吉田道場に通っていた話

今から10年ほど前、吉田道場に通っていました。吉田道場とは柔道金メダリストの吉田秀彦選手が作った柔道場です。

僕が通い始めた理由は、事務所の先輩であるはなわさんに誘われたから。

当時はなわさんは、長男の元ちゃんを道場に入門させた頃で、息子とともにご自身も柔道を稽古しようと思ったそうです。せっかく入門するのだからと、同じ事務所にいる柔道経験者のハマカーンの二人が誘われました。

高校、大学と柔道部だった僕は、久しぶりに柔道の稽古をしよう!と密かに燃えていました。相方もおそらく稽古を楽しんでいたと思います。

結局僕は、入門して半年程度で前十字靭帯を断裂するという大怪我をして入院することになるのですけど。それはまた別の機会に。

ちなみに、はなわさんの息子さんは後に佐賀県のチャンピオンになるのですが、当時はまだ小学生で、だいたい僕と互角ぐらいでした。なので僕は佐賀チャンピオンと互角の実力者でもあります。

吉田道場は、社会人や学生さんも通っていて、何度か稽古するうちに顔見知りになります。高校の部活とはちがって、みんな大人の趣味として稽古に通っているので、道場の先生方とも仲良くなります。サラリーマンの道場生や、先生とも飲みに行くようになったりしました。膝さえ大怪我しなければ、道場に通うのはすごくいい趣味だと思いっています。いま考えてみたら、忙しいはなわさんは、ほとんど稽古に来ていなかった気がしますが。

そんな雰囲気なので、学生さんともある程度仲良くなります。高校までバリバリやっていたけど大学では部活に入りたくないという学生くんや、大学から柔道を始めたという青学の大学生もいました。その青学生は柔道始めたてなので、技術はあまりなかったのですが、基礎体力がすごいので、やはり僕と互角くらいでした。

ある日しっかりと稽古をした帰り、その青学生と同じ方面だったので、途中まで同じ電車に乗りお喋りしていました。そしてこんなことを聞かれました。

「神田さん、なんで吉田道場に通ってるんですか?」

たしかに大人になってまで柔道続けているって、柔道をやってこなかった人にとっては変なんだろうな。とか思いながら

「はなわさんが通ってるからね」

と。正直にきっかけを話しました。

するとその青学生が苦笑いしながら言ってきました。

「えー?はなわさんが通ってるから入門したんすか?めっちゃミーハーじゃないすかー!」

ん?

「サインとかもらえました?」

んん?


あ!

めちゃくちゃ痛いファンだと思われてる!大ファンすぎて同じ道場に通ってるって思われてる!

僕もお笑い芸人やってるってことを知られていない!

たしかに、オンエアバトルくらいしかテレビに出たことなかったし。

でも、これは面白いエピソードかも!と思って、その場でわざわざ「僕、芸人やってます。はなわさんと同じ事務所なんです」とは言わないでおいたんです。なにかもっとエピソードできるかなと。我ながら、実に芸人的な受け身の取り方だと思いました。どこかのタイミングで、あっこの人も芸人やってるんだ!って青学生に気づいてもらえたら、きっと面白いぞー、と。

しかしその後すぐ、右膝を壊し入院することになり、道場に行けなくなり、そのまま辞めることになりました。

たぶんその青学生のなかでは今でも

「吉田道場に、ヤバイはなわファンいたなー」

という認識だと思います。


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