英愛仏障害競馬調査(2021)

 この記事は、2021年にイギリス・アイルランドのUnder Ruleで行われたSteeple Chase(以下Chase)、Hurdle、Cross Country全競走及び、フランスで行われたSteeple-Chase(以下Chase)、Haies(英愛のHurdleとは性質が違うものだが、便宜上Hurdleと表記する)、Cross Country全競走、合計6911レースを対象とした調査の結果を示すものです。なお、全競走リストはスプレッドシートの状態で以下に公開します。また、参考として一部データについては日本との比較も表示します。
 この記事の内容は全て著作物に該当します。引用・使用に関しては然るべきルールに則って下さい。なお、引用の範囲を超える転載や画像の使用をご希望の方は、TwitterID:@HammerofKuchibuまでまずはご連絡下さい。
 ただし、以下URLのスプレッドシートに関しては、著作権法第10条第2項に該当するため著作物にはあたりません。従って、ご自由にお使い頂けますが、9割方手作業入力であるため、間違っている箇所がいくつもあると思われます。ご使用になられたい方はその点だけご了承下さい。
 この記事や、以下のスプレッドシートを使用したことで出た損害について、私はんまーは一切の責任を負いません。


その他注意
※1.イギリス・アイルランドは"Under Rule”のレースのみが調査の対象で、Point-to-Pointのレースは調査対象外です。
※2.単走になり障害飛越が免除されたレースを除き、障害を1回も飛ばなかったレースは調査対象外です。(つまりBumperは対象外)
※3.データは原則として「2021年に実際に施行された条件」によるものを扱います。距離変更・日程順延などがあった場合は変更後の条件を対象としています。




①開催競馬場数




(%の小数点以下は四捨五入)

障害競馬を1レースでも開催した競馬場数
英:40競馬場 100%
愛:23競馬場 100%
仏:93競馬場 100%
(日:7競馬場 100%)


Steeple Chaseを開催した競馬場数
英:40競馬場 100%
愛:22競馬場 96%
仏:67競馬場 72%

Hurdle Raceを開催した競馬場数
英:40競馬場 100%
愛:23競馬場 100%
仏:52競馬場 56%

Cross Countryを開催した競馬場数
英:1競馬場 3%
愛:1競馬場 4%
仏:37競馬場 40%


Listedもしくは重賞競走を開催した競馬場
英:26競馬場 70%
愛:19競馬場 83%
仏:13競馬場 14%
(日:6競馬場 86%)

重賞競走を開催した競馬場
英:19競馬場 48%
愛:18競馬場 78%
仏:4競馬場 4%
(日:6競馬場 86%)

G1競走を開催した競馬場
英:9競馬場 23%
愛:6競馬場 26%
仏:1競馬場 1%
(日:1競馬場 14%)


筆者コメント

イギリス:
 イギリスでは40競馬場で障害競馬が行われた。この40競馬場すべてでChaseとHurdleが開催された一方、Cross Countryは1競馬場(Cheltenham)のみの開催であった。
 イギリス全40競馬場のうち、重賞競走は約半分にあたる19競馬場で行われた。また、G1競走は約1/4にあたる9競馬場で行われ、G1開催場の数は英愛仏3ヶ国の中で最も多い。

アイルランド:
 アイルランドでは23競馬場で障害競馬が行われた。この23競馬場のうち、Chase非開催場の1競馬場(Bellewstown)を除き、すべてChaseとHurdleが開催される。その一方、イギリスと同じくCross Countryは1競馬場のみ(Punchestown)の開催である。
 アイルランド全23競馬場のうち、重賞競走は4分の3以上にあたる18場で行われた。英愛仏の中では特に分権的だと言えそうだ。

フランス:
 フランスでは93競馬場で障害競馬が行われた。この開催競馬場数は英愛仏の中では最多である。英愛と異なりChase、Hurdle、Cross Countryにおいてそれぞれ開催場と非開催場が分かれており、
①「Chase、Hurdle、Cross Country全て開催」(CompiegneやPau等)
②「Chase、Hurdleを開催」(AuteuilやCagnes-sur-Mer等)
③「Chase、Cross Countryを開催」(Blain、Cluny、Dultal等)
④「Hurdle、Cross Countryを開催」(Agen、Senonnes、Vichyのみ)
⑤「Chaseのみ開催」(Aurillac、Chatillon、Guingamp等)
⑥「Hurdleのみ開催」(Cazaubon、Chateaubriant、Cholet等)
⑦「Cross Countryのみ開催」(Blehal、Molieres、Nuille-sur-Vicoin等)
の7パターンがある。また、Cross Countryは英愛がそれぞれ1競馬場のみの開催だったのに対し、フランスは37競馬場で開催がある。
 フランス全体で93競馬場あるにも関わらず、重賞競走は僅か4競馬場のみ、G1競走は1競馬場(Auteuil)のみの開催である。
 なお補足すると、フランスで開催された重賞競走59レースのうち50レースはAuteuil競馬場で行われたものだった。このようなことからフランスの障害競馬は極めて中央集権的であるといえる。




②レース数




全開催レース数
英:3465レース 100%
愛:1390レース 100%
仏:2056レース 100%
(日:127レース 100%)


障害種類別

Chaseレース数
英:1425レース 41%
愛:441レース 32%
仏:850レース 41%

Hurdleレース数
英:2037レース 59%
愛:946レース 68%
仏:979レース 48%

Cross Countryレース数
英:3レース 0%
愛:3レース 0%
仏:227レース 11%


格付け別レース数

Listed+重賞競走レース数
英:196レース 6%
愛:174レース 13%
仏:144レース 7%
(日:10レース 8%)

重賞競走レース数
英:144レース 4%
愛:157レース 11%
仏:59レース 3%
(日:10レース 8%)

G1レース数
英:40レース 1%
愛:36レース 3%
仏:9レース 0%
(日:2レース 2%)


年齢条件別レース数

3歳か4歳の馬のみが出走できるレース
英:94レース 3%
愛:76レース 5%
仏:896レース 44%
(日:0レース 0%)

年齢上限の無いレース
英:3330レース 96%
愛:1307レース 94%
仏:822レース 40%
(日:127レース 100%)


筆者コメント

イギリス:
  障害競走の開催数が最も多いのはイギリスである。ただしイギリスでは、今回の調査には反映されていないPPoint-to-Pointのレースが行われているため、実際の障害競走の開催数は3,465レースより多い。
 格付けについては「Listed」以上に格付けされたレースの割合が全レースの約6%、重賞レースは約4%、G1レースは約1%である。なお参考までに、この「Listed以上約6%、重賞競走約4%、G1競走約1%」という割合は、平地を含む日本の中央競馬と全く同じなので、その規模感を想像していただくと分かりやすいだろう。(%の小数点以下を四捨五入した場合)
 障害種類別に見ると、Chase:Hurdle比はおよそ4:6である。Cross Countryは年間僅か3レースしか開催されない。
 3歳・4歳のみが出走できるレースは僅か94レースで、全体の3%に過ぎない。その一方、調査結果には掲載していないが、高齢馬に手厚い。"Veteran's Chase"と呼ばれる9歳以上に限ったChaseが年間27レース行われる他、"Senior's Hurdle"と呼ばれる8歳以上のみによるHurdleも年間3レースと僅かながら行われる。また、そもそも世界で最も有名な障害競走Grand National(G3)も出走資格は7歳以上である。


アイルランド:
 イギリスと同様にPtPは調査対象外である為、実際の障害レース数は1,390より多い。
 アイルランドの非常に大きな特徴として「英愛仏でレース数が最も少ないにもかかわらず、重賞のレース数が最も多い」ことがあげられる。全レース数における重賞レース数は10%を超えており、イギリスやフランスよりもはるかに高い。
 障害種類別に見るとChase:Hurdleの比率はおよそ3:7で、イギリスやフランスよりもHurdleが盛んに行われていることが分かる。
 3歳馬と4歳馬のみが出走できるレースは全体の5%であり、大部分が年齢上限の無いレースである。ただしイギリスのような高齢馬の路線が手厚く整備されているわけではない。イギリスの項で先述した「Veteran's Chase」はアイルランドでも開催されているが、その開催数は年間3レースに留まっている。
 余談だが、アイルランドのVeteran's Chase3レースのうち1レースだけは"10歳以上戦"として行われた。10歳以上戦が行われたのは、英愛仏の障害競走において、この1レースが唯一であった。

フランス:
 フランスは、障害レースの開催数がイギリスに次いで2番目に多い国である。(PtPを含めるとアイルランドが上回る可能性もある)
フランスの最も大きな特徴として、「3歳限定」「4歳限定」のレースが多いことが挙げられる。イギリスやアイルランドでは、3歳馬や4歳馬が出走できるレースは全体の5%程度であるのに対し、フランスでは約44%のレースが「3歳馬もしくは4歳馬限定レース」である。一方、年齢制限のないレースは、3・4歳限定のレースの数よりも少なく、フランスでは全体の約40%に留まっている。また、残りの16%は「4~5歳限定」「5~6歳限定」「5歳限定」「6歳限定」のいずれかであり、年齢制限のあるレースが英愛より多いことがよく分かる。
 英愛でCross Countryが各3レースしか開催されないのに対し、フランスでは227レースの開催がある。Grand National(G3)を抜き英愛仏で最長距離の障害競走Anjou-loire Challenge(Listed)も、フランスCross Countryのレースである。


 


③合計賞金額



第3章・第4章閲覧前の注意事項
 
賞金はイギリス→英ポンド、アイルランド・フランス→ユーロ、日本→日本円で支払いされていますが、ここでは「ユーロ」に換算・統一して計算しています。レートは2021年の高値と安値のほぼ中間をとった、以下の通りです。

1英ポンド→1.15ユーロ
1日本円→0.0077ユーロ


各国のレース合計賞金額
英:53,424,453ユーロ  100%
愛:27,120,000ユーロ  100%
仏:64,349,000ユーロ 100%
(日:22,406,115ユーロ 100%)


障害種類別合計賞金額

Chase
英:27,763,857ユーロ 52%
愛:11,093,500ユーロ 41%
仏:27,285,000ユーロ 42%

Hurdle
英:25,535,534ユーロ 48%
愛:15,972,500ユーロ 59%
仏:32,637,000ユーロ 51%

Cross Country
英:125,063ユーロ 0%
愛:54,000ユーロ 0%
仏:4,427,000ユーロ 7%


年齢条件別合計賞金額

3歳・4歳のみが出られるレース
英:1,659,361ユーロ 3%
愛:1,275,000ユーロ 5%
仏:28,699,000ユーロ 45%
(日:0ユーロ 0%)

年齢上限の無いレース
英:51,333,884ユーロ 96%
愛:25,769,000ユーロ 95%
仏:27,567,000ユーロ 43%
(日:22,406,115ユーロ 100%)


筆者コメント
 コロナ渦の影響が大きかったことに注意が必要だが、少なくとも2021年で最も障害競走の合計賞金額が多かった国はフランスだった。英愛Point-to-Pointの賞金を含めてもイギリス・アイルランドがフランスの金額を上回ることはないと思われる。

イギリス:
 障害競走に拠出されている賞金額が、英愛仏の中でフランスに次いで2番目に高い。ただし、年齢上限の無いレースに限った場合は合計賞金額が最も高くなり、その額はフランスの2倍弱にもなる。
 障害種類をChaseに限った場合の合計賞金額はフランスとほぼ同額で、この集計方法ではイギリスの方が僅かに高い。
 Chase・Hurdle・Cross Countryのうち、Hurdleの合計賞金額が50%を超えていない唯一の国である。
 年齢上限がないレースが盛んに行われており、全障害レースの賞金の96%が年齢上限がないレースに費やされている。一方、3歳・4歳限定のレースは多くは行われず、イギリスでは3歳馬と4歳馬だけのレースの賞金額は、イギリス全体の約3%程度にとどまっている。

アイルランド:
 そもそもの施行レース数が少ないため、障害競走に拠出される賞金額は英愛仏の中で最も少なくなっている。
 賞金総額の59%はHurdleから拠出されるが、レース数では69%を占めるため、Hurdleの1レースあたりの賞金額はChaseのそれよりもあき明らかに低いと言うことができる。
 イギリスと同様に年齢の上限がないレースに賞金の多くが費やされている。3歳・4歳馬だけのレースの合計賞金額は、全体の5%に過ぎない。

フランス:
 先述の通り障害競走に拠出されている賞金額は、英愛仏の中で最も多い。また、恐らく2021年において世界で最も障害競走の賞金予算額が多かった国ではないかと思われる。
 英愛仏のうちフランスだけが盛んに行うCross Countryの合計賞金額は400万ユーロを超え、当然ながら英愛仏の中で最も多い。
 フランス障害競馬の最も大きな特徴として3歳・4歳のみによるレースのシェアが大きいということを先述したが、賞金面で見ても同様である。




④賞金額平均・中央・最頻値、賞金額分布





各国のレース平均・中央・最頻賞金額
英:平均15,418ユーロ 中央9,200ユーロ 最頻9,200ユーロ
愛:平均19,511ユーロ 中央12,000ユーロ 最頻10,000ユーロ
仏:平均31,298ユーロ 中央20,000ユーロ 最頻13,000ユーロ
(日:平均176,430ユーロ 中央116,193ユーロ 最頻116,193ユーロ)


各国の賞金額別レース数分布
5万ユーロ刻み(グラフ参照)

イギリス(5万ユーロ刻み)
アイルランド(5万ユーロ刻み)
フランス(5万ユーロ刻み)
日本(5万ユーロ刻み)

各国の賞金額別レース数分布
5万ユーロ未満のみのレース対象 5千ユーロ刻み(グラフ参照)

イギリス・賞金総額50,000ユーロ未満のレース(5,000ユーロ刻み)
アイルランド・賞金総額5万ユーロ未満のレース(5千ユーロ刻み)
フランス・賞金総額5万ユーロ未満のレース(5千ユーロ刻み)

(日本は対象0レースの為グラフ略)


筆者コメント

イギリス:
 コロナ禍の真っ只中であったことは留意すべきだが、平均・中央・最頻賞金額ともに最も低かったのはイギリスである。1レースあたりの最低賞金が1万ユーロのアイルランドやフランスに比べ、賞金総額1万ユーロ未満のレースが半数以上を占めるイギリスは、平均・中央・最頻賞金額ともに必然的に最下位となることがほぼ必然的だったといえる。
 最も賞金が低いレースは、アマチュア騎手限定のChase競走「Hunter's Chase」で、賞金は3,000英ポンド(3,450ユーロ相当)である。その一方、最も高額なレースはご存知Grand National(G3)で、賞金総額75万英ポンド(86万2,500ユーロ)である。
 通常Grand Nationalは世界最高賞金を誇る障害競走と言われるが、2021年はコロナ禍により賞金が減額。2021年に関しては、換算して96万6,350ユーロになる中山グランドジャンプ及び中山大障害が世界最高賞金の障害競走となった。なお余談だが、2022年にはGrand Nationalの賞金が1,000,000英ポンドにまで増額され、世界最高賞金の障害競走に返り咲いている。

アイルランド:
 平均・中央・最頻賞金額ともにイギリスより高く、フランスより低い。
 賞金総額1万5,000ユーロ未満のレースが全体の72%を占めるが、フランスと同様に最低賞金額で1万ユーロを死守している。グラフを見ると、賞金総額1万ユーロのレースが全体の約31%、1万1,000ユーロのレースが約15%、1万2,000ユーロのレースが約10%を占めており、ここの1万2,000ユーロが中央値である。
 このように、アイルランド障害競馬の賞金体系は、最低賞金額付近に集中している傾向にあることがわかる。
 最も賞金が低かったレースは賞金総額1万ユーロの計434レース。最高賞金レースは賞金総額40万ユーロのIrish Grand National(GA)である。

フランス:
 平均・中央・最頻賞金額ともにイギリスとフランスで最も高く、平均・中央賞金額ではイギリスと2倍以上もの差を付けている。この賞金水準の高さこそが、合計賞金額でイギリスを上回った主な理由である。
 イギリスとアイルランドを比べると、賞金総額が5万ユーロ以上のレースが多く、賞金総額が5万ユーロ未満のレースでも、賞金総額が1万5000ユーロ以上5万ユーロ未満のレースが多くなっています。
 最も賞金が低いレースは賞金総額1万ユーロの計73レース。最も賞金が高かったレースは賞金総額は82万ユーロのGrand Steeple-Chase de Paris(G1)でである。



⑤距離平均・中央・最頻値、距離分布




第5章閲覧前の注意事項

注1:この章の調査結果においては、メートル法に換算して得られた結果とヤード法に換算して得られた結果、双方を併記しています。競馬の距離の計測においてイギリスとアイルランドはヤード法、フランス(と日本)はメートル法を用いている為です。

注2:メートル法・ヤード法を併記した影響で、この章はかなり長くなっています。端的にいえば読み辛いです。

注3:この章では調査結果の表示について、全て表やグラフを用いています。



平均・中央・最頻距離 メートル法表記(表参照)

平均・中央・最頻距離 メートル法表記
※英愛Cross Coutnryは各3レースのみの開催によるデータにつき注意

平均・中央・最頻距離 ヤード法表記(表参照)

平均・中央・最頻距離 ヤード法表記
※英愛Cross Coutnryは各3レースのみの開催によるデータにつき注意

各国全障害競走 距離別レース数分布
メートル法200m毎(グラフ参照)

イギリス 200m毎レース数分布
アイルランド 200m毎レース数分布
フランス 200m毎レース数分布
(日本) 200m毎レース数分布


各国"Chase" 距離別レース数分布
メートル法200m毎(グラフ参照)

イギリスの”Chase”のみ 200m毎レース数分布
アイルランドの”Chase”のみ 200m毎レース数分布
フランスの”Chase”のみ 200m毎レース数分布

各国"Hurdle" 距離別レース数分布
メートル法200m毎(グラフ参照)

イギリスの”Hurdle”のみ 200m毎レース数分布
アイルランドの”Hurdle”のみ 200m毎レース数分布
フランスの”Hurdle”のみ 200m毎レース数分布

各国"Cross Country" 距離別レース数分布
メートル法200m毎(グラフ参照)

イギリスの”Cross Country”のみ 200m毎レース数分布
アイルランドの”Cross Country”のみ 200m毎レース数分布
フランスの”Cross Country”のみ 200m毎レース数分布





各国全障害競走 距離別レース数分布
ヤード法1ハロン毎(グラフ参照)

イギリス 1ハロン毎レース数分布
アイルランド 1ハロン毎レース数分布
フランス 1ハロン毎レース数分布
(日本) 1ハロン毎レース数分布



各国"Chase" 距離別分布
ヤード法1ハロン毎(グラフ参照)

イギリスの”Chase”のみ 1ハロン毎レース数分布
アイルランドの”Chase”のみ 1ハロン毎レース数分布
フランスの”Chase”のみ 1ハロン毎レース数分布

各国"Hurdle" 距離別分布
ヤード法1ハロン毎(グラフ参照)

イギリスの”Hurdle”のみ 1ハロン毎レース数分布
アイルランドの”Hurdle”のみ 1ハロン毎レース数分布
フランスの”Hurdle”のみ 1ハロン毎レース数分布

各国"Cross Country" 距離別分布
ヤード法1ハロン毎(グラフ参照)

イギリス”Cross Country”のみ 1ハロン毎レース数分布
アイルランド”Cross Country”のみ 1ハロン毎レース数分布
フランス”Cross Country”のみ 1ハロン毎レース数分布



筆者コメント

イギリス:
 平均・中央・最頻距離は、英愛仏の中で最も長い。なお、障害種類をChase・Hurdleに限定しても変わらず最も長い。
 大雑把に、ではあるが、2マイル(約3200m)、2.5マイル(約4000m)、3マイル(約4800m)あたりにレースが集中しており、ChaseとHurdleを障害種類別に分けてもこの傾向に違いはない。
 アイルランドやフランスと比べると長距離戦が多く、全レース数の約19%にあたる650レースが3マイル以上で行われている。特にHurdleの長距離戦における充実ぶりは群を抜いており、英愛仏のHurdle全レースを距離の長い順に並べると、上位42レースは全てイギリスのレースになる。
 イギリス最短距離のレースはWetherby競馬場、Chaseの1マイル7ハロン36ヤード(約3050m)で行われた計3レースである。その一方、最長距離のレースは4月10日Aintree競馬場第6レース、Chaseの4マイル2ハロン74ヤード(約6907m)で行われたご存知Grand National(G3)である。Grand Nationalは英愛仏で最長距離のChase競走でもある。

アイルランド:
 平均・中央距離はイギリスに次いで長く、最頻距離は英愛仏で最も短い。
 イギリスと同様にレースは2マイル、2.5マイル、3マイル付近に集中している。特にHurdleは明らかに2マイル、2.5マイル、3マイル付近に集中している。
 アイルランド全障害競走の最頻距離が2マイルちょうどであるように、ヤード法におけるキリの良い距離での開催が多い。2マイルちょうどのレースは全体の約18%にあたる244レースが開催され、これが最頻値。他にも2.5マイルちょうどのレースが全体の約14%にあたる189レース、3マイルちょうどのレースが全体の約5%にあたる72レース行われている。
 3マイル以上のChase・Hurdleは、フランスと比較した場合は充実しているといえるが、イギリスと比較すると充実していないといえる。
 アイルランド最短距離のレースは4月18日Tramore競馬場第6レース、Chaseの1マイル7ハロン22ヤード(3037m)で行われたレーティング109以下戦である。このレースは英愛仏で最短距離のChase競走でもある。
 一方、最長距離レースは4月29日Punchestown競馬場第3レース、Cross Countryの4マイル2ハロン(6840m)で行われたLa Touche Cupである。 

フランス:
 平均・中央距離がイギリス・アイルランドに比べ短い。
 分布を見ると4000m(約2.5マイル)以下にレースが集中しており、特に4800m(約3マイル)以上のChase・Hurdleはごく僅かしか開催されておらず、Chaseに限定すると4レース、Hurdleは2レースに限られる。これら6レースは全て格付けが付いているレースであり(G1:4レース、G3:1レース、Listed:1レース)、格付けの無いレースに限るとChaseは4700m(2マイル7ハロン79ヤード)、Hurdleでは4300m(2マイル5ハロン82ヤード)が最長距離のレースとなる。4800m(約3マイル)以上のレースは75レース行われるCross Countryに専ら依存しているといってよく、こちらは下級馬にも門戸が開かれている。
 ChaseやHurdleとは対照的に、Cross Countryは比較的に長距離を中心とする独立したレース体系になっている。Cross Countryにおける距離の長短の基準は、中央値・最頻値である4500m(2マイル6ハロン81ヤード)付近を一つの目安にすると良さそうだ。
 フランス最短距離のレースは、Auteuil・Fontainebleau・Jallais・Pompadourの各競馬場で行われた3000m(1マイル6ハロン200ヤード)のHurdle計24レースである。なお、この計24レースは英愛仏の障害競走における最短距離のレースでもある。
 一方、最長距離のレースは5月13日Lion d'Angers競馬場第6レース、Cross Countryの7300m(4マイル4ハロン63ヤード)で行われたPrix Anjou-Loire Challenge(Listed)である。このPrix Anjou-Loire Challenge(Listed)こそが、英愛仏の障害競走における最長距離のレースである。




⑥出走頭数平均・中央・最頻値、出走頭数分布




各国全障害競走 平均・中央・最頻出走頭数、出走頭数別レース数分布
英:平均8.51頭 中央8.00頭 最頻7.00頭
愛:平均12.48頭 中央13.00頭 最頻14.00頭
仏:平均8.98頭 中央8.00頭 最頻8.00頭
(日:平均11.75頭 中央12.00頭 最頻12.00頭)

イギリス 出走頭数別レース数分布
アイルランド 出走頭数別レース数分布
フランス 出走頭数別レース数分布
(日本) 出走頭数別レース数分布



障害種類別 平均・中央・最頻出走頭数、出走頭数別レース数分布

Chase
英:平均7.55頭 中央7.00頭 最頻7.00頭
愛:平均10.61頭 中央11.00頭 最頻14.00頭
仏:平均8.16頭 中央8.00頭 最頻7.00頭

イギリスの”Chase”のみ 出走頭数別レース数分布
アイルランドの”Chase”のみ 出走頭数別レース数分布
フランスの”Chase”のみ 出走頭数別レース数分布


Hurdle
英:平均9.17頭 中央9.00頭 最頻7.00頭
愛:平均13.35頭 中央14.00頭 最頻14.00頭
仏:平均9.92頭 中央9.00頭 最頻9.00頭

イギリスの”Hurdle”のみ 出走頭数別レース数分布
アイルランドの”Hurdle”のみ 出走頭数別レース数分布
フランスの”Hurdle”のみ 出走頭数別レース数分布


Cross Country
(※)英:平均13.67頭 中央13.00頭 最頻13.00頭
(※)愛:平均14.33頭 中央13.00頭 最頻13.00頭
仏:平均8.00頭 中央8.00頭 最頻8.00頭

イギリスの”Cross Country”のみ 出走頭数別レース数分布
アイルランドの”Cross Country”のみ 出走頭数別レース数分布
フランスの”Cross Country”のみ 出走頭数別レース数分布

※イギリス・アイルランドのCross Coutnryは各3レースのみの開催によるデータにつき注意



重賞・Listedレース 平均・中央・最頻出走頭数、出走頭数別レース数分布

重賞・Listedレースのみ 平均・中央・最頻出走頭数
英:平均9.38頭 中央8.00頭 最頻6.00頭
愛:平均9.88頭 中央8.00頭 最頻5.00頭
仏:平均9.30頭 中央8.00頭 最頻7.00頭
(日:平均11.10頭 中央11.50頭 最頻8.00頭)

イギリスの”重賞・Listedレース”のみ 出走頭数別レース数分布
アイルランドの”重賞・Listedレース”のみ 出走頭数別レース数分布
フランスの”重賞・Listedレース”のみ 出走頭数別レース数分布
日本の”重賞・Listedレース”のみ 出走頭数別レース数分布

筆者コメント

 英愛仏に共通する特徴として、Hurdleの出走頭数がChaseの出走頭数よりも多いことがあげられる。イギリス・フランスではHurdleの平均出走頭数がChaseよりも約1.5頭以上多く、アイルランドでは同条件でChaseの平均出走頭数がHurdleより2.5頭近く多くなっている。


イギリス:
 レース平均出走頭数が最も少なく、最も多いアイルランドと比較した際には約4頭もの差が生まれている。出走頭数が4頭以下になるケースも数多く見られる。また、2021年における英愛仏の障害競走で唯一単走が行われた国でもある。(現地の競馬用語で”Walk Over”と呼ばれ、距離は1ハロン(約200m)に短縮、障害飛越も免除になる)
 多頭数のレースは重賞・Listedのレースに多い傾向にある。重賞・Listedレースに限った場合はアイルランドと平均・中央出走頭数で大きな差は無くなり、最頻出走頭数では上回る。英愛仏で最多出走頭数の40頭が出走したのも、ご存知イギリスのGrand National(G3)である。
 
アイルランド:
 平均・中央・最多出走頭数ともにイギリスやフランスに比べて圧倒的に多く、特に中央頭数ではイギリスやフランスに比べて5頭も多い。
 格付けの無いレースでは出走頭数がイギリス・フランスと比べ圧倒的に多い一方、重賞・Listedでは出走頭数が比較的少なくなる傾向にある。重賞・Listedレースに限定した場合、平均・中央出走頭数ではイギリスやフランスと差がなくなるばかりか、最頻出走頭数は英愛仏レースの中で最も少なくなる。
 アイルランドにおいて最多頭数28頭が出走したレースは3つあり、1つ目は4月5日Fairyhouse競馬場第6レースに行われたIrish Grand National(GA)、2つ目は12月27日Punchestown競馬場で行われたPaddy Power Chase(GB)、3つ目は12月28日Leopardstown競馬場第2レースのレーティング116以下戦である。最多出走レースに条件戦が含まれているという点でも、イギリスやフランスと毛色が違うといえる。

フランス:
 Cross Countryを除き、全体的にイギリスと似た傾向である。
 レース平均・最頻頭数はイギリスより多いものの、最も多いアイルランドと比べた際には平均頭数は3.5頭、中央頭数では5頭の大きな差を付けられて少ない。
 英愛仏ではフランスが唯一盛んに行うCross Countryは、平均・中央・最頻出走頭数すべてにおいて8頭である。出走頭数別レース数の分布を見ると、8頭を中心に綺麗な山型になっている。
  イギリスと同様に、Listed以上のレースの方が出走頭数は多くなる傾向にある。重賞・Listedレースに限定した時には、アイルランドと平均・中央出走頭数で大きな差は無くなるだけでなく、最頻出走頭数は英愛仏で最も多くなる。
 フランスの最多出走頭数レースは4月25日Auteuil競馬場第3レースのPrix du Président de la République(G3)である。このレースは、フランスにおける最高賞金のハンデキャップ重賞競走でもある。




⑥競走中止率、落馬・転倒率




※閲覧前の注意事項

注1:欧州障害競馬は日本と異なり、馬が著しく疲弊した場合に途中棄権させる文化があります。従って、この調査における競走中止率も、日本と比べ遥かに高くなっていることに注意が必要です。但し、疲弊でない途中棄権(主に故障)のケースも当然存在します。

注2:競走中止のうち、落馬・転倒とカウントするものは以下の通りです。参照したデータベースの都合上、英愛と仏の間では必ずしも対照的な比較とは言えませんのでご注意下さい。また、これら落馬・転倒は必ずしも障害に起因するものとは限りません(故障による転倒、他馬の進路妨害による落馬など)。

Racing Postを参照したレース(イギリス・アイルランド)
・F(転倒=Fell)
・UR(落馬=Unseated Rider)
・BD(他馬の煽りを受け落馬=Brought Down)
・SU(滑って転倒=Slipped Up)

France Galopを参照したレース(フランス)
・TB(転倒=Tombé)
・TJ(落馬=Tombé Jockey)

注3:日本障害競馬の競走中止における落馬・転倒の判別はJRA公式サイト「本日の出来事」の当該日のページより「落馬」「転倒」と含まれるものを判別しています。「参考にしたWebサイト」の欄で表示しています。

注4:日本は年間127レースしか行われておらず、比較のサンプル数としては十分でない可能性があります。


障害競走 レース平均・中央・最頻競走中止頭数
英:平均1.46頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
愛:平均1.80頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
仏:平均2.08頭 中央2.00頭 最頻1.00頭
(日:平均0.48頭 中央0.00頭 最頻0.00頭)

Chase レース平均・中央・最頻競走中止頭数
英:平均1.81頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
愛:平均2.31頭 中央2.00頭 最頻1.00頭
仏:平均1.83頭 中央1.00頭 最頻1.00頭

Hurdle レース平均・中央・最頻競走中止頭数
英:平均1.21頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
愛:平均1.56頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
仏:平均2.31頭 中央2.00頭 最頻1.00頭

Cross Country レース平均・中央・最頻競走中止頭数
(※)英:平均4.00頭 中央3.00頭 最頻N/A
(※)愛:平均5.00頭 中央5.00頭 最頻5.00頭
仏:平均2.02頭 中央2.00頭 最頻1.00頭

障害競走 全出走頭数に対して競走中止した馬の割合
英:17.2%
愛:14.4%
仏:23.1%
(日:4.1%)

Chase 全出走頭数に対して競走中止した馬の割合
英:24.0%
愛:21.8%
仏:22.4%

Hurdle 全出走頭数に対して競走中止した馬の割合
英:13.2%
愛:11.7%
仏:23.3%

Cross Country 全出走頭数に対して競走中止した馬の割合
(※)英:29.3%
(※)愛:37.2%
仏:25.2%


障害競走 レース平均・中央・最頻落馬・転倒頭数
英:平均0.34頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
愛:平均0.61頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
仏:平均0.76頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
(日:平均0.24頭 中央0.00頭 最頻0.00頭)

Chase レース平均・中央・最頻落馬・転倒頭数
英:平均0.46頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
愛:平均0.90頭 中央1.00頭 最頻0.00頭
仏:平均0.81頭 中央0.00頭 最頻0.00頭

Hurdle レース平均・中央・最頻落馬・転倒頭数
英:平均0.26頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
愛:平均0.47頭 中央0.00頭 最頻0.00頭
仏:平均0.61頭 中央0.00頭 最頻0.00頭

Cross Country レース平均・中央・最頻落馬・転倒頭数
(※)英:平均1.33頭 中央2.00頭 最頻2.00頭
(※)愛:平均1.33頭 中央2.00頭 最頻2.00頭
仏:平均1.17頭 中央1.00頭 最頻1.00頭

障害競走 全出走頭数に対して落馬・転倒によって競走を中止した馬の割合
英:4.0%
愛:4.9%
仏:8.4%
(日:2.1%)

Chase 全出走頭数に対して落馬・転倒によって競走を中止した馬の割合
英:6.0%
愛:8.5%
仏:10.0%

Hurdle 全出走頭数に対して落馬・転倒によって競走を中止した馬の割合
英:2.8%
愛:3.6%
仏:6.1%

Cross Country 全出走頭数に対して落馬・転倒によって競走を中止した馬の割合
(※)英:9.8%
(※)愛:9.3%
仏:14.6%



障害競走 競走中止した馬のうち、その理由が落馬・転倒だった割合
英:23.1%
愛:33.9%
仏:36.4%
(日:50.8%)

Chase 競走中止した馬のうち、その理由が落馬・転倒だった割合
英:26.0%
愛:39.1%
仏:44.4%

Hurdle 競走中止した馬のうち、その理由が落馬・転倒だった割合
英:21.1%
愛:30.5%
仏:26.4%

Cross Country 競走中止した馬のうち、その理由が落馬・転倒だった割合
(※)英:33.3%
(※)愛:25.0%
仏:58.1%

※イギリス・アイルランドのCross Coutnryは各3レースのみの開催によるデータにつき注意



筆者コメント

 ChaseとHurdleに共通する特徴として、競走中止や落馬・転倒が起きる確率はChaseの方が高く、Hurdleの方が低いということが挙げられる。ただし例外もあり、フランスのHurdleに限っては落馬・転倒以外による競走中止がフランスのChaseより多い傾向にある。

イギリス:
 アイルランドやフランスと比べ、競走中止の理由が落馬・転倒だったものが少ない。また、全出走頭数比で見てもChase、Hurdle共に英愛仏の中で落馬・転倒が発生する確率は最も低い。

アイルランド:
 特にイギリスと比較した際にレース平均の競走中止頭数が多い一方、全出走頭数における競走中止頭数の割合は、むしろ英愛仏の中で最も低い。恐らく、1レースにおける出走頭数が多いことがこのような結果になる大きな理由の1つだろう。
 一方、競走中止理由が落馬・転倒である割合は高い傾向にあり、特にHurdleでは英愛仏の中で最も高い。

フランス:
 全出走頭数に対して競走中止頭数の割合や落馬・転倒頭数の割合が英愛仏の中でも高い傾向にあり、競走中止の理由が落馬・転倒であった確率も高い。
 先述した通り、落馬・転倒に関係しない競走中止頭数で、HurdleがChaseを上回るという傾向もある。
 英愛仏でフランスが唯一盛んに開催するCross Countryは、競走中止及び落馬・転倒の発生する確率がChaseやHurdleより高いといえる。




参考データベース・文献



参考データベース

The British Horseracing Authority(イギリスの「競走中止頭数」「落馬頭数」「転倒頭数」以外に関するレースの情報すべての集計時に参照)
Racing Post(イギリス・アイルランドの「競走中止頭数」「落馬頭数」「転倒頭数」の集計時に参照)
Horse Racing Ireland(アイルランドの「年齢条件」「競走中止頭数」「落馬頭数」「転倒頭数」以外のレース結果全てと、アイルランドのほとんどのレースにおける「賞金額」を参照)
Horse Racing Results - Live Coverage | Sky Sports(アイルランドの「年齢条件」すべてと、Horse Racing Irelandに賞金額の記載が無かった一部レースの「賞金額」を参照)
France Galop(フランスのレース情報すべてを参照)
netkeiba.com(日本の「賞金額」以外のレース情報すべてを参照)
JRA日本中央競馬会(日本の「賞金額」を参照)
Xe(為替レートを参照)


参考Webページ(以下、非常に長いので注意)


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