丼勘定で勾留延長する裁判官ら

さて、本日、当職が担当している被疑者が再逮捕なく処分保留釈放された。それは喜ばしいものの、なんとも苦言を呈したいことがある。勾留延長の裁判である。

処分保留釈放であり、詳細を述べることはできないが、守秘義務はじめ色々問題にならない範囲で本件の経過は次のようなものである。
1 被疑者は、事件Aで逮捕・勾留された。否認事件である。
2 被疑者は、事件Aを基本事件として勾留延長された。
3 当職は、2の勾留期間延長の裁判に対して、原決定は被疑者が犯行を否認していることをもって丼勘定で勾留期間延長を認めたもので違法不当であるとして、準抗告を申し立てた。
4 3の準抗告したものの、被疑者は合計20日勾留された。
5 被疑者は、事件Aの延長後勾留満期に処分保留釈放のうえ、類似した事件である事件Bで再逮捕・勾留された。否認事件である。
6 被疑者は、事件Bを基本事件として勾留延長された。
7 当職は、6の延長決定に対して、「弁護人は、先行事件の勾留延長決定に対する準抗告にあたり、原決定がどんぶり勘定で勾留延長を認めたものであると指摘し、現に被疑者が先行事件で処分保留釈放となったのである。本件について、裁判官が再びどんぶり勘定で勾留延長を認め、被疑者に対して無駄な身体拘束をするなどという失態は回避すべき」(申立書どおり引用である。)などと主張して準抗告を申し立てた。
8 準抗告を踏まえても、被疑者に対する10日の勾留延長は維持された。
9 被疑者は事件Bについても処分保留釈放された。

さて、以上1から9の経緯を踏まえて、どうだろう。もちろん事件Aの勾留延長に関与した裁判官に対しても言いたいことはあるのだが、事件B段階の勾留延長に携わった裁判官の丼勘定ぶりは目に余る。

先行事件で丸々10日の勾留延長が認められたのに、起訴不起訴の判断すらできず処分保留釈放となった以上、先行事件の勾留延長の判断は丼勘定の疑いがかかるが、本件の勾留延長段階では先行事件での失敗を真摯に受け止める機会があったのである。それなのに漫然10日の延長を認めた裁判官(名古屋地裁5刑)に対して「丼勘定する適当な裁判官」以外の評価を下せるだろうか。

しかも、裁判官らの丼勘定ぶりを疑わせる事実は、先行事件との兼ね合いだけではない。勾留期間延長決定に対する準抗告は、要するに、本件については照会結果を踏まえて被疑者を詳細に取り調べる必要があり、それには相当の日数を要するから、10日勾留を延長した原決定は是認できるというのである。
しかし蓋を開けてみれば、勾留延長後取調べは一回しか行われていないのである。準抗告審では詳細な取調べを要するとの判断だったのに、蓋を開けてみれば、警察が1回だけ取調べをしただけというのであるから、裁判官らの判断には呆れるほかない。
もちろん、検察官が無理に勾留延長の必要性を主張したのかもしれない。つまり検察官は、真実は被疑者を詳細に取り調べるつもりがないにもかかわらず、これがあるかのように装って勾留期間延長請求をし、裁判官から勾留期間延長決定を詐取した可能性がある。被疑者と検察官、どちらが被疑者と言われるべきか解らない。
しかし、仮に検察官が勾留期間延長決定を詐取しようとしたとしても、令状担当裁判官及び準抗告審の裁判官が騙されないよう注意深く記録の精査を行い、自己の判断が丼勘定になっていないか謙虚な姿勢で判断に臨めば、少なくとも漫然と10日の延長を認めるには至らなかったのではないかと思われる。

当職は、これまで何度か勾留期間の延長を短縮した経験はあるが、悲しいことに否認事件では丼勘定がまかり通ってしまっている。
このような由々しき事態を解決するために何ができるか、当職自身も考えていかないといけないのかもしれないが、裁判官に対しては、自己の判断が丼勘定になっていないか、真摯に検討するだけの心意気を持ってもらいたいものである。

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