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53「謎のバレンタインでつかまえて」

ティーンズハート「つかまえてシリーズ」の感想をだらだらと綴ります。


 そこは、ほんとうに素敵な学園だった。
 美しい校舎。広々とした敷地。生徒たちの明るい声がこだまし、色とりどりのバラがいたるところで咲き乱れている――。
 あたし、工藤由香。学園理事長の依頼を受けて、最近、学園のまわりに出没するという変質者らしい男を追跡することなったの。
 ところが、潜入したあたしたちを待っていたのは、このところ学園内で、悪質な盗難が続いているという、いやな事実だった……。
 
秋野ひとみ『謎のバレンタインでつかまえて』1999年

わたしは中学のころに、つかまえてシリーズを卒業しました。
卒業というか、読みたくなくなってしまった。しんどくて。
理由は以下。

①菊地薫の中期以降の扱いに耐えられなくなった。(探偵のメインメンバーになることで、由香を静かに愛しながら見守る武士、みたいな。酷。酷過ぎる。許せん)
②小林クンがどんどん端役に(許せん)
③由香の血液型はOだったのに、突然Aになった。(しょーもない理由)
④圭二郎さんのキャラに違和感


まぁ、圭二郎さんはなんというか完全無欠の美男子で、大人だし、優しいし、スカしたセリフも似合っちゃうんだけれども、なんか掴みどころのないアンバランスさみたいのもあって、存在自体が非現実的というか。
それがだんだんと(由香との関係が明確なものになったあたりから)生身の男感が出てきた気がしてきて、違和感……みたいな。それだけ圭二郎さんには夢が詰まってたってことなのかな。
圭二郎さんらしい台詞回しも、「なに言ってるんだろう……。この人」みたいな白けた気持ちになっちゃって。

そんな圭二郎さんに対して決定的に「もうだめだ」と感じたのが、この「謎のバレンタインでつかまえて」でした。
タイトルでは思い出せなかったけど、終盤で思い出した。
約20年ぶりに読んでみて、当時の拒絶反応はそこまでなかったし、事件の内容もすごくおもしろかったな。
ただ、明くんがあまりにも健気で、読んでるこちらとしては、やるせなかった。
由香は振り向かないから、やめとけ、つらい思いするだけだぞって言った。心のなかで。


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