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名も知らぬ君へ

 名も知らぬ君へ

 たまにですが、私は日常のたわいのないことについて、しょうもないコラム記事を書きます。今、急に書こうと思いついたのは、私がよく行く、不備が多い、とある『大嫌いな銭湯』で見た光景についてです。

 ある日、いつものように私は仕方なしに、その『大嫌いな銭湯』に入ると、多くの男たちが湯船には入らず、静かに一点を眺めていました。その先、湯気のむこうには、あろうことか、うっすらと、まさに息を呑むほどに美しく、そして妖艶な女性のシルエットが、ゆっくりと動いていたのです。もちろんその銭湯は混浴などではなく、動きの様子から『風呂の装飾の女神の彫刻』などでもなく、『人』であることが明らかでした。だからこそ、男たちは、ただ離れて眺めていたのです。

 髪は長く、ほどよくふくよかな体型で、まるでアメリカの『プレイガール』のようなその見事なボディーラインは、まさにパーフェクト。それは『ジェーン』『キャサリン』そして『ドミニク』の三姉妹を足して3で割ったような完成度を持っていました。

 やがてその幻影は「カーッ、ペッ」という痰を吐く時に混じる汚らわしい枯れた声とともに、湯気の中から現れた『頭にタオルをかけた巨乳のおっさん』の登場により、私も含めた立ち尽くす男たちの記憶から、瞬時にかき消されたのでした。なるほど、『マーメイド』と『ジュゴン』とを、見間違える訳ですね。。。

 まぁ、こんなたあいのない出来事は、どんなに言葉を尽くしたところで、所詮、読むには値するものにまではなりません。それより今からは、前から何度も書こうと思っては躊躇(ちゅうちょ)していたことを、思い切って書いてみようと思います。それは『YouTube動画』の『評価』についてです。

 私はYouTubeのチャンネルをふたつ管理しています。ひとつは『TETSUYA HIROSE』というアカウントで、自分のライブ動画などを公開しており、もうひとつは『HAMONICAFE/ハモニカフェ』というアカウントで、もうすぐ1年を迎えるWEB放送のダイジェスト動画集となっています。

 そして最近、WEB番組のコーナーとして放送した『ベンドという技術の解説をするための動画』の編集版が、なんと初めて1万回のアクセスを超え、先日そのご報告を、このブログでもさせていただいたところです。さらに驚くことに、それから後の短期間で、その倍にまでアクセス数が近づいて来ています。もちろん、「私は10万回だよ」「いや、私は100万回を超えてるよ」という人から見れば取るに足らない話でしょうが、私には胸踊る反響だったのです。その動画について、実は最近、小さな発見をさせられました。

 少し前から、私は動画の『グッド』『バッド』という親指を立てた評価のイラスト表示を、非公開にする設定に変えざるをえなくなりました。
理由は簡単で、残念のことに『バッド』という低評価が、一度に、いくつもつき始めたからです。

 私自身、他人の動画を見るかどうかの基準として、『バッド』が多いものは、まず警戒します。実際にそれらを見てみると、何かしらの問題があるものが多数だからです。ですから、そんな自分が『バッド』をつけられた時は、そりゃあもう落ち込みました。一体何が悪かったのだろうかと。。。そりゃぁそうです、私なら、よほどにひどい動画を見ても、わざわざ『バッド』なんてつけません。ただ見るのをやめるだけのことです。例え『バッド』をつけたいほどひどい動画があっても、実際につけるというのは、かなりダークな領域に足を踏み込むような気がしますし、なんだか陰湿なムードすら感じます。

 そうは言っても、表示を非公開にしたところで『バッド』がつくからには、何かしら内容自体の改善は必要ということです。私は落ち込みを一段落させ、その分析を始めました。

 けれども、この『バッド』評価がついた動画に関してある程度観察してみると、なんだか拍子抜けするような傾向がありました。管理者だけが見れるさまざまな『アナリティクス(傾向などの一覧表)』から、さまざまな項目で差し引きをすると、『バットがついたアクセス』は、見ている時間がほぼ5秒ほどで、動画によってはまだ音すら出ていないような段階なのです。

 しかも一瞬開いただけのアクセスではカウントがつかない場合もあるので、わざわざアクセスし5秒ほどで『バッド』だけをつけて、見るのをやめなければこの記録にはなりません。自分でも、自分の動画で試してみましたが、これはなかなかの労力で、結構コツも必要でした。

 とすれば『内容の評価』ではなく、相手の人はある程度は努力をして、わざわざ『嫌がらせ』をしている訳です。その動きがややまとまっているところをみると、PCやスマホも数機は必要かもしれませんし、閲覧場所の違いなども考えると、手間暇だけではなく、ひょっとしたらお金すら掛けているのかもしれません。これがわかった時は、さらに落ち込みました。それほどまでに、誰かに嫌われているのだろうかと。

 非表示設定に変えたことにより、反応はすぐに出ました。途端に『バッド』がつかなくなりました。けれども、そのことにより、さらに輪をかけて残念なことを理解しました。『この動画が気にくわない』ということを制作者の私に伝えたいのではなく、他の人に『これは悪い動画だよ』と知らせたかったのです。
しかも内容を、ほとんど見もしないのに。

 私は完全に『暗黒面』に落ちました。すっかり『シス』のしもべとなり、『デス・スター』の建造を急がせました。まぁ、そうはいっても、非表示にしたことで『バッド』をつけられなくはなり、その点では、私は正直ほっと一安心もしていたのですが。。。

 ところが、私はもうひとつ別で、意外なことにも気づかされることになります。非表示設定にしたことで『バッド』評価の数が増えなくなっただけではなく、代わりに、異常に『グッド』評価も増えていたのです。これが意味することは単純明解!!照れ屋さんからの、密かなラブコールです!!!

 今までも、かみさんから私を喜ばせるためのひとつふたつの『身内グッド』はあったにしても、さすがに、グッドが100を超えているのは驚きです。みんなが見ているところで『バッド』をたくさんつけてやれ。。。ざまあみろ!!これに対して、みんなが見ていないところで、密かにグッドを送ってあげよう。。。「動画、よかったよ♫」しかも、こちらは大量です。

 結果、私は単純に、とてもいい気分になることが出来ました。プラス、マイナスで言えば、かなりのプラス。今、これを書くために、久しぶりに嫌な気分だった時のことを思い出しはしましたが、改めて振り返ると、まぁ、それは取るに足らないことでした。

 この『バッド』評価以外にもさまざまに手間暇のかかる嫌がらせがあり、私もいくつかはやられましたが、WEBにはそれらの『相談記事』や『回答書き込み』なども多く、もはや『YouTubeあるある』といった軽いレベルのようですね。同じ人物が張り切って大多数の人に行っているものなのか、みんなが少しずつやっているものなのかはわかりませんが、このことにより、私は今回、ひとつの大きな結論を出すことが出来ました。

 『グッド』数は、密かにですが、確実に私に届き、確実に幸せな気分にしてくれています。誰かはわかりませんが、『その人たちがどんな人だろうか?』と想いをはせることがあります。反対に『バッド』数は、不気味さだけは伝わりますが、人の気配としては薄く、あまり印象には残りませんでした。実際に、忘れていたくらいなので。

 今回はいろいろ学ばせていただきました。全てのことには、それなりの意味がある。そして今、私はこの暇な時間を使って、そんなあなたに、この言葉を伝えたいと思います。

名も知らぬ君へ。ありがとう。

2018年6月28日
10ホールズハーモニカ奏者 広瀬 哲哉