見出し画像

「走れかすみん」 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第2話より

 かすみは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の生徒会を除かねばならぬと決意した。かすみには政治とカッコいいスクールアイドルが分からぬ。かすみは、私立虹ヶ咲学園の生徒である。コッペパンを焼き、イタズラを企てて暮らして来た(ここはスクスタ準拠) 。けれども可愛いに対しては、人一倍敏感であった。




 かすみは走った。まずは猫を投げつけ、生徒会長の目を晦まし、スクールアイドル同好会の表札を奪い、逃げt……走った。

「これで私の居場所は取り戻した!さぁここからまた「可愛い」が溢れるスクールアイドルを始めようぞ!」



 かすみは愕然とした。そこはもうスクールアイドル同好会の部室では無くなっていた。そこにあったのはワンダーランドではなくワンダーフォーゲルであった。そもそもワンダーフォーゲル部とはなんだ。山岳部と何が違うのか。山を登るだけではなく、冬はスキー、夏はキャンプ。活動場所は山と限らず、好きなこと、やりたいことを自由にやるという。しゃらくせぇ。こちらはそもそも山にも登れぬほど不自由なのだ。



 かすみは決意した。自らが部長となってまた同好会を存続させようと。自分の大切な「可愛い」溢れるかすみんワンダーランドを作っちゃおうと。

 かすみは贈賄した。近づきのしるしとして渡した手作りコッペパンとともに「最強に可愛いスクールアイドル同好会にしてみせる」と豪語した。



 かすみは強制した。「可愛い」が一番届けたいし、やりたかったことであったので、同好会も「可愛い」で溢れる場所にしようとした。

画像1




 歩夢は恐怖した。なんだか自分の思っている「可愛い」と違っていた。と同時に「可愛い」とは何なのか分からなくなっていた。

そしてかすみは続けた。

「そんなんじゃ、ファンのみんなに可愛いは届きませんよ。」(※1)



 かすみは驚いた。いや驚かされた。それは嘗て自分が受けた仕打ちであった。自分にとって大切なものだからこそ、届けたい。そしてその届けたいものはみな一緒だと思っていた。
何故なら、かすみにとって大切な「可愛い」はスクールアイドルの「基本」だから。みなが備わっているべき心構えだと思っていたから。

セカイは「私の思う可愛いだけ」で溢れていると思っていたから。


 


 かすみはまた驚いた。いやまた驚かされた。歩夢の自己紹介を見たからであった。それは可愛かった。自分の思っている可愛いとは違うけれども、これも可愛いと言って良い。そして気づいた。

セカイは「私の思う可愛い以外」にも溢れている。




 かすみは奮起した。これは奮起「させられた」のではない。自らの意志で奮起した。セカイは私の思う可愛い以外にも溢れている。だからこそだ。




だからこそ、私の思う可愛いを届けたい。私の思う可愛いで勝負したい。誰にも負けたくない。私だけの、オンリーワンの煌めきでナンバーワンを目指したい。



かすみは走る。自らの思う「可愛い」を人質に取りながら。

自らの思う「可愛い」を信じて今日も走る。


画像2

画像3

「悩んでるかすみんも可愛いよ」(※2)

画像4

画像5


どうやら可愛いを届けてばかりの子は、からかっているのではなく、本心で可愛いと受け取るのには、少し時間がかかるのかもしれない。


勇者は、ひどく赤面した。




(※1)、(※2)、アニメ画像ともに
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
第2話「Cutest♡ガール」より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?