テレワークにおけるラインケアの大切さ ~経営者と管理監督者の皆様、安全配慮義務を果たせていますか? ~

産業医の川角です。

精神科医で産業医の堤先生からお声かけいただきnoteを始めました!第1回目は、堤先生とのコラボ企画「テレワークにおけるメンタルヘルスケア」です。

私はテレワークにおけるラインケアについて書いており、是非、経営者や管理監督者の方に読んでいただきたい内容です。テレワークを実施するにあたって管理監督者に心がけていただきたいことを、産業医の立場からQ&A方式でお伝えします。
堤先生はテレワークにおけるセルフケアの方法を3つの秘訣にまとめてわかりやすく書いてくれています。テレワークを元気に続けるために従業員に意識してもらいたい内容となっています。
合わせて読むと理解が深まりますので、是非読んでお役立てください。


              

~はじめに~


新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、テレワークを導入や拡大する企業が増えています。実際、テレワークを実施することで、従業員と企業の双方に様々なメリットがあります。例えば、従業員にとっては、ワーク・ライフ・バランスの維持に役立ちます。企業にとっても、定型的業務の効率性(生産性)向上に役立ちます(総務省 平成30年通信利用動向調査)。一方、運用面では課題もあります。大きな課題としては、安全配慮義務を果たせるかどうか、特にメンタルヘルスケアを十分に行えるかどうかという問題です。
使用者である事業主には、「従業員を業務 に従事させるにあたって、過度の疲労や心理的負担をかけて社員の心身健康を損なうことがないように注意する義務」があり、これを安全配慮義務と言います。管理監督者は、事業主から、部下である従業員を管理監督する権限が委譲されていることから、この安全配慮義務の実行責任を負っています。そのため部下の状況を日常的に把握する立場である管理監督者が部下のメンタルヘルスケアを行うことが要となります。日常的に声かけを行う中で、いつもと違う部下に気づき、産業保健スタッフなどにつなぐことが求められます。今回テレワークのラインケアについて、3つのQ&Aを載せました。いずれも実際に相談があった内容ですので、参考になると思います。

~Q&A~

Q1.
部下からアウトプットが出てこなくて困っています。どうしたらよいのでしょうか?

A1.
テレワークでなくても、管理監督者からこのような相談を受けることがあります。このような相談を受けたときは産業医から管理監督者に対して以下のような質問をしています。
・アウトプットが出なくなったと気づいたのは、いつからですか?
・部下の勤怠や体調(顔色や声の調子など)で気になっていることはありますか?
・管理監督者から見て、何が原因だと思いますか?   等
管理監督者が部下をよく見ることができているかどうかで、解決に導けるかどうかが変わってきます。
テレワークでは、①言語だけでなく非言語のコミュニケーションがとりにくい ②部下とのやりとりが計画に対するアウトプットが出てくるかどうかに焦点を当てがちになるという課題があります。つまり、職場であれば、会話だけでなく、仕事をしている姿を見ることで、頑張っているなとか、困っているようだなとか、体調が悪そうだなとか感じることができます。そのため、テレワークの場合は、メールだけで済ませず、電話での声の調子の確認や、テレビ会議での表情の確認など、工夫してみましょう。

Q2.
テレワークをさせるようになってから部下からのアウトプットがたくさん出てきます。仕事を進めるスピードがいつもと違うので心配です。

A2.
テレワークをすることにより、効率性(生産性)向上につながるというアンケート結果がでているように、集中して仕事をすることができます。一方、課題としては、オンオフをつけるのが難しくなり長時間労働をしてしまうことが挙げられます。まずは、管理監督者は部下の労務管理を適切に行いましょう。例えば、休日や深夜はメール送付を行うことを禁ずる、休日や深夜はシステムにアクセスできないようにする、時間外や休日や深夜に業務をすることを禁じるもしくは管理監督者の許可を必要とするなどのルールを設け徹底しましょう。
残業は会社(管理監督者)の命令に基づいて行うものです。部下が自発的にやってしまっていたとしても、黙認していたのであれば、会社(管理監督者)が責任を問われることはあります。


Q3.
体調不良の申し出がありました。このままテレワークを続けさせても良いのでしょうか?

A3.
テレワーク制度の対象となる従業員を決めるときに、身体疾患および精神疾患の場合に対象とするかどうかを検討してください。そのルールをもとに、このようなケースでは、テレワークを継続させるか検討をします。
就業継続ができる程度の体調不良者の場合は、より一層のこまめな声かけが必要です。産業医等と連携しながら、業務分担や業務指示の見直し等を行ってください。


~おわりに~


テレワークを行うことで、言語・非言語のコミュニケーションが取りにくくなることや、計画とそれに対する成果で部下を見てしまいがちになります。成果ではなく、部下という「人」をみるように意識しましょう。
テレワークのラインケアに関する課題を解決していくことで、従業員はワーク・ライフ・バランスを保ち、安心して、効率的に仕事を進めることができるようになります。テレワークを導入や拡大しても従業員がイキイキと働き続けられる会社が増えることを心から願っています。


~参考資料~
(1)総務省 平成30年通信利用動向調査
  https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/190531_1.pdf
(2)厚生労働省 情報通信技術を利用した事業場外勤務の 適切な導入及び実施のためのガイドライン
  https://www.mhlw.go.jp/content/000545706.pdf


★堤先生の記事★


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