小説【聴診器ごめんね事件】

【聴診器ごめんね事件】

むかしむかし、あるところに、小学校がありました。

その日は、その小学校で健康診断があり、お医者さんが学校の保健室に来て、子供たちの身体の状態を診る日でした。

ところが、問題が起きました。

小学校六年生の女子の胸に聴診器をあてる時に、お医者さんは、一人一人に「ごめんね」と言いながら聴診器をあてたのです。

六年生ともなると、女子は思春期にさしかかり、デリケートな年頃です。

医者なんだから堂々と「子供の裸なんか見てもなんにも思わないし、そもそも患者としてしか見てない」という態度で、淡々とやってくれればいいのに、『「ごめんね」と言われると、余計気持ち悪い』と女子たちには、とても評判が悪かったのです。

当時の校長先生は、二度とこのような事件を起こしてはならないと思い、この日を【聴診器ごめんね事件】と呼び、特別な日にすることにしました。

校庭には、お医者さんがごめんねという表情で女子生徒に聴診器を当てている銅像が建てられました。

その銅像の前には、【リメンバー聴診器ごめんね事件】と書かれた立札があります。

校長はとにかく再発防止のために、この事件を大げさにすることに決めました。

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