順調ではないスタート

そんなこんなで、スタートする予定は、当初は昨年の10月からのはずだった。
しかし、思いのほか、全然スタートを切れない。
準備が遅れてるのは僕ではない。
ネタは芸歴を無駄に重ねてるので、ゴミの山がたくさんあるのだ。

遅延の原因は作画担当の人の常軌を逸した多忙であった。
当時、畑さんがキャスティングしてくれた映像担当の方、田村さんが、クソ忙しすぎて、死にかけていたからである。


田村さんがあまりにも忙しいということで、頼んでいた作業がすごく遅く、こちらもお金も負担してもらってる状況なので、ちょこちょこと「まだですかぁ」と聞くぐらいで、基本的には待ちぼうけで時を過ごした。


一台しかない車で目的地に行かないといけないのだが、その車のエンジンが故障している状態といえば、わかりやすいかもしれない。
いや、たとえに自信がなくなってきた。


もっとわかりやすく喩えるなら、まるで、作画担当の田村さんが忙しくて忙しくて、あたかも、手が回らないような状況だったのである。

てなわけで、僕は困った。
田村さんと畑さんと僕の三人のチャットワークがあるのだが、そこでは聞かずに、こっそり畑さんだけにLINEのほうで「ちょっと田村さんがあまりにも忙しそうなのですけど、これではスタート切れなさそうなのですが」と相談したりした。

すると、畑さんは「田村は超絶に忙しいので、もう少しお待ち下さい。代わりを探します」と言ってくださった。
この時点で10月スタートは、僕の中ですっかり諦めていた。焦ってよいことは絶対にない。

【動画のストックが最低一ヶ月分は溜まっている状態でスタートを切る】ということが、僕にとっては、マストで守らないといけないことと思っていた。
出だしでつまづくと、そのままポシャって終わりになるからである。


ちなみにこのツイートもある程度ストックを書きためてからやり始めている。イイネとリツイートが多すぎると対応できない。
ストックをためた状態で始めるというのは、基本だと思っている。

注釈)【noteをご覧の方はよくわからないかもだが、“はじめに”で述べたように、このマガジンは、そもそもツイッター上で始めたものである】


それで、大人しく待っていると、どこかで求人広告を出してくれたようで、作画担当のルーキーが見つかった。
その人は、Sさん。20代前半の男性である。
僕はSさんにすべてを託すことになったのだ。


Sさんの話をする前に。
僕は基本的に仕事をする時は、LINEなどの文章と、電話打ち合わせの両方を使い分けている。そのほうが絶対にいいからだ。


条件面、など「言った言わない問題」が発生しては困る案件は、LINEなどの文章で残るものが良い。
しかし、細かいニュアンスなどを伝える時は電話のほうが圧倒的に早い。電話で条件面などの話を流れでしてしまう時もあるが、その時も文章に起こして、内容を後で送るようにしている。

細かいニュアンスに関しては文章だとわからない。たとえば「いやだわ。ルパン」という文章は本当に嫌なのかどうか文面だけではわからない。電話をかけると「はぁ、はぁ、イヤだわ、ルパーン。うっふーん」なのか「イヤ言うてるやろが、殺すぞボケ」なのかすぐにわかるのだ。


Sさんとは、畑さんからまずはLINEで連絡先を教えてもらった。
大体の概要をLINEで伝えたあと、「一度どんなアニメにしたいのかなど、細かいニュアンスを確認したいので、電話番号を教えてください」とSさんにLINEでメッセージを送った。


これを読んでくれてる人は、LINEがあるなら、LINE通話でいいではないかと思うかもしれないが、僕の家はなぜかLINE通話が不安定であることが多く、イライラして話が進まないので、僕は番号を聞いて、いつもかけることにしているのだ。

そういうことで、「僕の家はLINE通話が不安定なので、連絡先を教えてください」とメッセージを送った。
Sさんからのメッセージはシンプルだった。
「イヤです」

は?
“イヤです”?
なに?どういうこと?
LINE通話が不安定な旨を前もって説明したのに、である。

「こいつ大丈夫か?」という思いが頭の中をよぎった。
“桃太郎”で言うところの、イヌが多忙で他の桃太郎のところに出張し、キジと出会ったと思ったらキジに「イヤです」と言われてるのである。
僕は名実ともに、“ニセの桃太郎”なので仕方がないのだが。

「何がイヤやねん、ボケ。こっちはずっとこのために動いてるんやぞ!」という言葉を飲み込み、脳内会議で「電話番号はなぜ、おイヤなのですか?お仕事以外でおかけすることはありませんが」というセリフに替えて送信した。


すると「いやあ、前に番号を送って騙されたことがあって」との返答。
いやいや、何を騙されたのか、知らんけどさ。。。。
これから先、君はこれではなくても、仕事をしていくわけよね?

色んな仕事先で、電話番号聞かれるたびに、「以前騙されたので電話番号は無理っす」と断っていくのかね?
オッサンはプライベートの君に興味などないから、仕事でしかかけない、そしてオッサンが君の番号を利用して何の得があるんだと力説した。

頑なまでに首を縦に振らないので、仕方なくLINEで必要事項を説明し、電波が悪い中でLINE電話をした。案の定電波が悪く、途切れ途切れになり、途中でSさんが「もう、番号教えますわ」と番号を教えてくれた。
なんやったんや、さっきのやりとりは。

ということで、田村さんがクソ忙しかったので、このSさんが“遅れてきた助っ人”であった。
ドラゴンボールでは、フリーザと戦っている時に、後から遅れてくる奴ほど、頼りになる仲間なのだが、Sさんは、遅れてきたプーアルである。


フリーザを前に、一体何しにきたんだ、お前は。
そういう気持ちになるが、溺れるものはわらをも掴むということわざの通り、僕はSさんにすがるしかなかった。とりあえず映像制作者がいないとアニメは始まらないのだ。


ところが、このプーアル、とても作業が遅い。
いや、作業ではない。遅いのは、そもそも作業に取り掛かる前段階のLINEの返事が遅いのである。
おはようの返事がおやすみの時間帯に返ってくるぐらいの遅さ。
などという生ぬるいものではない。

年賀状出したのに、暑中見舞いとして返事が返ってくるぐらいの遅さである。かなり大げさに言ってるが。アニメは週に二回ペースでやらないといけないのに、返事が遅いし、電話を嫌がるのだから、仕事にならない。
そこで僕は感情的ではない大人の文章を送った。

【ちょっとペース的に、今日が日曜日で、ちょっと電話打ち合わせをするだけなんですが、それが金曜日ってなると、遅いのは遅いですね。
目指すペース的にはかなり厳しそうですが、今が特別お忙しいのでしょうか?(続く)


別に責めてるわけではなく、ペース的に無理させても意味がないし続かないので聞いておきたいところなんです。】

するとSさんから驚きの答えが返ってきた。
【今が忙しいですね。】
【あと、優先順位が低くなり、避ける時間も少なくなるのも予めおっしゃっておきます。申し訳ございません。】

ムキーッ!!なんだと!?プーアルのくせに(笑)!!
そもそも、「おっしゃっておきます」という日本語はなんなんだ!舐めやがって!!
面と向かって「優先順位は低くなります」と僕に言ってしまう失礼さと常識のなさである。

そもそも、あらかじめって言うのは、一番最初に言う言葉だ。
もう打ち合わせして、始まりだしてるのに。。僕は哀しかった。
【わかりました。
では、今やってらっしゃるお仕事を頑張ってください。。】
それが最後のLINE。


Sさん、いやSくん。
そんな仕事のやり方じゃ必ず失敗するよ?
信頼失うよ?
俺がどれだけこのアニメに凄まじい時間を割いてると思ってるんだ。
畑さんに事情を説明し、Sさんは制作メンバーから外れることになった。

畑さんが言うには、このSさんは、最初は暇があると言っていたそうなので、そこらへんからもうおかしいが、早めに人柄が分かったので良しとしよう。
まだ若いし、多少の常識のなさはこれから挽回すればいい。それに、Sさんのおかげで良かったこともあるのだ。


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