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【プロ野球】人的補償廃止でFA移籍は活性化するのか?

2023~24年オフは人的補償について、ひと悶着がありました。

ソフトバンクがFA権行使の山川穂高を獲得したことで作成したプロテクトリストに問題があり、人的補償制度のあり方について様々な意見が出ました。

これらの話の中で、プロ野球選手会側が 人的補償制度の廃止 を強く要望していることも鮮明になりました。


選手会側の主張としては、人的補償制度は移籍の活性化の妨げになるもので、人的補償が発生することでFA宣言しにくい選手もいるということです。

人的補償が無くなることで、FA権を行使しやすくなって移籍市場が活性化し、人的補償の代わりに他のFA権を行使した選手を獲得することができると、選手会の森事務局長がコメントしています。


しかし人的補償を撤廃しただけで、本当にそうなるのでしょうか?
現時点でもCランクの選手は補償対象外ですが、Cランク選手が積極的にFA宣言を行使しているようにも見えません。

そこで人的補償がFA権行使に影響があるのか、過去5年のFA権取得人数・行使人数・移籍人数を調べてみました。


FA権取得・行使人数

こちらが過去5年のFA権取得・行使・移籍人数になります。

毎年、FA権を取得している選手は30~40人強がいて、平均して36.4人になっています。
この中で実際に行使している人数は平均6.0人、行使後に移籍しているのは平均3.2人です。

つまりFA権を取得しても、実際に行使しているのは20%にも満たず、そのうち移籍した選手は10%を切っています。

FA宣言をする選手のなかには、移籍を求めてるわけじゃなく自球団と話し合いをすることや、自球団から好条件を引き出すために行使している選手もいるので、移籍を求めて行使している選手はもっと少ないです。

こうした行使状況ではFA市場で選手補強できる球団はごく一部に限られ、移籍された側の球団がFA市場から選手を獲得することはほぼ不可能と言えるでしょう。


では人的補償を廃止することで、権利を行使しやすくなって市場が活性化するかどうかですが、ランク別で行使状況を調べてみました。

ランク別・行使人数と行使率

ランク別だとこのようになります。
FAのランク自体は公表されているわけではないので、推定年俸から分類してみました。

これによるとFA権を1番行使しているのはAランク選手で、平均19.6%でした。
次がBランク選手で16.2%
Cランク選手は16.1%です。
本来、補償が無くて移籍しやすいはずのCランクの選手が1番、行使していないという結果でした。

Cランク選手の中には戦力外通告を受けている選手もいるので、行使がそもそもできない場合もありますが、Aランク・Bランク選手にしても事前に複数年契約を結んでる選手もいるので、行使の難しさはどのランクもそこまで差が無いでしょう。

なのでこうして見ると、補償の有無がFA権行使に影響を与えているとは考えにくいです。

なので人的補償が撤廃されても、市場に出てくる選手が今と大差ないのであれば、移籍される側の球団は他の補強手段がなく、選手会の森事務局長が考えてるようなことにはなりません。

もし仮に人的補償撤廃で好転して、行使人数が倍増したと仮定しても、実際のところは12人前後の行使に留まります。
そして移籍するのは6~7人程度なので、まだまだ少なく人的補償に代わる補強手段にはなり得ません。

球団によっては捕手を流出するところもありますし、その場合に市場に投手しかいないような状況だと、代わりの捕手を獲得できないでしょう。
なので代わりの補強の選択肢としては考えにくいです。


結論

  • FA権を取得しても、行使している人数は20%弱止まり

  • ランク別で差が無いので、補償廃止でFA市場が活性化する保証が無い

  • 仮に市場に選手が倍増しても、それでも人的補償に代わる補強手段としては難しい

このような結論になりますので、NPB側が人的補償廃止に難色を示すのも当然でしょう。


もしFA移籍を活性化させたいなら

もし選手会の要望通りにFA移籍を活性化させたいなら、人的補償廃止だけでは駄目で、更に必要なことがあります。

それは「FA宣言の廃止」です。
選手が宣言すること無く、期限まで来たら自動的にFAになる「自動FA」を導入すべきでしょう。

これが実現すると、今まで毎年30~40人強の選手が毎年FA権を取得しているのですから、この人数に近い選手がFA市場に出ることになります。
事前に球団と複数年契約を結んでる選手もいるので、実際のところは20~30人程度になるかもしれませんが、それでもかなりの人数です。

これだけの人数がFA市場に出てくれば、各球団で獲りたい選手も沢山出てくるでしょうし、仮に移籍されても代わりの選手を獲得しやすいです。

ただし、自動FAになるということは、所属未定の選手が大量に出るということなので、どこも獲得の手を挙げなかった場合はそのまま自由契約になります。
そのリスクを選手会が許容できるか難しいですが、「移籍活性化」を第一に掲げるなら人的補償廃止だけでは不可能で、自動FAまで話を広げないとできないでしょう。

そこまでの話をすることで、NPB側ともしっかり話し合いを行える状況になると思います。


自動FAが導入された場合の2024年FA市場

もし自動FAが導入された場合、2024年にはどんな選手がFA市場に出てきそうか、調べてみました。

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