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10ホールズハーモニカ(Blues harp)で楽しむ昔話①桃太郎 紙芝居

<あらすじ>「お腰につけたハーモニカ、一本私にくださいな」10ホールズは12keyでひとつの楽器である。桃太郎の心は、激しく揺れ動くのでした。 **

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①桃から生まれた男の子を『桃太郎』と名付けたお爺さんお婆さんは、幸せに暮らしておりました。

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②近所迷惑な鬼たちがいました。人里離れた鬼ヶ島というところに住んでいた鬼たちは、ドラムやパーカッションといわれる打楽器を響かせて、やりたい放題。その音は、遥か離れた桃太郎の家にまで届き、耳の遠いお爺さんお婆さんですら『血湧き肉躍るビート』に興奮し、なかなか寝られない夜が続きました。

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③すっかり成長していた桃太郎は、お爺さん、お婆さんにかわり、近所迷惑な鬼たちに、クレームを入れてやることにしました。桃太郎は長い旅のお供にと、ポケットにも入る楽器、10ホールズハーモニカを持ちました。

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④するとお爺さんは、いろいろな人に会うかもしれないと、「オールkey、 12本を持って行くように」言いました。『10ホールズハーモニカは12key で、ひとつの楽器』なのです。桃太郎は「今やHigh GやLow F、そしてLow Cまであるというのに、お爺さんの考えは古いな」と心の中でつぶやきました。それを見たお婆さんは、旅に持たせようとしていた『きびだんご』をあきらめ、水筒の水だけにしました。ハーモニカに食べ物のカスが詰まったら、それこそ、大変だからです。

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⑤こうして桃太郎の旅は始まりました。すると、早くもページの関係で、犬、猿、キジが桃太郎の前に立ちはだかり言いました。「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたハーモニカ、一本、私たちにくださいな」桃太郎は言いました。「これはみんな違うkey なんだ。10ホールズは12本でひとつの楽器なんだよ」けれども残念ながら彼らには伝わりません。所詮は10ホールズハーモニカ特有の話、吹かない者たちにはわからないのです。犬や猿はまだしも、はたしてキジにハーモニカが吹けるのかと不安になりつつ、12key全てを持っていた桃太郎は、「鬼退治についてくるなら」と、仕方なしに1本ずつ渡すことにしました。桃太郎はセッションでの使用頻度の低さから、犬にA♭、猿にD♭、キジにF♯をそれぞれ渡しました。

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⑥鬼ヶ島に向かう途中、皆が勝手に音を吹き鳴らすため、「みんなkey が違うのだから、代わり番こにしなさい」と注意をしました。「こんなことなら犬に『GのKEYで1stを』、猿に『FのKEYで3rdのFを』、どうせ吹けないキジには、『DのKEYで12thを』、それぞれ吹かせ、自分は『CのKEYで2ndを』吹けば、『Gのブルース』がセッションできたのにな」と桃太郎は、マニアックに残念がりました。

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⑦鬼ヶ島につくなり、鬼がドラムを打ち鳴らしながら言いました。「よく来たな桃太郎、お前に『リズムセクション』の素晴らしさを教えてやろう」犬、猿、キジは、ドラムやパーカッションに興味深々。なぜなら、ハーモニカよりドラムの方が、『バンドマンっぽかった』からです。鬼たちは『グルーヴ』という言葉を連呼しつつ、日本人が劣等感を持ちやすい『リズムキープ』や『裏拍』などについて、まくしたてて来ます。犬、猿、キジたちは、今にも鬼たちの側に着いてしまいそうな勢いです。

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⑧桃太郎は恐ろしくなりましたが、勇気を振り絞って、鬼たちに10ホールズハーモニカをブロウしてみせました。それはそれは、渋くカッコいい音色でした。鬼はたまらず桃太郎が腰に巻いていた、残り9本のハーモニカを見ていいました。「おい桃太郎、その小さなハーモニカをわしらにもくれんか?」桃太郎は『10ホールズハーモニカは12keyでひとつの楽器であること』を説明しましたが、すでに9本となってしまっていて、説得力はありませんでした。仕方なく、桃太郎は次々に鬼たちに10ホールズを渡すしかありませんでした。

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⑨「こりゃぁ、いいや、最高だ」もともとメロディーに飢えていた鬼たちは大喜び。特に鬼たちは体格も良く肺活量も多めなので、ベンドやオーバーブローも楽々でした。みんなで一緒になって、いつまでも仲良く10ホールズハーモニカを吹き続けました。それもそのはず、みんな『譜面が大の苦手な仲間たち』だったからです。桃太郎は「みんなkey が違うので、代わり番こに吹くように」と注意しました。その日以来、鬼たちはあまりの楽しさに、もう10ホールズハーモニカ以外の楽器を演奏しようとは思いませんでした。10ホールズハーモニカなら、『トレインバンプ』の応用で、リズムっぽい演奏も可能だからです。

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⑩こうして、遠く離れたお爺さん、お婆さんのもとに騒音が響くこともなく、かわりにいつまでも、桃太郎の軽やかな10ホールズハーモニカの音色が、元気に鳴り響いておりましたとさ。

おしまい

<ぜひハーモニカ入りでお楽しみください>