論文の書き方・書き直し方(その1)

卒業論文の推敲にあたり、ここでは草稿に共通する課題を説明します。(最終更新:2020年10月3日)

文献や資料を基にした文章の書き方について

先行文献のレビューではパラフレージングが重要

 先行文献や資料の内容をまとめる、それを整理する、その後に必要なのがパラフレージングです。パラフレージングは、自分がまとめた文献・資料・データの内容が、論文で議論したい内容にどのように関連するのか(伏線になるのか)を解説する文章です。論文では、自分が調べたり、収集したりまとめたデータが多く用いられますが,それを簡潔に整理するだけではなく、パラフレージングをして、その情報が今後論文でどのように活かされることになるのか(関連することになるのか)を解説する必要があります。

伏線としてのパラフレージング

 パラフレージングは、本文で扱われる情報がその後の自分自身が深めていこうとする議論の「伏線」として記載されていることを、読者に理解してもらうような文章です。つまり、論文においては自分が参照する情報を「要約」してみせるだけではなく、それを自分の論文のために「翻訳」し直す必要があります(これは「文献レビュー」のレビューにあたるところです)。この作業により、読者はなぜその情報がこの論文で引用されるのかを理解し、その予備知識をもとに論文のテーマそのものを間接的に理解していきます。いわばパラフレージングという「伏線」を随所に論文にちりばめることで、読者に自分の議論を誤解されないように誘導する機能もあります。つまり、参考にする情報をあらかじめ各所で「翻訳」して紹介することで、それをたどる読者に、自分の議論が論文の冒頭から結末まで首尾一貫した道のりをたどっていることを示すことができます。

 パラフレージングの書き方は色々ありますが、「例えば」として、もう少しわかりやすい例を示し本論との関連姓を示す、あるいは「つまり」という言い換えにより、より論文の目的に沿った説明や解釈を与える、等のテクニックがあります。

翻訳不可能性がもたらす契機

 しかし、パラフレージングを行う過程で、そこで扱われている情報がうまく「翻訳」できないことがたびたび起きます。その理由として、とりあげた先行文献や資料で議論されている内容やその主張(あるいはそこで構築された概念や理論)が、自身の論文でとりあげる内容の実態にそぐわない=部分的にしか打倒しないことが確認できます(例えば歴史的な文脈がことなるとか、あるいは対象となる社会集団の属性がことなるとか)。そこで「このデータは使い物にならない」という判断を下すのではなく、むしろそれらの従来の先行研究や文献の中で、まだ検証されていない未知のテーマがそこから浮かび挙がった瞬間だと捉えることができます。それこそ自分自身の論文で追求し、再概念化あるいは再理論化しなければならないテーマなのです。先行研究や分遣し資料などのデータをこのようなスタイルでパラフレージングすることもまた、自身の論文のテーマの独創性と重要性を読み手に幾度も確認させるための重要な作業です。

質的情報の分析でもパラフレージングは有効である

 論文では、インタビューの記録、ネットや雑誌の記事、あるいは統計データなど、多種多様なデータを分析することがあります。この分析の作業こそが、上記で挙げたパラフレージングと同様の作業となります。その作業を二段階に分けることができます。

データの記述と説明

 まずはデータの記述です。収集したデータの重要な箇所を文中で正確に引用する作業になります。次の段階では、引用したデータがこの論文の研究課題としてどのような意味を持つかを読者に説明しなければなりません。これがデータの「分析」です。分析の作業は、研究の論点に沿ってデータを「翻訳」する作業と言い換えることもできます。データの分析において、そこで取り扱われる情報がこの研究において何を明らかにするのかという役割を説明すること、いわばパラフレージングの作業により、引用されたデータが本論においてどのような意義を示すのかが、読者に明らかになります。言い換えるなら、こうしたパラフレージングによるデータの分析を介し、読み手に対し、文中で取り上げたデータをどのように理解したらいいかを示す必要があるのです。

データの分析に客観性を与える工夫

 このようなデータの分析作業あるいは「翻訳」作業はどうしても主観的な側面が強くなります。それを客観的な視点から補強するため、自身の分析視点と類似する、あるいはそれを支持していると思われる、関連する先行研究や文献を引用するという補強手段も多用されます。この方法も覚えておくと良いでしょう。結果として、その「翻訳」という分析作業の妥当性が、論文の主たるテーマを客観的に支えうるかという観点から、読み手によって最終的に判断されることになります。

参考文献の編集について

参考文献でよく見られる修正事項について
詳細は社会学評論スタイルガイド(引用)を参照して下さい。

・文献の冒頭には中点(・)を打たない。

・句読点ではなく、全角のカンマとピリオドを用いる。

・文献の書誌情報が完結したら、最後に全角ピリオドを打つ。






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