弁護士に向いている人とは

ひょんなことから、どのような勉強をして司法試験に合格したのか話すことになった。しかし、当職のことを前々から知っている人なら解ると思うが、この手の話は当職に向いていない。
なぜなら当職は、法学部にも通わず、ローにも通わず、予備校にも通わず、本当、独学で予備試験と司法試験に合格したというあまりにも稀有な経歴だからである。このようなことを誇っても仕方ないので誇るつもりもないが、当職は司法試験が向いていたのであろう。向いていたから独学で合格できた、他の試験では無理である。そして実務に出れば試験の順位や合格への軌跡など何の役にも立たないので、誇りに思う必要すらないのである。

さて、今回、ひょんなことから合格のためのアドバイスや弁護士に向いている人とはどんな人か尋ねられたので色々考えてみた。
アドバイスは本当に役に立たないが、弁護士に向いている人とは、やはり頭のおかしい人ではないかと思う。
そりゃそうだろう。「夫婦喧嘩は犬も食わない」という言葉があるが、弁護士、というか法曹の仕事は、人の紛争に首をつっこむ仕事である。ストレスにわざわざ関与しに行くということを生業とするには、およそまともな人間にはできないと思われる。こんなことを言うと怒られるかもしれないが、民事訴訟法や刑事訴訟法は「人間社会の廃棄物処理法」であろう。そんな仕事をやり切れる精神力が必要である。
ただ、言うまでもなく「廃棄物の処理」は誰かがやらないといけない。そして、人の人生に関わる廃棄物の処理をすることができるのは、間違いなく一定の能力を備えた実力者(エリート)であり、エリートは他者のために犠牲を払うこともやむを得ないのである。
当職は、圧倒的に有罪事件が多い刑事裁判において無罪を勝ち取ったが、無罪判決を取るためには、一般人として生活するための大切なものを色々失わないといけない。
まともな人間には法曹は向いていない。自分がまともではないと思う人間には法曹は向いているかもしれない。そして、ある意味で「自分がまともだと思っている人間」も認知に歪みがある可能性がそれなりに高いので法曹が向いているかもしれない。ただ、この仕事は人に勧められる仕事ではないと思う。

そんなことを思いながら、当職にアドバイスを聞きにきた彼は、割と頭がおかしかったので弁護士が向いているのではないかと思われたのであった。

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