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色を創れ

学習院のメッシ角信弥から打線を繋ぎます、檀上新太です。


彼のブログの中にサッカー部に入部するきっかけを与えたくれたのが私だと書いてありましたが、残念ながら当の本人は全く記憶にございません。しかしながら、彼がサッカー部に入部してよかったと思ってくれているならそれはそれで幸いです。


さて、ついに私にも引退ブログを書く順番が回ってきました。16年間のサッカー人生終了のホイッスルが近づいていることを身に沁みて感じます。辞めるタイミングなんていくらでもあったはずなのに、どこにいってもサッカーを始めていました。それだけサッカーは自分にとって魅力的だったのかもしれません。16年間のことをすべて書こうとすると多すぎて、このブログには書ききれそうにもありません。そのため自分にとって最も刺激的だった最後の1年について書きたいと思います。私は卒論を書かないため、このブログが卒論だという強い気持ちを持って書きます。よろしくお願いします。


2023年。私にとっては勝負の年だった。1年2か月という長いリハビリ期間を乗り越えたこと、そして学生サッカーラスト1年だということを考えたらこの1年にかける想いは人一倍強かったはず。長年の目標であった「リーグ戦出場」を必ず達成する。強い気持ちを持って今シーズンに臨んだ。ところがシーズンが始まり、ふたを開けてみたら膝に水が溜まっては離脱の繰り返し。これが5月ぐらいまで続いた。自分の努力じゃどうしようもできない状態に歯がゆさを感じた。そしてこの時点でサッカーに対する熱い想いが冷めてしまった。いわゆる燃え尽き症候群的な感じで。自分がリーグ戦に出場する未来が全く見えなかった。自分の今シーズンの目標が悪い意味で早々に終了してしまったと感じた。「怪我がなければ」というフレーズを今年何度も聞いたが、悔しさがこみ上げてくるとともに仕方がないよなと納得してしまう自分もいた。


そんな自分にやりがいを与えてくれていたのが戦術の仕事だった。大学2年時に平久さんがBチームを見てくれたおかげでサッカーが本当に楽しかった。共有された原則を基に選手が生き生きとプレーしていた。怪我で試合には出られなかったけど、外から見ているだけで心が熱くなった。そして密かに憧れを抱き、いつか自分も指導者の立場としてチームに貢献してみたいなと思っていた。幸にも不幸にも、Bチームの戦術が自分1人だったのでこれはチャンスだと思った。練習メニューやチームの戦術、そして試合のメンバー決めを担当し、実質的なBチームの選手兼監督の立場になった。これまでの指導者経験はゼロで不安もあったが、チームを1から作れるという楽しみな気持ちのほうが強かった。


しかしながら、そう簡単にうまくいくはずもなかった。練習の強度が上がらない、自分が伝えたい練習の意図が伝わらない、選手のモチベーションが上がらない。そして雰囲気を締めらなければならないところで締められない。自分のリーダー経験のなさがもろに出てしまったとともにチームをまとめることの難しさや平久さんの凄さを思い知らされた。少しでも改善しようと、練習後は同期や後輩に毎回の練習の感想や改善点を聞きにいっていた気がする。さらには、You tubeやXをあさりプロの練習や監督のドキュメンタリーを見たり学びも欠かさなかった。ただ、結局うまくまとめられるまで半年以上はかかった。だからこそ来シーズン始まった時に同じ苦労を味わってほしくないと思ったから6月あたりで3年生に引き継いだ。来年のBチーム頼んだよ。


4月からBチームの公式戦であるサタデーリーグが始まった。私はBチームの人たちに常々サタデー優勝という目標を語っていたが、もう1つ目的があった。それは「色を創る」こと。このように思ったきっかけは2つあった。1つめは、学生主体であるがゆえに毎年やるサッカーが変わってしまうこと。これは自分の中でずっと問題意識としてあった。サッカーを1から作るというのは至難の業であると思う。ましてやそれを1年間で完成させるなんて無茶な話だ。ここ最近毎回Jリーグで首位争いしている横浜Fマリノスですら、アンジェ・ポステコグルー監督1年目は残留争いをしていた。プロのサッカークラブは資金で選手を集められるかもしれないが、学習院サッカー部は資金どころかスポーツ推薦すらない。それは1年間でサッカーの型を完成させろなんて到底無理な話だと思う。

2つめは、中学のクラブチームの同期と一緒に飯に行った時の話。サッカーの話で盛り上がっていたときに、ふいに「学習院ってどういうサッカーするの?」と聞かれた。答えられなかった。特徴が思い浮かばない。ポゼッションでもなければ蹴るサッカーでもない。丁寧にビルドアップするチームでもなければカウンターが鋭いチームでもない。まさしく色がないと感じた。自分が対戦して厄介だなと思うチームは特徴がある。例えば東大。3-1-4-2のシステムでFW2枚のプレスを3バックで剥がしながら、幅と深さをうまく使うポゼッションサッカー。多くの人のブログで自分の色を大事にしなさいと書かれていたが、私はチームの色も必要だと感じていた。その色を完成させるためには、まずは土台が必要でそこから積み重ねが始まる。今年1年はサタデーで本気の勝負をやりながら、未来に向けての土台作りをすると心に誓った。


サタデー初戦。相手は先ほど厄介なチームとしてあげた東大だった。攻撃は可変の3-4-3のポゼッション、守備は4-4-2の形を基本的な型にした(本気で勝ちたいがために一人で敵チーム分析して、相手のビルドアップの対策を考えていたのはいい思い出)。攻撃面はあまりうまくいかなかったけど、守備は分析した甲斐もあったのか完璧にはまり2-0で見事に勝利した。素直にうれしかった。なにしろ怪我でしばらく本気の試合をしていなかったうえにみんなの喜んでいる表情をみたら嬉しさが倍増した。ただ練習でやってきたことがすべて出せていたわけではなく、嬉しかったけど満足はしていなかった。その後の横国、一橋と順調に勝ち点を積み上げ、迎えた大東戦。前半1点先制したもののそこからは圧倒され1-2敗北。後半はほとんど相手のワンサイドゲームだった。完敗だった。みんなの悔しい表情をみたらこの状況を打破できなくて申し訳ないと思ったし、今まで積み重ねたものがすべて否定されたような気持ちになった。さらには試合後に同期の本川にこのサッカーじゃ勝てないと言われたときは相当メンタルにきた。しかし、ここでやめてしまったらいつもと同じ流れになると思った。良い時もあれば悪い時もあるのがチームだと割り切れた。


1か月後の立教戦。継続してきた成果がやっと現れてきた。特に前半45分の試合内容はこれまでで1番良かったと思うしみんなもその実感があったと思う。相手のプレスをうまく剥がしながら前進し、幅と深さをうまく使いながらシュートまで持っていく。内容は完璧だった。だけどあと一歩のところで点が決まらず、終盤に失点し0-1敗戦。立教相手に完璧な試合運びで勝てたなと思うからこそかなり落ち込んだ。そしてこの試合を機に主導権を3年生に渡し、自分はアドバイスをする立場になった。最後勝てなかったけど、いい手ごたえを持って渡すことが出来てよかったと思う。


ここで自分のミッションであった土台を作るということができたかというところに話を戻す。残念ながら答えはNOだと思う。確かに結果を見れば、いい試合はたくさんあった。この間の東経戦とかまさしくそう。しかしながら、理想の内容と結果どちらも伴っている試合は数少ないと思うしこのチームのポテンシャルを考えたらもっと完成度を高められたと思う。自分は全力を尽くしたつもりだったが何かが足りなかった。それは自分にはわからない。試合に勝てばいい、結果が全ていう人が一定数いるのは理解できる。サッカーはスコアを争うスポーツだから。しかし、その理論は危険だと思う。過程があればここをこうすればいいよねって修正できるけど、結果が全てだと負けた時に負のスパイラルに陥る。なぜならば負けた原因がわからないから。そして気持ち的にもしんどくなり充実感を失う。fifty-fiftyの勝負を挑むのではなく、過程を通してできるだけ勝率を100%に近づける。その中で修正を繰り返していく。これがチーム作りにおいて大切だということをこの1年間学んだ。だからこそ来年戦術をやる人には結果もそうだけど過程にはよりこだわってほしい。



Bチームのみんなへ

まずは1年間本当にありがとう。自分がリーダーとして不甲斐ないがゆえに迷惑をたくさんかけたと思う。そんな中でも、どんな時だって一生懸命自分の話を聞いてくれたし、わからないところがあれば聞きにきてくれたりしてくれた。選手の中にはどうしたらサタデー出れますかとか聞いてくれる選手もいた。そういう姿勢がほんとに嬉しかった。もちろん後悔はある。チーム戦術にこだわりすぎて個人の技術の向上にフォーカスを置いてあげられなかった。本来のBチームの目的はAチームに選手をあげること。それをあまり達成できなかったこと、そして何よりサタデーのトーナメントに連れていってあげられなかったことを本当に申し訳なく思う。今年サタデー本気で戦うきっかけをくれたのは、先輩が緊張感あるあの景色を見せてくれたから。自分もBのみんなと一緒に行きたかった。あと一歩でそれが叶わなかったのが本当に残念で仕方ない。だからこそ来年も本気でサタデー戦ってほしいし、来年こそは絶対にトーナメントに行ってほしい。君たちと一緒にサッカーできたこと、そして一緒に成長できたことが何よりも楽しかったし毎日が充実していた。そして願いが3つあります。1つ目。今年やってきたことを継続し、結果の過程にこだわってほしいということ。戦術面もそうだし、前向きサポートとか多くのことをやってきたと思う。これを継続していく中で、精度の向上やさらなる戦術や原則を加えてほしい。継続は力なり。今年よりも必ず良くなると信じています。2つ目。サッカーを楽しむ姿勢を忘れないでほしいということ。サッカーができない苦しみを自分が1番味わってきたからこそサッカーを心の底から楽しんでほしい。サッカーできない以上に苦しいことはないから。3つ目。人を思いやり、どんな時も前向きでいてほしい。来年も必ずうまくいかない時があると思う。そういったときに罵詈雑言を浴びせあうのではなく、しっかり話し合うこと。(今年はよくできていたから来年も続けてね)。どんなときも決して下を向かないこと。互いを尊重できる関係になってください。


最後になりますが16年間自分のサッカー人生に関わってくれた方々全員に感謝します。ありがとうございました。


次のバッターは佐々木ゆうり君です。彼は私たちとは違って審判という立場からブログを書いてくれます。先日はアミノの決勝で4審を務めるほどBigな男になっています。そんな彼がどんなブログを書いてくれるのか非常に楽しみです。乞うご期待。

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