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【横浜DeNA】2022年ドラフト指名結果について考察・評価

10/20(木)にプロ野球ドラフト会議が行われました。
横浜DeNAの指名結果は以下の通りです。

この指名結果について考察・評価をしてみました。

指名全体についての考察

ドラフト前時点では、各ポジションの選手層や戦力外選手から考えると、今年は野手の指名が多く、特に捕手と内野手の指名が確実にあると想定していました。
実際の指名では支配下の野手こそ2人でしたが、1位と3位という上位の方で捕手と内野手を1人ずつ指名していて、球団としても捕手と内野手を重視した指名だったことが伺えます。
特に捕手は今の1軍捕手が全員30代で3年後を考えると大きな不安があったので、「将来の正捕手候補」を今年指名することはとても重要でした。1位でその正捕手候補を指名できたので、これだけで今ドラフトが会心の結果と言えます。
育成でも捕手を1人指名していますし、現在の若手捕手の課題になっている打撃力に特化した選手を指名しているので、将来に向けて非常に良い捕手指名でした。

内野手についても、3位で大学生の内野手を指名できたことで現在の1軍内野陣のケアをしました。1軍内野もレギュラーが固定化されつつあり、若い牧や森がいるとはいえ、ソト・宮崎・大和ら大半はもう30代です。
控えの内野手の台頭も弱く、攻守両面で層を厚くする選手が必要でしたので、1軍の内野争いに入れる即戦力内野手を指名できたことは、今ドラフトが有意義なものになった決め手と言えます。
育成でも1人高校生遊撃手を指名していて、若手遊撃手を手厚くして将来の内野手の底上げを考えているのが伝わる指名になりました。

投手については既存の投手人数がかなり多めだったので、指名前の予想では支配下は1~2人程度と想定していましたが、3人の投手を指名する予想外の結果でした。
しかし、社会人の先発・大学生のリリーフ・素材型の高校生というバランスの良い指名内容で、投手陣全体の底上げを意識したことが分かります。
DeNAの指名方針はやはり投手を基本としていて、安定した投手陣の上にプラスアルファの戦力を獲得していくということなのでしょう。
来季への懸念として、山崎康晃のMLB挑戦や三嶋の復帰時期が不明というのもあり、仮にそれでリリーフが崩れた場合には優勝など望めなくなります。そのケアを行う指名だったと言えます。
育成でも3人の投手を指名していますが、これだけ若い投手を指名できたのは投手育成に自信を持ってきたことの現れとも考えられるので、彼らの育成にも期待がかかります。

外野手については今回指名は0人でした。これは昨年のドラフトで育成外野手を指名していて、勝又を野手転向させていますし、外野の人数は揃っていて現時点で新たに指名する必要は無いという判断でしょう。
今年のドラフトは外野手の指名候補が豊富で、上位でかなり外野手が指名委されていましたが、逆にDeNAはそういった流れにいかなかったので独自のドラフトをとりやすかったのではないでしょうか。
今年指名しなかった分、来年の指名の可能性は高まりました。

指名選手個別寸評

1位 松尾 汐恩(捕手・大阪桐蔭)

今年のドラフトの会心の出来が、やはりこの松尾捕手を1位指名できたことです。
高校生No.1捕手で、ドラフト全体で見てもNo.1評価を得られるレベルの素晴らしい捕手を指名できました。
松尾選手は捕手ですが、「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の全てが高いレベルでまさに5ツールプレイヤーと言える選手です。
甲子園で通算5本の本塁打を打っていて打撃力は本物ですし、元遊撃手なので小回りがきく万能型と言えるでしょう。
こういった捕手はなかなかいないので、今までの捕手とは違うタイプで大成する可能性がありますし、新しい正捕手像を作ってくれそうな期待感があります。

松尾選手の育成プランがどうなるかは現時点ではまだ分かりませんが、まずは2軍でしっかりと育成していくと考えています。
去年ロッテに指名された松川は1年目から1軍に積極的に出していますが、DeNAの場合は現状で1軍は伊藤・戸柱・嶺井らがいますし、若手の山本や益子なども来季から1軍に上がっていきそうなので、今すぐ松尾選手を1軍に上げなければならないという状況にはならないはずです。
捕手の年齢層を考えると、3年目に1軍に定着しているのが理想なので、2年目までは逆に2軍でしっかり育てていく方が良いでしょう。


2位 吉野 光樹(投手・トヨタ自動車)

1位指名で松尾選手を指名できたので、2位指名は投手にいくと指名前に予想していましたが、その通りに吉野投手を指名しました。
社会人投手の上位指名は2013年の柿田・平田らの指名まで遡りますので、吉野投手が指名されたことには驚きましたが、即戦力の投手という意味だと非常に良い指名だったと言えます。
吉野投手の特徴は最速150kmの球威ある直球を安定して投げれるところで、この直球を主体にした多彩な変化球で打ち取ることができる本格派右腕です。

DeNAは現在ローテ投手が今永・大貫・濵口・石田らになっていますが、彼らに続く先発がなかなか定着していません。
なので現在は安定してても将来的に先発が途切れる可能性があり、その隙間が無いように新たに先発候補を指名したと考えられます。
社会人投手なので当然1年目から1軍ローテに定着することが期待されていますし、春季キャンプから全力でアピールして開幕ローテに入り込むぐらいの活躍を期待したいですね。

3位 林 琢真(内野手・駒沢大)

今年のドラフト候補は大学生内野手が豊富で、DeNAは内野手が補強ポイントになっていたことから、この中で誰を指名するのか気になっていましたが、林を指名したのは結構意外でした。
林は他の大学生ドラフト候補に比べると注目度は低めでしたが、足の速さや肩の強さは大学生内野手の中でもトップクラスですし、遊撃の経験が少ないこと以外は守備走塁での不安は無い選手と言えます。
打撃面だと、リーグ戦では3年次以降で打率3割を超えたシーズンは無いですが、今年の大学生選抜の国際大会のハーレムベースボールでは打率.368でチームトップの成績でした。
打撃の伸びしろや守備面を考えると、タイプ的には広島の菊池選手によく似ていると思いますし、逆に牧選手とは打席の左右の違いや打撃・守備走塁などを含めて正反対なタイプなので、新しいタイプの選手を指名できました。

3位指名の大学生内野手なので、1年目から1軍で活躍を期待できると思います。ショートで起用して森の競争相手としたり、将来的には牧をサードにして林をセカンドにすることも考えられます。
内野の底上げにピッタリな選手を指名できました。

4位 森下 瑠大(投手・京都国際)

1~3位で補強ポイントを網羅する指名ができたので、4位指名ではだれを指名するかと注目していましたが、ここで高校生左腕の森下を指名しました。
森下は最速140km前半の左腕で現状ではまだ球威不足な投手ですが、安定したフォームで直球も変化球も自在に投げれる有望素材型です。
球速が上がらなかったことについては、春にコロナに感染したり、そこから肘を痛めてしまったことでしっかり練習に取り組める時間が足りなかったことが原因と考えられます。
逆に1年目にしっかりと体づくりを行えば、ここから球速を大きく伸ばすことも可能だと思いますし、そうなれば同世代の投手の中でもトップクラスの評価を得られるぐらいになれるでしょう。

また打者としても高校時代に結果を残せているのでセンスがありそうですし、打撃の良い投手として評価を高めていけると更に良いでしょう。
1年目はまずは3年春にできなかった身体作りをしっかり行って、投球全体を磨き上げることに専念すべきです。
2年目以降に徐々に実戦機会を増やして、3年目から1軍が狙えるような投手になれれば、育成としては成功ですね。
育てがいのある投手を指名することができました。

5位 橋本 達弥(投手・慶応義塾大)

ここまでの指名は的確に補強ポイントを突いて、即戦力も素材型もバランス良く指名できていましたが、山﨑康がMLB挑戦した後のリリーフをどうするかが懸念として残っていました。
伊勢や入江がいるといっても、流石に抑えが流出しても何も補強しないのでは不安ですし、ドラフトでセットアッパーや抑えを見込めるリリーフを指名できれば良いと当初想定していましたが、それに見合う投手を最後に指名しました。
橋本は大学では主にリリーフで起用されていて、今年春のリーグ戦では11試合に登板して防御率1.53でリーグトップの防御率になっています。
まだ制球の粗さがありますが、奪三振能力が高く決め球のフォークの質が良いので、投球を磨いていけばセットアッパーや抑えも狙える投手です。

DeNAは伊勢・入江ら近年指名した投手がリリーフとして活躍していますし、橋本も同じように活躍できれば20代の若い投手で勝利の方程式を組むことができます。
そうなれば長期的に安定したリリーフ陣になるので、5位指名とはいえ橋本への期待は大きいでしょう。
1年目から1軍で活躍することが期待されていると思いますが、まずは中継ぎで沢山登板してプロの環境に慣れ、自分の課題を克服してほしいです。
そうすれば伊勢や入江と同様に2年目以降から重要なポジションを任されるようになるでしょう。

育成1位 上甲 凌大(捕手・愛媛マンダリンパイレーツ)

育成指名で1番最初に指名したのが独立リーグの捕手の上甲でした。
これは元々、進藤編成部長が「捕手は1人か2人」とコメントしていたので、本指名で松尾を指名できたので育成で1人指名するという当初の流れに沿った指名だったのでしょう。
ただ、育成とはいえ最初に上甲を指名したのは、上甲に対しての期待度の高さが伺えます。

上甲は高校卒業後に社会人野球の伯和ビクトリーズに2年間所属していました。ここで都市対抗出場も経験していて、その出場した試合では2打席連続本塁打を打つなど、打撃面を大いにアピールしました。
昨年からは愛媛マンダリンパイレーツに所属し、中軸で打力を発揮しつつ捕手としての守備でも強肩を活かして攻守で力のあるプレーができます。
現DeNAの若手捕手陣は特に打撃が課題になっているので、上甲が入ることで良い刺激になると思いますし、逆に上甲もここから支配下登録を勝ち取って次世代の1軍捕手争いに食い込んでくることも期待できるでしょう。

育成2位 鈴木 蓮(内野手・滋賀学園)

DeNAはこれまで育成指名で野手を指名することが少なかったのですが、昨年に外野手を2人指名して、今年はこの鈴木蓮内野手を指名しました。
これは球団の方針としてチームの規模を大きくしていく公算がありそうで、育成選手でも手広く獲得していくということなのでしょう。

そうした中で指名された鈴木ですが、育成とはいえ非常に良い素材型の遊撃手です。
遊撃手としては大型の体格で高校通算29本塁打のパワーがあり、足の速さや肩の強さも魅力的で今後の伸びしろも十分あります。
内野は全般守れるので1年目は2軍で色々なポジションを任されそうですし、2軍での起用頻度は支配下登録と大差ないぐらいになるはずです。
なので結果を残せば早い段階で支配下登録を勝ち取れると思いますし、大きなチャンスがある選手です。

育成3位 今野 瑠斗(投手・東京都市大学塩尻高)

今野はドラフト候補としての知名度は低めでしたが、最速143kmの直球を武器の1年秋からチームのエースとして活躍していました。
甲子園出場経験は無いものの、今年の夏の長野大会では決勝進出を果たしています。この長野大会では準決勝までの試合で27回を4失点に抑え込む好投で、おそらくこの時の活躍がスカウトの目に留まったのでしょう。

体格を考えるとまだまだ球威を上げていくことができそうですし、体づくりをしっかり行うことで1年で見違える成長を遂げる可能性があります。
現時点では先発かリリーフかは分かりませんが、投球の質を上げていくことで適性が見えてくるでしょう。
3年以内に支配下登録を目指し、そこへ向けて大きく飛躍して欲しいですね。

育成4位 渡辺 明貴(投手・茨城アストロプラネッツ)

渡辺は通信制の高校を卒業後に、クラブチームや独立リーグ・韓国の独立リーグにも移籍していた異色の経歴の持ち主で、まだ22歳ですが多彩な経験をしています。
投手としては188cm 105kgという巨漢投手で、最速152kmの直球を押し込んで打ち取るのが投球スタイルになっていて、奪三振率も高いです。
今年9月には巨人3軍との練習試合もあり、そこで1回1奪三振無失点の結果を残しました。
タイプ的にはリリーフで、プロ入り後は直球の質を更に高めていくことや、決め球を磨くことが重要になってくるでしょう。
プロの環境で更に成長し、将来的に1軍リリーフの一角を担うことができるよう期待したいですね。

育成5位 草野 陽斗(投手・東日本国際大学附属昌平高)

草野はDeNAの育成指名で最後に指名された投手です。
甲子園出場経験は無いものの、最速150km近い直球を投げることができ高校生投手としては速球派です。
先発投手としては常時140km前半で、現状だとプロの打者に打ち込まれやすいですが、制球が安定しているので平均球速を上げていけば、大きく飛躍する可能性が見えてきます。
スカウト評では変化球も評価しているので、将来先発ローテに定着できるように育っていってほしいですね。

指名選手を入れた年齢構成表

指名の疑問点について考察

今回の指名に関して、いくつか疑問点を感じた方もいたと思いますので、それを質問・回答形式にして考察してみました。

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