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素材の違うハーモニカ

広瀬哲哉の放送するWEBバラエティー番組『HAMONICAFE』にて公開した『素材を変えたハーモニカ』アイデアを、詳しくご紹介いたします。

まず、『MOKUモニカー桜ー(モクモニカサクラ)』から。
今回製作したハーモニカは『誰が見ても、たとえ遠目で一瞬しか見れなかったにしても、間違いなく木製にしか見えないハーモニカ』がコンセプトでした。ハーモニカはカスタマイズが盛んな分野で、SNSを通じ実に多くの木製ハーモニカを目にします。スズキ楽器の『PURE HARP MR-550H/ピュアハープ』のようにオールウッド(ボディ部分までが木製)のハーモニカというのは、既に商品として存在しています。また、組み替えが楽と言うことで、コーム(リードを包む穴の開いた木の部分)パーツなども、実に豊富な種類の素材が販売されています。ですが、奏者からみれば「すごい」差別化でも、ほとんどの人の目には『普通のハーモニカ』です。「もともとハーモニカって木じゃないの?」と言う方や実際に触らせても木だと気がつかない人すらいます。こうなると、素材違いで私たち奏者が「一体どんな音がするのだろうか!?」と胸を高鳴らせることなど、想像もできないことなのでしょう。そんなこともありハーモニカを吹かない人にも明らかに違いのわかるハーモニカを目指して、この『MOKUモニカー桜ー』は誕生したのです。

中身の楽器自体はスズキのManjiを使っています。組み立て式なのでリード交換も可能、一生ものです。ちょうど枝が生えている部分がサウンドホールとなり、トレモロ的なビブラートかけることができます。

この『作品』は『前島秀光』先生との出会いで実現しました。前島先生は私のかみさん広瀬玲子の木工の師匠で、木工教室の『まえさん塾』を開講されています。私もまえさん塾の生徒で『箱根八夜』の舞台装置などの相談をさせていただいておりました。といっても私のようなダメ生徒は相談だけで、ほとんど先生にお願いしてしまいます。そんな中、会話の中で出た『全部木のハーモニカ』を前島先生が「試しに作ってみようかな」とおっしゃり、その勢いで誕生したのが、この『MOKUモニカ』なのです。先生は「たまたま適した材料があったから」とおっしゃってますが、たしかに同じものは二度とできません。私はマーカーでデザイン画を描き、先生と相談をします。少しずつ「木目をいかして」「彫刻刀のタッチを残して」という閃きをイメージスケッチにして行きますが「実際に作れるのか」「演奏はできるのか」と条件をすりあわせていくと、なんとなく木の印象が後回しになって行きます。やがて冗談のように「こんな枝?」と先生が手にした木で、この楽器はいきなり誕生いたしました。

さて音色の方ですが、これがまたなんともいえない柔らかい響きなのです♫『出てきたサウンド』以前に、手の感触、口当たり、全てが新鮮すぎて、なんとなく吹き出して笑ってしまうような感じです。天然木ですのでフラット面がなく、所々ボコボコなのでテクニカルな演奏などは当然難しいですが、とにかく人に『見せびらかしたい』一品で、文字通り『あっ!?』と言わせること間違いなしでしょう。

そして、『株』がまた泣かせます。遊び心満点です。

まえさん塾に興味のある方は<こちら>から

もう一つは陶器の口当たりを楽しむハーモニカ『TOUモニカー美濃ー(トウモニカミノウ)』です。
2005年頃、私は岐阜県に住んでおり『美濃焼き』のお仕事をさせていただく機会がありました。その頃、商品企画やディスプレイなどの仕事をフリーランスでしていて、それらにからめ、出会った職人さんたちに『自分の作りたい物』を雑談まじりに相談していました。和陶器のワビサビテイストのインパクトが強烈で、様々なものを企画し、職人さんたちが暇な時に作っていただいておりましたが、その中のひとつにこの『TOUモニカ』がありました。時代的にも『抗菌ブーム』で、陶磁器の素材的な価値が見直されていたこともあり、くわえる楽器の清潔さには共感していただける部分がありました。それまでに『ボトルネック』『ピックガード』『ハーモニカミュートホーン』など、様々なものが私の企画で試作として誕生しており、それを実際にライブ活動などでも使うことで『夢のある分野』と、職人さんたちに感じていただくことも出来ていました。ですが、この『TOUモニカ』企画は難航しました。手間がかかりすぎる上、誰もやりたがりませんでした。収縮率の関係があるため、例え10個くらい作っても、焼いてみて「使えるものが果たしてあるかどうか」というしろものなのです。結局、私が職人さんに作り方を教わり、使えるものができるまで、しばらく作り続けることになりました。

中身の楽器自体はトンボ楽器のメジャーボーイ(リーオスカーモデル)を使っております。陶磁器のマウスピースとプラスチックコームを完全に密着させるため別でプラスチックパーツを作り挟みました。全部が陶磁器というわけにはいかず、中央部には木を使いましたので「陶器の口当たり、木の手触り」がこの企画のうたい文句となりました。さて音色の方ですが、音はやはりどことなく『オカリナ』の感じが漂います。同じ『土物』ということなのかもしれません。とにかく口の感触が快感です。お皿をツルツルと舐め回す経験なんて、まず誰にもないとは思いますが、そんな感じです。この試作品は長らくしまったままでしたが、陶磁器なので色あせることもカビることもなく、実に良質な状態のままでした。今回の放送に伴い、前島先生に木工の部分を仕上げ直していただき、まさに和室の床の間に飾れる一品として昇華いたしました。

ということで『MOKUモニカー桜ー』『TOUモニカー美濃ー』の2種、いかがでしたでしょうか?やはり、ハーモニカが小さいということから、このような展開が生まれてくるのでしょうね。

ハーモニカに、、、
特に、この小さなテンホールズ(ブルースハープ)ハーモニカに出会えて、
ほんとうに豊かな人生になりました。