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10ホールズハーモニカ(Blues harp)で楽しむ昔話⑤かぐや姫 紙芝居

<あらすじ>毎晩 月を見上げては、むせび泣くような小さな楽器を奏でるかぐや姫。貴族たちが持参する大きな楽器は、彼女の目にとまるのでしょうか。

かぐや姫0のコピー

①かぐや姫と小さなハーモニカ

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②竹取りの翁というお爺さんがおりました。働きもので周りからは『オッキーナ』と呼ばれ、親しまれておりました。ある日、オッキーナはいつものように竹を取りに行くと、黄金に光り輝く竹を見つけました。

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③恐る恐るそれを割ると、中から赤ん坊が出てきました。それはそれは可愛い女の子でした。不思議なことに、手には小さな小さな楽器『10ホールズハーモニカ』を握りしめていました。オッキーナは、とりあえずハーモニカの事はスルーして、その女の子を『かぐや』と名付けました。

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④かぐやは、すくすく大きくなり、わずが三カ月で大変に美しい大人の女性に成長しました。あまりの美しさに『かぐや姫』と呼ばれるようになりました。かぐや姫は、夜になると月を見上げて、生まれた時に握りしめていた、小さな小さな楽器、10ホールズハーモニカを吹きました。それはそれは、物悲しい音色。かぐや姫のフレーズには『ベンド』といわれる特殊な音色でが含まれておりました。そのハーモニカはワビサビを表現するにはもってこいの楽器でした。それを聴いていたオッキーナは「ブルージーじゃな」と唸りました。

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⑤そんな美しいかぐや姫のうわさを聞きつけ、身分の高い五人の男たちが、プロポーズに現れました。赤色の貴公子、青色の貴公子、黄色の貴公子、桃色の貴公子、緑色の貴公子。5人は『貴公子ファイブ』と呼ばれておりました。そして、かぐや姫が何やら「楽器のような物が好きらしい」との噂を聞きつけ、思い思いの品々を持参しました。赤色の貴公子は『ピアノ』、青色の貴公子は『ギター』、黄色の高貴は『ドラム』、桃色の貴公子は『バイオリン』、そして緑色の貴公子は『縦琴』でした。けれどもかぐや姫は浮かない顔。「教えてくださいかぐや姫。楽器がお好きとのお噂。一体どのような楽器を、求めているのでしょう?」五人は、そう尋ねました。

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⑥かぐや姫は、まずピアノを持って来た赤色の貴公子に言いました。「部屋においても、ジャマにならない物を」と。続くギターを持って来た青色の貴公子には「もっと持ち運びしやすい物を」と。ドラムを持って来た黄色の貴公子には「決して、近所迷惑にならない物を」と。バイオリンを持って来た桃色の貴公子には「もっと庶民的なものを」と。そして最後に、竪琴を持って来た緑色の貴公子には「縦琴、『ハープ』ですね。その発想はすごく良いのです。でも、もう少し小さい方が良いのです、出来れば、手の平にすっぽり入るくらいの、そんなハープが」かぐや姫は、そう告げました。

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⑦次の朝、貴公子ファイブは、再び現れました。赤色の貴公子は「部屋においてもかさばらない物を」と手軽な『鍵盤ハーモニカ』を。青色の貴公子は「もっと持ち運びしやすい物を」とポップな『ウクレレ』を。黄色の貴公子は「近所迷惑にならない物を」と小さめの『ボンゴ』を。桃色の貴公子は「もっと庶民的な物を」と可愛らしい『リコーダー』を。そして最後に「縦琴、ハープという発想はすごくいい、でももう少し小さい方がいい、出来れば手の平にすっぽり入るくらいの」と、かなり期待されていた緑色の貴公子は、小さな小さな『カズー』を持ってきました。かぐや姫は落胆しました。かぐや姫にはもともと贈り物に欲しい楽器が心にあったのです。首を振りながら、次こそ間違いがないよう具体的なキーワードを出しました。

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⑧「ブルースに合うようなブルージーな音色を出せる物を」と。さらに間違いがないよう「フォークソングのイントロにも向くような」「ロックンロールに、熱いハートを注ぎ込むような」そして最後に「使い方によってはジャズにも入れそうな」と付け加えました。後日、五人が『トランペット』『トロンボーン』『サックス』『ホルン』『チューバ』を持って来るのが見えたかぐや姫は、もう五人に会おうとは思いませんでした。

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⑨この五人の話が巷で話題となり、いよいよ帝(ミカド)の耳にも入りました。すぐにミカドは「かぐや姫を妃(キサキ)に」と、命令を出しました。『パワハラ』で『セクハラ』、『コンプライアンス』の問題もありましたが、相手はミカド、そんなことなど、お構いなしです。最高位の求婚に、オッキーナは大興奮。『わらしべ長者』など目じゃありません。もちろん、ミカドならば、かぐや姫の欲しがるどんな楽器でも、手に入れることが出来るはずなのです。けれどもこのミカドの求婚に対し、かぐや姫は、度肝を抜くような事を口にしました。

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⑩「自分はもともと月の住人で、次の十五夜には月から迎えが来るので、結婚は無理」というのです。このかぐや姫の返事は驚くものでしたが、それを聞いたミカドはというと、全く引こうとはしませんでした。ミカドはもともと『不思議ちゃん』が大好きだったのです。ミカドはすぐに大軍を送り、『十五夜・かぐや姫・お守りフェス』を開催する事にしました。

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⑪そして迎えた十五夜。本当に月から、光り輝く円盤に乗って、全身銀色で大きな黒目をした小人たちが、突如として現れました。さすがにミカドの大軍もなすすべがなく、ただそれを見つめていることしかできませんでした。オッキーナは突如現れた円盤の輝きが、かぐや姫が包まれていた『竹の輝き』とそっくりだったこと、わずか三カ月で大人になったこと、そしてかぐや姫の指が異様に長く、時折、その先端が光り輝く時があったことなどの謎が、全て解けました。

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⑫天に消えてゆくかぐや姫は、泣きながらオッキーナに別れを告げました。「今までありがとうオッキーナ。どうか、どうか、私を忘れないでください」オッキーナも天に向かって叫びました。「かぐや、かぐや、お願いじゃ、戻ってきておくれ、かぐや」しかし、オッキーナの願いも虚しく、かぐや姫は円盤の中へと消えてゆくのでした。去り際に、銀色の小人たちは、かぐや姫を育ててくれたお礼にと、オッキーナに『最先端の技術』を提供してくれました。

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⑬気がつくと次の朝になっていました。かぐや姫はもちろん、銀色の小人たちの姿はなく、ミカドの送った大軍たち全員に、昨夜の記憶がありませんでした。そして全員の首の後ろには『小さな三角形の不思議な傷』がありました。オッキーナは手に小さな何かを握りしめていました。それはそれは小さな楽器、かぐや姫が愛した『10ホールズハーモニカ』でした。

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⑭それから数年。オッキーナは、その寂しさを乗り越え、彼ら銀色の小人たちからいただいた技術をもとに「オッキーナ・エンジリアニング」を設立、早々にCEOにおさまりました。平安の世も、変わりゆくのです。オッキーナは、月を見上げては、かつてかぐや姫がそうしていたように、置き土産の小さな小さな『10ホールズハーモニカ』を奏でました。月はそんなオッキーナを見守るように、いつまで優しく輝いているのでした。

おしまい

<ぜひハーモニカ入りでお楽しみください>