第8回泣き虫ライブ

第8回泣き虫ライブのレビューを敬愛する作家さん、石山悦子さんに書いてもらいました。

石山さんは、上方落語台本大賞の大賞に輝いたり、佳作を何度も受賞されている、天才である。

台本を読ませてもらったのだが、僕には、書けないその作風は、まるで向田邦子さんのような、アットホームさがあり、読んでいて嫉妬した。

【あー、これが正しい脚本なのだ】と痛感した。

そんな石山さんの文章。

また独特なんです。いやー、ありがたい。

読んで、僕の単独ライブ、見たくなったら是非!


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第八回泣き虫ライブ ハクション中西  レビュー

これは、あのハクション中西のライブ映像です。
「あのって、どの?」と聞かれたとしたら、
ツイッターでちょくちょく

『キンタマ』

と呟いている芸人だと私は答えます。

『キンタマ』

このツイートはどういう意味なのでしょうか。
あれこれ考えて出た結論。

わけわからん。

わからんけど、なんか、オモロい。

そう思わせるのがハクション中西なのです。

例えば、ただのオッサンが同じように

『キンタマ』

とツイートしたとする。

わけわからん。
ここまでは同じ。

でもオッサンの場合は、わからん上に、オモんない。

あと、気持ち悪い。

これがハクション中西と、ただのオッサンとの違いである。
そういうことなんです。

かつて赤塚不二夫が
「描く気がしないなあー!!」と空白のコマを並べた時も、
読者はそこに何か意味を見い出そうとした。

え〜、それ、ただの深読みちゃうん。

かもしれへん。

けれども、空白のコマでさえも深読みさせてしまうところがまた、天才たる所以なのであります。

天才というものは時に奇人と見られたりしますが、
本人はまったく奇をてらっているわけではない。

ひたすらに、ほとばしる何かがただ、
ほとばしっているだけなのです。
ハクション中西も、ほとばしっている。

ほとばしる『キンタマ』。

この4文字は、ハクション中西の全ての象徴であり、
彼の世界観または作品への入り口なのです。

さらにハクション中西の凄まじいところは、
無垢で奔放な笑いのセンスという核を持ちながら、
同時にそれを正常にアウトプットするための
緻密な構成力を兼ね備えているところです。

はちゃめちゃに刀を振り回しているように見えて、
全ての軌道は計算し尽くされている。

感性と頭脳。
ハクション中西はこの無敵の両輪を有する、
お笑い界でも稀有なパフォーマーなのです!!

おおおおおおお(満場の大歓声)

・・と。
ここまでハードルを思いっくそ上げたところで(悪笑)

改めて『第八回 泣き虫ライブ』のご紹介です。

このライブ映像には、
そんなハクション中西のネタがぎっしり9本入っています。

「一体どんなすごいネタを見せてくれるのだろうか」と
期待に胸を膨らませているあなたにも、

「そんな人のネタ、私に付いていけるかしら〜」
と不安に思っているあなたにも、
ぜひご覧いただきたいのであります。

ご覧いただいた上で、
良し悪し、好き嫌い等々を感じてもらえればと。

そして、この作品をみて笑ったあなた。
おめでとうございます!
あなたは新たな笑いの世界への第一歩を踏み出しました!!

笑えなかったあなた。
あなたが悪いのではありません!
悪いのはハクション中西です!!

まっ。
それぐらいの軽い感じでフワッとね。フワッと観ていただきたいの。

前おき長くなりましたが、そろそろ本編へまいりましょう。

それでは『ハクション中西 第八回 泣き虫ライブ』、
スタートです!!

①私は性格が悪いんでしょうか

悪いんやと思います。ようそんなこと考えるわ!てなったもん。いわゆる王道の「あるあるネタ」ですが、ツッコミのスタイル次第でこんなにも雰囲気が出るものかと目からウロコ。その妙味を味わっていただきたい一本です。ぜひハクション中西の中に棲む「おばちゃん」を堪能されたし。
ほんで、このネタ見た後は「ハクション中西に物あげるん、やめとこ」と思うで多分。

②コント「ニュートンのツレに、もしかしたらこんなヤツがいたかもしれない」

設定の勝利。リアルで出会った「うっとうしいヤツ」と、歴史上の偉人「ニュートン」を掛け合わせた瞬間、一気に最後までいけたネタではないでしょうか。ま、想像ですけど。
キャラクターのバランスと台詞の一つ一つが絶妙で、見る側を疲れさせず楽しませてくれる、安定のハクションワールド。

③「自分がかぶっているカツラをわざとちょっとずらして周りがハラハラするのを楽しむ社長」

タイトルがもうずるい!面白い予感しかしない!ただ、こういうタイトルをつけると「どう展開して、どう裏切ってくれるのか?」とオーディエンスの期待値がより上がるので、パフォーマーにとっちゃリスキーなことこの上ないんだけど、そこをあえて自分に課したのかハクション中西!?そこまで自分を追い込んだ上での「あの結末」なのかハクション中西!?それに関しては今度、本人にしっかり問いたいと思います。

④ゲストコント「追試」 

知る人ぞ知る、あの女性芸人Hがゲストに。ごく日常のシーンをサラリと歪めて笑いにして見せてくれる。中盤に何か大きな仕掛けがあれば、ラストがもっと生きたかも。お洒落なオチ、好きですね。

⑤コント「スーパースター神崎龍二」

物の価値ってなんじゃろ?その答えがこのコントの中にあるかもしれないし、ないかもしれない。どっちやねん。
以前、「ボケには理由が必要」という彼の持論を聞いた時、激しく共感したものです。どんな飛躍の仕方をしても、基礎方程式がしっかりしていれば観客が置いてけぼりになることはない。これはそのことを立証するための実験的なネタではなかろうか。ハクション中西の超理論派な一面を見せてくれるかもしれないし、くれないかもしれない。どっちやねん。そんなネタ。

⑥コント「個人の趣味でエロ本を買っていると思われるのが恥ずかしいので、いかにも会社で必要だから買っていると見せかける選手権」

みんな、エロ本買う時って恥ずかしいやん〜?うん、わかるわかる!
「共感」という入り口からするっとその世界に誘われてしまいます。人間の滑稽さや哀愁をデッサンしながら、さらに「選手権」という独自のパッケージでツッコむことにより、ネタが立体的な広がりを見せているという。このシステムはもう発明といっていいのでは?今やライフワークのように定着している「選手権シリーズ」を、この時もう確立していたのかと感動しちゃったりなんかして。

⑦ゲストコント 「いい女」

ゲスト、女性芸人Hの2本目。生々しい女の生態を描写するネタは
女性としてやはり興味をそそります。これもオチがいい味。 

⑧コント「アメリカンジョークの口調で桃太郎」

あはははは!ふざけ倒しとる!好き!

⑨コント「クラブ入り過ぎた」

どんなツッコミやねん!とツッコみながら、ツッコミだって果てしなく自由でよし、と思わせてくれる一本。全編通して気持ち悪い「間」が延々と続きます。笑いで何よりも大切だと言われている「間」をもここまで壊すか!と冷静に考えてみて、ちょっと震える。
中に出てくる芸能界いじりのチョイスとか、積み上げて積み上げて最後に全壊させる手法とか、手数も多くて楽しくて……。でもやっぱりだいぶ気持ち悪いネタです。

⑩コント「異種格闘技戦」

山田俊彦と山田鈴子という夫婦の物語り。ある角度から見れば人情噺ともいえるでしょう。ただしカラッカラに乾いてるけど。

11 コント「視力検査」

ハクション中西はいじめられっ子だった、と聞きました。その原体験があってこそ生まれたネタなのかもしれません。
ひとつの現象をこまやかに観察する繊細さは、弱者しか持てない感性だと思います。逆に言うと、いじめっ子におもろいネタは書かれへんちゅうことですわ。
そして、後半の転換にハッとするような仕掛けがある。これがまた気持ちいい。短編小説、ショートムービー、漫画、あるいは落語など、別ルートでの展開も広がりそうな、何かしらの「原石感」。素敵。




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