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10ホールズハーモニカ(Blues harp)で楽しむ昔話②シンデレラ 紙芝居

<あらすじ> 今日はお城のセッションデー。皆が大きな楽器で王子様にアピールする中、シンデレラの手には小さなハーモニカが光るのでした。

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①昔々、あるところに、たいそう心優しく、美しい娘がおりました。娘は『シンデレラ』と呼ばれていました。

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②シンデレラは、ほどほどのお金持ちの家に生まれた、3番目の娘でした。生まれた順番を大事にするお土地柄でしたので、長女、次女の順に良い部屋に住み、きれいな服を与えられ、豪華な贈り物をもらいましたが、その分、末っ子のシンデレラは、まるで召使いのように働かされておりました。(母)「ほらほら、シンデレラ。もっとしっかり掃除をなさい!」(シンデレラ)「はい、ごめんなさい、お母さま」シンデレラは、文句ひとつ言うことなく、朝から晩まで、働きました。

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③ある日のこと、お城から招待状が届きました。王子さまが、お妃(キサキ)さまを探すために、お城でパーティーを開くのです。王子さまは、お歌が趣味で、お妃さまには 自分と一緒にステージに立てるような女性をとお考えだったので、舞踏会はやめ、セッションデーを開催することにしたのでした。お母さまは張り切って、長女には大きな楽器、ウッドベースを、次女にもその次に大きな楽器、トロンボーンを買い与え、派手なドレスで着飾らせました。シンデレラは楽器を買ってもらえませんでしたが、物置で掃除をしていた時に見つけた、小さな小さな楽器、10ホールズハーモニカを大切に持っておりました。

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④いよいよお城のセッションデーの日になりました。(母)「シンデレラ、私たちはお城のセッションデーに行ってくるからね。お前は、留守番をしていなさい。食器を磨くのを忘れないようにね」お城へ向かう3人を見送った後、留守番のシンデレラはひとり寂しく、物置で10ホールズハーモニカを吹いていました。(シンデレラ)「あぁ、私もお城のセッションデーに行きたかったわ」シンデレラのため息に10ホールズはむせび泣くようなトーンで応えてくれるのでした。ひとしきりブローした後、シンデレラがまた小さくため息をついていると、後ろから声がしました。

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⑤(魔法使い)「シンデレラ、どうしたいんだい。どうしてお前はお城のセッションデーに行かないんだい?国じゅうの娘が招待されているというのに」振り向くと、黒いマントを羽織ったおばあさんが立っていました。それは、シンデレラの名付け親の魔法使いでした。(シンデレラ)「お声をかけてくださってありがとう、魔法使いのおばあさま。私は末っ子なので、おウチで留守番をしていなくてはならないのです。それに、もしお城のセッションデーに行くことが許されても、私の服はこれ一枚。着ていくドレスも無いのです」(魔法使い)「そうかいそうかい。ならば私がお城のセッションデーに行かせてやろう」魔法使いは、そう言うと一枚のキャッシュカードを取り出してシンデレラに渡しました。カードには様々なポイントがあり、マイレージも貯めることができました。魔法使いは、このカードを使って、素敵なドレスと馬車をレンタルしてやりました。

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⑥それから魔法使いは、シンデレラに念をおしました。(魔法使い)「いいかいシンデレラ。必ず12時までにはすべて返却するんだよ。TSUTAYAと同じだ。いいね。日付が変われば別料金なんだからね」シンデレラは息を飲みました。

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⑦こうして、ドレスも馬車もそろったのに、シンデレラの表情は曇ったままです。
(シンデレラ)「魔法使いのおばあさま、私にはこの小さな小さな10ホールズハーモニカしかありません。こんな小さな楽器では、王子さまもお喜びにはならないでしょう」それを聞くと、魔法使いは言いました。(魔法使い)「それは違うよ、シンデレラ。楽器は大きさじゃない。腕さ、テクニックさね」そしてシンデレラの10ホールズハーモニカがすっぽり入る『ガラスのハーモニカケース』を持たせました。なんとなくプレミアム感が出るからです。最後に魔法使いは、いざという時のために、魔法の呪文を授けました。シンデレラは首をかしげつつもそれを覚え、急いでお城のセッションデーに向かいました。

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⑧その頃、お城ではすでにセッションが始まっており、参加者の額には汗が輝いておりました。ピアノ、木琴、ドラムセット、パイプオルガン、バリトンサックス、
チューバ、ティンパニー、どの娘たちも、迷惑なほど大きな楽器をたずさえ、王子さまに猛烈なアピールを繰り広げています。王子さまは、お得意なボーカルを披露しながらも、実のところ、参加者の演奏レベルの低さにうんざりしていました。ほとんどの参加者がファーストセットを済ませたころ、シンデレラが息を弾ませながらセッションの会場にたどりついたのです。

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⑨王子さまは、まっすぐ歩み寄ると、シンデレラにこうたずねました。(王子)「美しい姫君よ、あなたの楽器はなんでしょう?あとから召使いが持ってくるのですか?」シンデレラは緊張のあまり声が出なかったので、黙って『ガラスのハーモニカケース』を開き、小さな小さな10ホールズハーモニカを王子さまに見せました。王子さまは、初めて見る庶民的な楽器に興味津々です。それを見た周りの娘や母親たちは、トゲのある言葉をささやきました。「あの娘、どうやって音を合わせるんザマしょ、あんなオモチャみたいな楽器で」「ちゃんとした演奏なんて無理無理、いいところ、イントロをピューっと吹くくらいでしょ」「Keyは合わせられるのかしら。譜面も読めなさそうザマすね」意地悪なことを言う人々の中にはシンデレラの母親や姉たちの姿もありました。ドレスアップしたシンデレラは、普段とあまりにもギャップがあり、それがシンデレラとは気づかなかったのです。シンデレラは、魔法使いのおばあさんから授かった、魔法の呪文を思い出し、声高らかに唱えました。

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⑩(シンデレラ)「ヘイ、カモン、ベイビー!!ワァオ!!」シンデレラは間髪入れず10ホールズハーモニカでイントロを吹きはじめ、そのまま曲に突入しました。すると、あら不思議。会場にいたホストバンドのメンバーたちが次々と音を重ねはじめ、みるみる盛り上がっていきました。そう、それは『ブルース』。シンデレラの魂のブルースだったのです。王子さまも、たまらずそのビートに身をゆだね、即興のセレブなブルースを披露しました。それはそれは素晴らしいセッションです。(シンデレラ)「ヘイ、カモン、ベイビー!ワァオ!ヘイ、カモン、ベイビー!ワァオ!」シンデレラはバカのひとつおぼえのように、魔法の呪文を繰り返しました。

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⑪夢のようなセッションが繰り広げられる中、突然お城の鐘が鳴り響きました。時計を見ればすでに12時。シンデレラは慌てて会場を後にしました。王子さまは急いで後を追いましたが、シンデレラの姿はなく、あの10ホールズハーモニカが入っていた小さな『ガラスのケース』だけが残されていました。

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⑫次の日から、王子さまは国じゅうを周り、小さな『ガラスのケース』に入る楽器の持ち主を探しました。しかし、どの娘たちも、その小ささに驚くばかり。みな、王子さまに見染められようと、こぞって大きな楽器を手にしていましたので、誰一人として、自分の楽器を、この小さな『ガラスのケース』に入れることができな
かったのです。もちろん、シンデレラの姉たちも。王子さまが帰ろうとした時、部屋の掃除をしているシンデレラの姿が目に入りました。ドレスアップしていない上に、すっぴんだったため、王子さまも自分が探している女性とは気づきませんでしたが、もしかしたらと思い、シンデレラにも、自分の楽器を持ってくるようにと言いました。

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⑬シンデレラが自分の楽器を差し出すと、小さな小さな10ホールズハーモニカは、小さな小さな『ガラスのケース』にすっぽりとおさまったのです。王子さまは、シンデレラの前にひざまづくと、(王子)「どうか、私と人生のデュオを組んでいただけませんか?」と言いました。シンデレラは小さくうなづき、ほほを赤らめ、王子さまのたくましい腕に包まれました。

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⑭こうして二人はいつまでも、仲むつまじく、幸せに暮らしました。お城には、10ホールズハーモニカの音色がいつまでも、響き渡りましたとさ。

めでたしめでたし。

<ぜひハーモニカ入りでお楽しみください>