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映画『雪の轍』

昨日、近所の映画館のレイトショーで、映画『雪の轍』を観た。3時間19分という超大作で、カンヌでパルムドールを受賞しているらしい。
http://eiga.com/movie/80441/


観るのに骨が折れそうなこの映画を、観に行こうと思ったのは去年旅行したトルコ・カッパドキアが舞台だったから。
しかし、この映画には美しい気球だらけの空や、観る者の心を奪う奇岩群は出てこない。
ただただ、雪が滔々と降り、世界から隔絶されたような洞窟ホテルを舞台に、登場人物が卑小なごく個人的な問題を、概念的にぶつけ合う情景が続く。

あらすじ(公式サイトから)ーートルコ・カッパドキア。
元舞台俳優のアイドゥンは親から莫大な資産を受け継ぎ、ホテルのオーナーとして経済的には何の不自由もなく暮らしていた。しかし、若くて美しい妻のニハルとはうまくいかず、夫を捨てて身を寄せている妹のネジラともぎくしゃくしている。さらに家を貸していた一家からは、思わぬことで恨みを買ってしまう。(引用おわり)

主人公のアイドゥンも、歳離れた若き妻ニハルも、アイドゥンの妹ネジラも、お互いの会話はすれ違い、それぞれの孤独を深めていく。購入した馬を逃したり、貧しい一家に多額の施しをしようとしてみたり、カッパドキアを発ち農場に身を寄せたり、それぞれは少しの決断をしてみるが、結局は変わらない。

観ている間中、登場人物たちが放つ言葉に、どんどん自分が傷ついていくのがわかる。パルムドール受賞時の評価に、観たものは何らかの形で必ず影響を受ける、というのがあったが、正に。と思う。
チェーホフを原案としているだけあって、何かが起こっても、何も起こらない。わかりやすいカタルシスはない。
それだけに、影響が大きい映画だった。

ただし、日曜の夜に観るには不適な映画だったよう。秋の夜長に、また自分が揺さぶられてしまう映画を発見してしまった。


ちなみに、映画の中で日本人旅行者の宿泊者が出てくるんだけど、これが本当に素人の日本人が起用されていたみたいで、妙にリアルだった。自分もあんな辿々しい英語で必死に宿の人と会話していたんだろうなぁと思って、気恥ずかしくなってしまった。
http://eiga.com/news/20150621/7/

この映画の救いは、書きはじめることだと思う。

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