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ジェネリック~その3・DDS~(3/3)

別の記事「ジェネリック~その2・同等性~」で述べた「先発医薬品と後発医薬品の差」および「後発医薬品メーカーが違うことによる後発医薬品どうしの差」を理解するために、まずは有効成分のみ含んでいるようにしか見えない錠剤ですが、じつは大きく分類して2つの成分からできていることを知ってください。

有効成分(活性成分)・・・薬効のある化合物
不活性成分・・・賦形剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、などの添加剤、これによって有効成分を標的とする体内の特定の部位に送り届ける

特許期間が切れて、特許情報が開示された元の医薬品が先発医薬品です。
これを再現する技術水準を後発医薬品メーカーは保有していることは最低限の条件ですが、特許が開示されていない部分である添加剤つまり不活性成分は後発医薬品メーカー独自の技術を用いることになります。
 
ここで突然、人工衛星打ち上げの話をします。

人工衛星打ち上げ技術とは「ロケット等の地球重力圏脱出可能な推進システムを用いて、地球周回軌道に地上から人工衛星を送り届ける技術」ですが、これは「薬物送達技術:Drug Delivery System (DDS)」と呼ばれる「薬物を体内の特定の部位に送り届ける技術」とほぼ同じ文脈なのです。

有効成分または活性成分・・・人工衛星本体
不活性成分・・・ロケットなどの推進装置

ロケットなどの推進装置を不活性成分に例え、人工衛星本体を有効成分または活性成分に例えれば、優秀なロケットがあってはじめて人工衛星が打ち上げが可能となること説明したいのです。

このロケットに相当する後発医薬品メーカーごとに違う不活性成分についての独自技術に違いがあるという事実で「先発医薬品と後発医薬品の差」および「後発医薬品メーカーが違うことによる後発医薬品どうしの差」そして「生物学的同等性試験の許容範囲が80%~125%であること」も説明されます。

引用)日本宇宙航空研究開発機構ホームページ画像、ソユーズ型ロケット(ロシア) 
引用)日本宇宙航空研究開発機構ホームページ画像、H2型ロケット(国産)

ソユーズで打ち上げるのか、H2で打ち上げるのか、で人工衛星打ち上げの成功率が違ってくるのと同じ図式、と理解してください。

人工衛星そのものも高度な技術の集積物ですが、人工衛星を地球周回軌道上に送り届けるロケットも負けず劣らずの技術の集積物であることは言うまでもありません。
このように例えると、有効成分もしくは薬効成分を確実に送り届ける不活性成分も重要であることに納得していただけると思います。

後半では不活性成分をさらに分類して解説します。

不活性成分

  1. 賦形剤、充填剤、増量剤

  2. 結合剤、安定剤

  3. 崩壊剤

  4. コーティング剤

  5. 香料

  6. 着色剤

賦形剤:有効成分だけでは医薬品の大きさが小さ過ぎて取り扱いが不便な場合、扱いやすい大きさにするための増量を目的として製剤に加えられる不活性な添加剤です、充填剤や増量剤とも呼ばれます。
結合剤:製造から使用までの期間に錠剤が砕けないようにするため、錠剤の強度を増す目的で製剤に加えられる不活性な添加剤です、安定剤とも呼ばれます。
崩壊剤:医薬品は賦形剤や結合剤に求められる強度だけではなく、胃や腸に到達したら適切に溶けなくてはいけません、適切な崩壊に誘導することを目的として製剤に加えられる不活性な添加剤です、口腔内で崩壊する錠剤もあります。
コーティング剤:胃や腸に到達するまでに崩壊が始まらないように製剤を層状に覆うように加えられる不活性な添加剤です。
香料:飲みやすい味や香りにする目的で加えられる不活性な添加剤です。
着色剤:他医薬品との誤認を視覚的に回避する目的で加えられる不活性な添加剤です。
 
有効成分だけでは医薬品は有効に機能しないことがわかっていただけたと思います、医薬品にとって不活性成分を製造する技術も非常に大切なのです。


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