プチ虐待のススメ
34【空気】
さて、この章は飛ばしてもらってもかまわない。なぜなら、僕がウケるようになった平場のやり方についてくどくどと分析をしているだけだからである。
ウケると言っても、最低限ではあったのだが。
ただ、このあたりのノウハウは、お笑い芸人のたまごのみならず、サラリーマン、自営業、宇宙飛行士、正義のヒーロー、全ての人の参考になると思う。
ウケるためには。
何よりも大切なこと。空気である。ほとんどそれだけである。
葬式でみんなが悲しんでる状況で、冗談を言っても、誰も笑わない。それは、葬式には葬式の空気があるからだ。
葬式では、小さな子供が大活躍する。みんな亡くなったおじいちゃんやらが目を細めて孫を可愛がっていたことなどを思い出すし、単純に子供はTPOをわからないので、不謹慎にならないのだ。
極端なたとえだが、僕が三ヶ月間スベり続けてきたのは、葬式の時にでっかいオッサンがふざけていたような空気感だったのである。ウケないはずである。
ムーミン谷にケンシロウが来るようなものである。ウケるわけがないのだ。
僕がやったことは、簡単。
困ったな、と思う状況を全部、ケータイのメモ欄にメモしていった。
そして、それらをお題として、大喜利の答えを書いていった。考えられ得る限りたくさんたくさん、考えて、メモしていく。
大喜利というのは、お笑い好きならみんなわかるが、こういうやつだ。
お題 こんなアンパンマンは嫌だ。どんなアンパンマン?
答 香水の匂いがする
などである。
出されたお題に対して、面白い答えを言うというシンプルな競技である。日本以外にもあるのだろうか?こういうのって。
とにかく話を戻す。大喜利を基本としたのだ。
コミニケーションが下手な人でも、大喜利はできたりする。
自分が苦手な分野の悩みを、自分が得意な分野に落とし込んだ課題を作ることができれば、怖いものはない。
事実、僕はここから、対人恐怖症など吹き飛ぶ。正確には、人見知りはなおりはしないが、他人から人見知りだと見抜かれぬぐらいに技術が発達するのである。
みなさん、ゴジラという怪獣をご存知だろう。
僕は言いたい。
よく聞いてほしい。
ゴジラって運動神経、実は悪いよね。
突然、何を言い出すのか、という感じだろう。しかし、そう言われてみればそんな感じの動きをしていると思わないだろうか?
ゴジラは、でかくて強すぎて、もはや運動神経がいいとか悪いとかの基準で測られない存在になっているのだ。
芸人も同じである。
技術やノウハウを持って、舞台上で笑いをとれる芸人は、ゴジラである。
あの人は、人見知りだ!などという小さいはかられ方をしない。
それが芸人でありプロなのだ。
話が逸れたので元に戻そう。
大喜利のお題は無数にあるが、【こんなアンパンマンイヤだ】などというお題はコミニケーションに役立たない。
なぜなら、使う場面がないからだ。それに比べたら下記のお題はいくらでも使えるのがわかるだろう。
お題 あなたは今、スベりました。さて、なんて言い訳する?
これに対して、答えをガンガン書いていく。大喜利の答えとしてウケるものと実際にウケるセリフでは差があるが、とりあえずはそんなことはどうでも良い。
答えを書き殴る。僕の場合はケータイだった。
みなさんが知ってる有名なやつで言えば、くにお・とおる師匠の【ここで笑わんかったら笑うとこないよ】などは、本当に理にかなっていて、面白い。
僕は、気分が良い時は、「違うんだ!俺は金で雇われてスベっただけなんだ!ボスが命令したんだ!」と言ったりする。
こんな長いセリフは邪道なので、使い勝手が良い短いやつもいっぱい考えておく。
これを、色んなお題でやるだけである。
①舞台に出る
②舞台後、困った場面をケータイにメモり、お題にする
③それぞれのお題にたいして、大喜利をする
④同じ状況が現れた時に使う
これの繰り返しである。
漠然と舞台に出ていてはいけない。お金をもらってる以上はプロなのだから。というわけで僕は、このやり方で、ゴジラに、とまではいかないが、ミニラぐらいにはなったのだ。
僕が昔やったライブでこのあたりのもっと詳しいノウハウは述べているので、もっと知りたい方はそちらをお買い求めください。
ネタの作り方講座というライブで、真面目にいかに天才がネタを作っているのかという内容を二時間弱は喋っている。
下記である。
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