参加リポート JBUG Autumn 2021
2021年10月7日(木)、JBUG Autumn 2021が開催されました。プロジェクトマネジメントの知見がギュッと詰まったイベント についてリポートします。
オープニング
JBUG大阪代表のこまみささんからJBUGについての紹介がありました。
・JBUG(Japan Backlog User Group)は、プロジェクト管理ツール『Backlog』を通じて、Backlog の有効な使い方にとどまらず、プロジェクトマネジメント全体の知見を深めていくコミュニティだということ。
・北は札幌、南は沖縄まで、全国各地に拠点があり、各地で活動していること。
・今回のようなイベントを開催していること。
です。
そして、今回のイベントでは、
〜JBUGのプロマネに聞いてみたい、あんなことやこんなこと〜
ということで、参加者からの質問に3人のプロマネのプロが答えるパネルセッションがあります。その前に、2つのセッションと3本のLTの内容を紹介します。
セッション1 私がマネージャーになって1番最初にやったこと
スピーカー:株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 松井 勇樹さん
概要:初めてプロジェクトマネージャーに就いた松井さん、早速大問題に直面します。そこをどう乗り切ったか、ストーリーを紹介します。
きっかけ:
2020年の出来事です。初めて松井さんがプロマネに携わった業務は、
1月着手
4月ユーザーレビュー
のプロダクトでした。
そして、問題は3月に発生します。
担当Aさんに進捗を確認したところ、非常に捗々しくないという報告が.....。
他にもタスク漏れが発覚。さあ、時間が無い。どうしよう。
打った対策:
そこで、松井さんはBacklogを導入しました。
Backlogにあらゆるタスクを登録し、日々の夕礼で進捗を確認することで、3ヶ月の目標を達成して、リリースにこぎ着けました。
松井さんの感想:
シンプルでわかりやすいBacklogをスモールスタートで導入することで、全員参加型のプロジェクト推進ができた。
良好な人間関係(心理的安全性)を構築し、メンバーにメリットを感じてもらえるようにBacklogを使うことができた。
MITのダニエル・キム教授が提唱する『組織の成功循環モデル』のGOODサイクルを実現できた。
余談:
松井さんの会社の親会社、株式会社スノーピークは広大なキャンプ場の中にオフィスがあるような雰囲気でした。ワーケーションにピッタリと思いました。
セッション2 合言葉は「Backlog感出しますか」
スピーカー:株式会社ジーティーアイ 佐藤 毅さん
概要:要員2,3名の小規模プロジェクトにおいてもBacklogを使うとカッコよく、スピーディーにプロジェクトを推進できる。
小規模プロジェクトでありがちな問題:
「チャットツールとGitHubだけでなんとかなるよね」と思っていると、「行った言わない」問題や担当のなすりあいが発生❗
そこで、Backlogを導入❗
「Backlog感をだす」とは、「BacklogをBacklog然とした使い方をするだけ❗」 By 佐藤さん
では、佐藤さんの「Backlog感をだす」を見ていきましょう。
課題を細かく登録する:
親子課題の機能を使って、細かい粒度でタスクを登録します。
1ページ1課題、1機能1課題、1改修1課題のレベルです。
担当者を変えて確認する:
このタスクは潰したので確認してね!とバトンを渡す意味で担当者を変更します!
→お互いに責任感が芽生える副次効果も。
ステータスをどんどん進める:
タスクが進行したら、ステータスを変更していきます。
カンバンボード上でステータスを変更して気分を盛り上げていきます!
この繰り返しでBacklog感が洗練され円滑なプロジェクトマネージメントが実現されます。
JBUGに参加しよう:
佐藤さんは、JBUGに参加し、Backlogの様々なカッコいい使い方を知り、取り込むことで、さらにプロジェクトマネジメントが洗練されるというコトバでセッションを締めています。
LT1 グラレコで猛攻撃に遭った後、プロマネとデザイナーに救われた話
スピーカー:安積 津友香さん
ストーリー:
安積さんは、グラレコを得意とし、Backlog World 2021 では、審査委員長を受賞する実力派です。
しかし、事件は起こります。社内ミーティングの議事録をグラレコで作成しました。ところがそれを見たリーダーから、
「何でテキストで書かないの?」
「こんなものは認めない」
と猛攻撃を受けてしまったのです。
そこで、安積さんは、社内でグラレコをすることを封印します。
でも、グラレコしたい気持ちは強くなる一方、社外のイベントではグラレコを使った記録を作り、SNSにアップしていきます。
それが逆転のきっかけです。
SNSにアップしたグラレコが偶然、同じ会社のプロマネの目にとまり、
「これいいじゃん。」と褒められます。
また、社内のデザイナーさんたちからの依頼でZoomを活用したグラレコ勉強会を開催することとなりました。
こうして自信を取り戻した安積さんは、『人と人を繋ぐグラレコ』をテーマに活動を続けています。
この JBUG Autumn 2021をまとめた安積さんのグラレコです。
LT2 WikiとFigmaを活用したら全員ちょっと幸せになった話
スピーカー:株式会社デジタルキューブ 恩田 淳子さん
あるあるな話:
要件定義、設計、開発、.... 工程を進めている内に、
・発注者からの資料が...来ない・不足している・多すぎる
・要件定義の中で決まったこと・決まってないことがわからない
・この仕様、これで正しいの?
・情報の発掘に時間がかかって作業が進まない
と混乱状態に陥ります。
この問題を解決するため、恩田さんはこんなアプローチをしました。
WikiとFigmaで一元管理:
プロジェクトに関わる主要な情報全てを、BacklogのWikiで一元管理します。
ビジュアルに関わる要件は、Figmaで一元管理します。
メンバーに当事者意識を持ってもらうため、事前に合宿を行いました。
工程が移る段階で『申し送りミーティング』を開催しました。
成果:
「各自やる」から「チームでやる」マインドへ変化しました。
「情報どこ?」が大幅に減りました。
社内の検品工数、約20%減となり、+αのテストが可能になりました。
結果、メンバーがほんのちょっとかもしれませんが、ハッピーになったお話しでした。
LT3 システムエンジニアとして過ごした2年間の振り返り
スピーカー:Kazuhiro.Yoshida さん
ストーリー:
Yoshidaさんは、非IT業界からIT業界に移り、2年が経過した方です。
業務知識の不足などいろいろある中で、Backlogを管理の基本として、エンジニアとして活動しているというお話しでした。
パネルセッション 〜JBUGのプロマネに聞いてみたい、あんなことやこんなこと〜
JBUG広島代表のナカミチさんをモデレーターとして、3人のベテランプロジェクトマネージャー
広島修道大学 佐藤 達男先生
ARアドバンストテクノロジ株式会社 中野 康雄さん
株式会社日本経済新聞社 西馬 一郎さん
が参加者からの質問に答えるセッションです。
全部で6つの質問に回答しました。
質問1:今と昔で「プロジェクトマネージャ、変わったなー」と思うことは何ですか?
西馬さん:
表計算ソフトでの線表管理に比べて、管理ツールが発展した。その結果、見える化が実現された。
また、Typetalkのようなコミュニケーションツールも発展した。
特にこの10年、自社開発が増えることにより、プロダクトマネジメントにシフトする傾向が強くなっている。
中野さん:
昔は偉い立場だった。しかし、現代はルールや立場で人を縛ることができなくなっている。これも民主化だと思う。
一緒にアジャストしてゴールに到達するのが、現代のプロジェクトマネージャ。新しい課題を見いだすのも責務だと思う。
佐藤先生:
メンバーの人権を尊重する時代になったと思う。「四の五の言わずにやれ!」はNG。
長くハードなプロジェクトの場合、効率良くプレッシャーを与え、どれだけメンバーを働きやすくするかも大事だと思う。
「喝を入れる」にしても、背景を意識させる、自覚させることが大事。時代に合わせたマネジメントが必要だと思う。
中野さん:
メンバーのパフォーマンスを最大限引き出すことは、今も変わらないと思う。
しかし、「わかっているだろう」コミュニケーションはNGだと思う。
コミュニケーションに対しての気遣い、丁寧さが必要だと思う。
西馬さん:
リモートワークが進み、コミュニケーションも難しくなっている。
1on1 も取り入れているが、オンライン・オフラインに関わらず、その場その場でより良いツールを模索している。
質問2:プロジェクトマネージャー45歳定年説が言われています。45歳はターニングポイントでしょうか?適正年齢はあるでしょうか?
佐藤先生:
多様性を横軸、年齢を縦軸とした場合、横軸の多様性が強いと思う。
情熱があれば、年齢は関係ない。ただし、長くやっていくには自分のPMスタイルをアップデートしていく必要はあると思う。
中野さん:
老害は退場すべき!!
経験値による多様性がものをいうと思う。
プロダクトマネジメントにシフトする傾向が強いと思う。
「昔取った杵柄」で勝負する人はNG。
常に研鑽を積むことが大事。
モチベーションのない人は退場すべき!!
西馬さん:
学び続けること・変化への対応・柔軟性が大事だと思う。
『勘と経験』も重要だと思う。
質問3:メンバーのレベルを上げながらプロジェクトを完遂するにはどうすればよいでしょうか?
中野さん:
人によって、接し方を変えてみる。(人によって、指示を抽象的にしたり、具体的にする。)
コミュニケーションは均一にしない。
佐藤先生:
コミュニケーションは一律ではない。組み合わせて、目標達成を目指そう!
西馬さん:
コミュニケーションにメリハリをつけるのが大事!
質問4:雰囲気が殺伐としたときどうすればよいでしょうか?
中野さん:
どのフェーズでも『ユーモア』は大事だと思う。
『いじられ力』を持つことが大事!!
西馬さん:
ちょっとしたことで場を和ませる。
コロナ禍の今、チャットにコメントをしたり、コメントに絵文字を多めにするなど工夫している。
佐藤先生:
ユーモア力は大事だと思う。
しかし、予兆で問題を潰すのがプロマネの仕事である。
問題は人が原因であることが多い。
そこで、キツい対応をする必要もある。
大事なことは、自分の目で見て判断することである。
質問5:管理されたくない・可視化したくないというメンバーがいます。どうすればよいでしょうか?
佐藤先生:
他のプロジェクトに移ってもらうか、アウトプットを出してくれればいいと割り切るかのどちらか。
中野さん:
本質的な問題として、別の事象にアプローチして、個別に状況を把握する。
西馬さん:
成果で判断する。
質問6:進捗把握のための定例ミーティングはどのくらいの頻度で行えばよいでしょうか?
中野さん:
基本は週単位。メンバーやプロジェクトの状況次第では頻度を詰める。
西馬さん:
プロジェクトの規模、ゴールまでの期間、進捗の状況に応じて決める。
頻度に固執はしない。
佐藤先生:
プロジェクトマネージャーが聞きたいタイミング、状況次第で実施する。
自分の責任でさばける量に気をつけて開催する。
クロージング
こまみささんより。
これからも、JBUGはイベントを開催していくので、connpassのJBUGページ、FacebookのJBUGページをチェックして欲しい。
川越在住。映画と音楽、お酒とラーメン好きのソフトウェアエンジニアです。 ビールは、ハートランド(KIRIN)。 🍜は、いろいろ。 好きな音楽は、クラシックギターとピアノ。好きなバンドは、ミスチル。好きなマンガは、「3月のライオン」。