感謝しきりで、ドロシーのお供になりました。

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⑥次に出会ったのはブリキの木こりでした。「やあ、遠くに聴こえていたのは君のハーモニカだったんだね。温かみのあるトーンだから、サニーテリーがツアーでまわっているのかと思ったよ」おしゃべりなカカシは、ブリキの木こりにドロシーを紹介し、今からオズの魔法使いのところに一緒に行くことを伝えました。「そりゃあいいねカカシくん、大魔法使いさまなら脳みそをくださるなんて、わけないことだよな。は〜、いいな、ハーモニカなんてさ。僕はブリキだからハートがないだろ、感動することが出来ない、感性がないんだよ。だから楽器を使う資格もないんだ。ドロシー、ハートがある君が羨ましいよ」ブリキの木こりはハートがない割には、情感豊かに語りました。
ドロシーはブリキの木こりに言いました。「まあ、ハートがないなんて。あなたはさっき私のハーモニカを温かみのあるトーンって褒めてくださったわ。感動も、感性もおありよ。そして社交術もね。よろしかったらハーモニカを一本差し上げましょう。きっとあなたのハートが、このハーモニカを響かせてくれるはずよ」ドロシーはそう言うと、少し考えてから、あまり使うことがないD♭のkeyのハーモニカを選んで、ブリキの木こりにプレゼントしました。

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⑦ブリキの木こりは強く胸を打たれました。そして、オズの魔法使いについて、急にいくつかの心配事が、頭をよぎり、動悸がして来ました。「ハーモニカをありがとうドロシー。ねぇ、少々心配になったんだけど、オズの大魔法使いさまは、『テンポキープ』や『リズムの概念』にうるさいって方だって噂を聞いたことがあるよ。大丈夫かな、嫌な予感がする。君が心配だよ。そうだ、ハーモニカのお礼に、僕もついて行って、一緒にお願いしてあげるよ。僕はハートがないけど『テンポキープ』にだけは、少しばかり自信があるんだ。それに、僕も大魔法使いさまにハートをもらえるように頼んでみよう」D♭のkeyのハーモニカにはあまり使い道がないことを知らないブリキの木こりは、感謝しきりで、ドロシーのお供になりました。

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⑧次に出会ったのは、なんと恐ろしいことに、百獣の王ライオンでした。ドロシー、おしゃべりなカカシ、ブリキの木こりは驚きましたが、すぐにライオンは柔らかいものごしで、フレンドリーに声をかけて来ました。「やあ、実にパワフルなハーモニカだね。ジェイムスコットンを彷彿とさせたよ。遠くから聴いていてドキドキして、涙が出ちゃった。羨ましいな、楽器なんてさ、僕はこんなにみんなに恐れられるライオンに生まれたのに、肝心の勇気がないんだ。とても臆病なんだよ。泣き虫なのさ。もし勇気があれば、君みたいに、人前で楽器だって演奏してみせるのに。ドロシー、勇気を持っている君が羨ましいよ」

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⑨ドロシーはライオンに言いました。「ライオンさん、あなたは自分に勇気がないっていうけど、私はそうは思わないわ。だって、あなたは私たちに話しかけて来たじゃない。居酒屋だって、バーだって、スナックだって、知らない人に声をかけるのは、とても勇気がいることだもの。よかったら私のハーモニカを一本あげましょう。あなたの勇気が奇跡のブロウを奏でさせるはずよ。それにどうせ泣くなら、ハーモニカをむせび泣かせてごらんなさいな」そう言うとドロシーは、少し考えて、あまり使い道がないBのkeyのハーモニカを選んで、ライオンにプレゼントしました。泣き虫のライオンは感動し、大粒の涙を流しました。

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⑩すると、ライオンはなにかを思い出したように言いました。「そういえば、『オズの大魔法使いさま』は、大変に譜面にうるさいって噂だよ。なんでも音大出で、初見でなんでも演奏できるのが当たり前だって思っているらしいよ。大丈夫かい?」これにはさすがのドロシーも息を飲みましたが、しばらく考えてから言いました。「たしかに譜面が読めれば、どこでも話が早いわ、仕事にもなるし。だけど、世界の8割くらいは、譜面なんて使ってないんじゃないかな。。。って、昔、八木のぶおさんが言ってたけど。。。私、いざとなったら、『八木のぶおさん』の名前を出すわ」虎の威を借る狐、ドロシーはまさにそれでした。ライオンは言いました。「わかったよ、ドロシー。君は、ある意味、勇気があるね。でもね、やっぱり、人の名前を出すのは良くないよ、特に神さまみたいな人の名前はね」ドロシーは少しうなだれました。仕方がありません。ドロシーはテンホールズハーモニカの演奏なら誰にも負けませんが、譜面は大の苦手なのです。ライオンは言いました。ハーモニカをくれたお礼に、僕も『オズの大魔法使いさま』のところへ行ってあげるよ。僕だって怖いけど、多分、『大魔法使いさま』だって、ライオンの僕が怖いはずさ。それに僕も、カカシさんや、ブリキの木こりさんみたいに、勇気をもらえるように頼んでみるよ」Bのkeyのハーモニカには、あまり使い道がないことを知らない臆病者の泣き虫ライオンは、感謝しきりで、ドロシーのお供になりました。
こうして、脳みそが欲しいおしゃべりカカシ、ハートが欲しいブリキの木こり、勇気が欲しい泣き虫ライオンと、家に帰りたいドロシーは、『オズの魔法使い』のところへ向かいました。

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⑪ページの関係もあり、なんやかんやで、ドロシーたちはオズの魔法使いに会う事が出来ました。心配していた『テンポキープの話』も『譜面初見演奏の話』も一切話題には登りませんでした。なんと、オズの魔法使いは、口だけの『イカサマ野郎』だったのです。相手を威嚇することは得意ですが、面と向かって、それっぽい音を出すドロシーが、正直言って、とても怖かったのです。結局、『大魔法使い』というのも言葉だけ。使える魔法も、自分を凄い存在なのだと思わせることくらいの、薄っぺらなクズでした。まさに『クズの魔法使い』です。しかし、オズの魔法使いの方も、ただの人と知られてはこれからが大変です。オズの魔法使いはなんとかみんなを、いつものように、言葉巧みに言いくるめることにしました。

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⑫脳みそが欲しいおしゃべりなカカシには、「脳みそがあったって、結局、それがプレイに生かせるのかってこと。知識で客が踊るかよ。コードなんて、3つも知ってりゃぁ十分さ」みたいなことを、ハートが欲しいブリキの木こりには、「ハート、ハートって、みんな口を揃えてて言いやがるけど、大事なのは、そのハートがホットにロックしてんのかってことさ。違うかい?」みたいなことを、勇気の欲しい泣き虫ライオンには、「勇気は与えられるもんなのかい?違うだろう?むしろ与えてやれよ、お前さんのライオンハートってやつをさ」みたいなことを、それぞれに言いました。そして家に帰りたいドロシーには、普通に、地図を渡しました。

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⑬おしゃべりなカカシと、ブリキの木こりと、泣き虫なライオンは、いかにも、言いくるめられたようで、釈然としないものがありましたが、とりあえず、家に向かう道につながるという、虹の架け橋まで、ドロシーを送っていくことにしました。こうして、ドロシーはまたいつものように、小さな小さなハーモニカを元気に響かせながら、七色の虹を渡って、自分の家へと、帰って行ったのでした。

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⑭それから、おしゃべりなカカシは、F♯のkeyのハーモニカでセカンドポジションを、ブリキの木こりは、D♭のkeyのハーモニカでファーストポジションを、泣き虫のライオンは、Bのkeyのハーモニカでサードポジションを、それぞれ練習し、仲良くセッションを楽しみました。家に着いたドロシーは、今になり、虹の向こうにあるオズの国において来た3本のハーモニカが惜しくなり、自分の親切心を悔やみました。テンホールズハーモニカは12本で、一つの楽器なのです。
まぁ、考えていても始まりません。ドロシーは新しく、ハーモニカを3本買うことにしました。だって、テンホールズハーモニカは、気軽に買い足すことのできる、値頃な楽器なのですから。おしまい

<ぜひハーモニカ入りでお楽しみください>