ロボトリック制作備忘録 その1
失われてしまった2020年ゲームマーケット春。このゲームマーケットにThe Game Galleryの名前で初めてゲームを出すはずだった「ロボトリック」を作りました。
同じような作り方をする方がいるかどうか分かりませんが、その時の記録を残しておきます。
プロジェクト開始
このロボトリックは、どみっちさんが発案された創作ゲームです。どみっちさんがこのゲームを発案されて暫くした時に、プレイさせていただいたのが2018年の後半だったと思います。
オートマタと対戦するというソロプレイ主体ですがブームが始まっていたころに、トリックテイキングで自動的にカードをプレイするロボットがいて、他プレイヤーと戦いつつメインターゲットがオートマタというのが新鮮です。
しかもオートマタの手札は全て見えているのです(人間3人とオートマタ一人ですから実質使うカードの50%は知ってる状態なわけです)。非常に感銘を受けた記憶があります。
プレイ後も、このゲームが気になっていた私は、どみっちさんと相談して、専用にデザインされたカードでプレイできるバージョンを作らせていただくことになりました。2019年のことです。
つまり、私(HAL99)は、ゲームシステムを作るのではなく予算・制作・進行を管理する小規模プロジェクトですがプロデューサーというポジションです(ルール校正や作成先の手配などももちろんします)。
ここで目標にしたのは、「私がアートワークが入ったバージョンのロボトリックが1個欲しい」と「コストは私が全て負担する」の2つ。
さすがに1個作るわけにはいかないのでゲームマーケットで配布するのを視野に入れていましたが、私が1個欲しいのが根本的な目的ですから原価は完全に無視して、手にとっていただける価格範囲にすればいいという想定にしています(最終的な原価率は、私の人件費を0として、ぎりぎり100%を割り込む程度で終わっています)。
私はゲームを制作したことがありませんでしたので、新しいことへの挑戦によって、経験と知識が得られるだろうというのがこのプロジェクトです。
ロボトリック製造開始前まで
ロボトリックを作ることになった私は、どみっちさんからプレイ用のキットを2セットいただきました。
当時のロボトリックは、オートマタが処理を決めるためのロジックカードの種類がたくさんあり、面白さが全てのケースで担保されているわけではなさそうだという懸念があったのです。同時に絞らないと製作コストが高くなりそうだという現実的な問題もあります。
2019年は幸いにして全国に移動する機会があり、常にロボトリックのテストキットを持ち歩いてあちこちの方にテストプレイしていただいています(みなさま、その節はありがとうございます)。
その都度このロジックカードは単調だったな、これは盛り上がったな、これとこれはプレイ感が似てるな、というものを記録したのです。
知らない方とのテストプレイは勇気がいるものですが、このプロジェクトは、幸運でした。
そもそも、このゲームが面白いことは私はすでに知っているので、ある程度自信を持ってどこでも取り出せてプレイしてもらえたことと、幸いにして様々な場所にお伺いしても私のことをご存知の方がいらしていただいて積極的にご協力いただけたことがとてもありがたかったです。
また、ロジックカードのパターンを調べて、ロボットの行動がアクティブ(積極的に勝ちに行く)と非アクティブ(消極的に負けるカードを出す)の割合がどの程度混ざっていると面白いかの調整をしています。
ロボトリックは、1ハンドプレイが終了する毎に新しいロジックカードを引くことから、ハンド毎に「ロボットの動きが変わったな」という現象がどのぐらい発生すると面白いのかなと思って探っていたのです。
もう1つテストプレイしながら気がついたのは、各プレイヤーは4トリックまでプラス点になるということでした。これだとほぼ全員がプラス点になり過剰トリックを取ってマイナスになるプレイヤーが出る率が少なかったのです。
そこでハードモード(3トリックまでしかプラス点にならない)があると面白そうだという発案をして、ハードモードのテストプレイも並行して開始しました。
ハードモードにすると必ずトリックが余る(3人で9トリックしかプラスにならないため)ことから、いつトリックを取るのか、あえて負けたほうが良いのかがより鮮明になり、私自身を含めて楽しめる内容という感触を得て、どみっちさんに提案しています。
当初は4トリック取るバージョンがノーマルルールで、3トリックまでのものはハードモードとしてオプション化される予定でした。
ですが、このゲームをプレイする方はそもそもトリックテイキングに慣れている方だろうということで、3トリックまでのほうがノーマルルールになり、4トリックのものがイージーモードとしてオプションになって最終リリースされています。
いずれも私はあくまでプロデューサーなので、ゲームそのものへの変更は行わずシステムデザイナーさんへの提案という形に徹することで、より私自身が欲しいロボトリックの形を磨き上げていった時期です。
これが秋口まで続き、いよいよアートワークと製造をどうするかというフェイズにはいってゆきます。
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